アパート投資で持ち出しが発生する原因とは?赤字を防ぐ方法を解説!
アパート投資における「持ち出し」とは、月々の収支がマイナス、要するに赤字になった際に自己資金で補填することを言います。
物件の収支がマイナスでは利益を得ることができず、もし毎月持ち出しが発生している場合は、いずれアパート投資が破たんするおそれも考えられるため、速やかに収支をプラス(黒字)にすることが求められます。
しかし、アパート投資の持ち出しを防ぐためにはどのような対応が必要なのでしょうか。
今回は、アパート投資で持ち出しが発生する原因や防ぐ方法について解説します。
アパート投資の「持ち出し」とは?

アパート投資における「持ち出し」とは、月々の収支がマイナス(赤字)のときに自己資金やほかの収入から不足分を補填することを言います。「手出し」と呼ばれることもあります。
そもそもアパート投資は、家賃収入や売却益を得ることで資産を増やすことを目的におこないます。
もし持ち出しがつづくと、自己資金が減ったり、生活費が不足したり、日常生活に悪影響を及ぼしかねません。
自己資金がある間は赤字を補填できますが、自己資金が尽きてしまえばローン返済が滞り、アパートを任意売却したり、最悪の場合は差し押さえられて競売にかけられたりするおそれも考えられます。
どうしてもアパートの収支を黒字回復できず、持ち出しがつづく場合は思い切って損切りも視野に検討する必要が出る場合もあるでしょう。
このように持ち出しによる赤字収支を防ぐためには、アパート投資を始める際にしっかりとした収支シミュレーションをおこなうことが大事です。
もし収支計画の時点で黒字化がむずかしい場合は、別の物件を選んだり、自己資金の比率を増やして月々のローン返済負担を減らしたりといった工夫が必要です。
しかしアパート投資の収支シミュレーションをどんなに綿密におこなっても、突発的に持ち出しが発生する場合もありますが、一時的な場合はそれほど深刻にとらえる必要はありません。
アパート投資には「良い持ち出し」と「悪い持ち出し」がある
アパート投資の持ち出しには、「良い持ち出し」と「悪い持ち出し」の2種類があります。
悪い持ち出しとは、前述したように毎月の収支が赤字であり、自己資金などから補填が必要なケースです。
意図せずしてアパート投資がマイナスの場合は利益を生み出すことができないため、一刻も早い黒字回復が望まれます。
しかし毎月の持ち出しが計画的である場合は「良い持ち出し」として容認されるケースもあります。
ここでは、アパート投資における「良い持ち出し」のパターンを紹介します。
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将来的な利益のために計画的に持ち出しをおこなっている場合
目的があり、計画的に毎月持ち出しをおこなっている場合は「良い持ち出し」であるケースが多いです。
たとえば、ローン完済後の家賃収入を目的としていたり、大きな売却益が見込まれたりといった場合が該当します。
仮に5,000万円のアパートを自己資金500万円・融資期間が30年で購入し、毎月1万円の持ち出しが発生したとします。
30年後にローンを完済した時点でアパートを売却して、その売却益が3,000万円だったとすると、860万円の投資額(自己資金500万円+持ち出し360万円)で2,140万円もの利益を得ることがかのなのです。
(税金などは反映していないため、実際の利益は多少減少します)
ただし、不動産の価格変動を見極めるのは非常にむずかしく、何十年後の不動産価格を予想するのは専門家でも困難です。
そのため、不動産投資の経験が浅い方にはこの方法はハードルが高いと言えるでしょう。
節税目的でアパート投資をおこなっている場合
アパート投資が節税目的の場合は、あえて収支をマイナスにしている場合があります。
これは、不動産所得が赤字の場合におこなえる「損益通算」をすることで、課税所得を減らして節税をおこなう方法です。
損益通算とは、ほかの所得(給与所得など)と赤字の不動産所得を合算する会計処理です。
不動産所得の赤字分が所得から減るため、結果的に課税所得が減少し、所得税と住民税の節税につながります。
たとえば給与所得が600万円で、不動産所得が200万円の赤字だった場合、600万円から200万円を差し引きした400万円に課税されます。
関連記事:不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説
また、あえて耐用年数の短い物件を購入して減価償却費で赤字を作り、損益通算する方法も節税スキームとしてよく用いられます。
減価償却費は、実際に出費をしていないにも関わらず経費計上が可能な経費です。
帳簿上は経費が増えるため利益を圧縮でき、効率よく赤字を作ったうえで損益通算することで節税効果を得ます。
関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも
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アパート投資で持ち出しが発生する原因

ここでは、アパート投資で「悪い持ち出し」が発生する主な原因を紹介します。
空室などによる家賃収入の減少
アパート投資の主な収入源は入居者が支払う家賃です。
そのため、アパートの立地条件や周辺環境が悪い場合やアパートの建物の状態が悪く入居が付きづらい場合などは空室が増え、想定した家賃収入を得られず、持ち出しが必要になるケースがあります。
アパート投資で安定した家賃収入を得るためには、アパートの立地の良さが非常に重要です。
駅から近い・近くにコンビニやスーパーがある、学校や幼稚園が近いなど、入居ターゲットによって条件は異なりますが、高い入居率が期待できる好立地のアパートを選ぶことで、持ち出しを抑えることにつながります。
関連記事:アパート投資で手出し(赤字)になりやすい物件の特徴を解説!
支出が多い
基本的にアパート投資をおこなうにあたって、おこなわれる収支シミュレーションでは、おおよその支出額を想定したうえで収入を上回らないことが確認されます。
しかし、アパートの建物や設備は、経年とともに劣化するため、その都度修繕が必要になったり、インフレの影響でランニングコストの値上げが原因で支出額が収入を超えてしまったりするケースもあります。
支出の増加による持ち出しが一時的であれば大きな問題ではありません。
しかし、マイナス収支がつづく場合は、ランニングコストを見直す必要があります。
アパート投資のランニングコストの目安は、家賃収入の20~30%程度と言われています。
まず、ランニングコストの中で削減できるものがないか確認してみましょう。
特に損害保険料に無駄な特約をつけていたり、管理委託手数料が相場よりも高額だったりする場合はコスト削減の可能性があります。
関連記事:アパート投資のランニングコストはいくら必要?内訳と目安を解説!
ローン返済の負担が重い
毎月のローン返済の負担が重い場合はキャッシュフローの悪化が懸念されます。
アパート投資のローン返済原資はアパートの家賃収入です。
アパート投資を開始する際におこなった収支シミュレーションでは問題がなくても、経年とともに家賃の下落や空室の増加などで収入が減ったり、ランニングコストが価格上昇したり、ローン金利が上がったり、ローン返済が負担になるケースも少なくありません。
ローン返済が負担に感じた場合は、返済比率を確認してみましょう。
アパート投資における返済率とは、家賃収入に対して毎月のローン返済額の比率を数値化したものです。
一般的に、安全なアパート投資の返済比率の目安は50%程度と言われています。
もし、返済比率が50%以上の場合は、家賃収入に対するローン返済の比率が高いとみなされます。
その場合は、ローン返済の負担を軽減するためにローンの繰り上げ返済や借り換えなどを検討するとよいでしょう。
関連記事:不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
アパート投資で持ち出しを防ぐ方法

計画的な持ち出しを除き、アパート投資での持ち出しは避ける必要があります。
ここでは、アパート投資をおこなうにあたって持ち出しを防ぐ方法を紹介します。
物件選びは慎重におこなう
アパート投資の成功の可否は物件の立地に大きく左右されます。
前述したように、好立地物件は賃貸需要が高く、空室率が低く抑えられ、安定したアパート投資につながります。
そのほかにも、建物の内外が清潔で状態が良く、入居者ニーズの高い設備が導入されている物件は、入居者に選ばれやすいです。
ただし、好立地物件は価格が高額な場合も多く、ローンの返済比率が大きくなりやすいため注意が必要です。
しっかりと収支シミュレーションをおこない、無理のなくローン返済がおこなえる物件を選びましょう。
綿密な収支シミュレーションをおこなう
アパート投資を恥じる前におこなう収支シミュレーションはできるだけ綿密におこないましょう。
特に利回り計算し、把握しておくことで持ち出しが発生しにくくなります。
アパート投資で用いる利回りはいくつか種類がありますが、収支計画に利用する場合は経費や購入時の初期費用を反映して計算する「実質利回り」を使用しましょう。
実質利回りの計算方法は以下のようになります。
実質利回り(%)=(年間家賃収入−年間必要経費)÷(物件購入価格+購入時の諸経費)×100
なお、物件情報などに掲載されている利回りは、経費や初期費用を反映しない「表面利回り」であり、物件の収益性をおおまかに判断する際に用いられます。
関連記事:アパート投資の利回りの目安は?選んではいけない高利回り物件も解説
現地調査をおこなう
投資用アパートは高額であるため、一度購入すると買い替えることはむずかしいです。
購入してから後悔しないためには、事前に物件リサーチを入念におこなうことが大事です。
物件選びを失敗しないためにも、かならず現地に行き、直接物件を確認することをおすすめします。
最近ではポータルサイトで物件の確認もできますが、やはり画像や動画だけでは物件の良し悪しを判断するのは危険です。
画像ではきれいに見えた建物が実際には傷みが目立つ場合や、画像掲載のなかったゴミ置き場や自転車置き場の状態が乱雑な場合などはよくあることです。
また現地に行き、周辺を歩いてみて、駅からの所要時間や途中に危険な場所はないか、近隣に嫌悪施設はないかなども併せて確認するとよいでしょう。
その際は、駅前の不動産屋を訪問してヒアリングすることで、より多くの情報収集につながります。
また建物状態を確認することで、どの程度の修繕が必要であるかの判断もできます。
空室がある場合は室内の様子から、リフォームなどが必要かどうか検討することも可能です。
ノウハウが豊富な管理会社を選ぶ
安定したアパート投資には、優秀な管理会社の存在も欠かせません。
アパート管理は多岐にわたるため、オーナー自身が本業を持っていたり、物件が遠方にあったり、自主管理がむずかしい場合は管理委託することをおすすめします。
管理会社が入居付けを得意としていたり、空室対策に関するノウハウが豊富だったりすると空室率を抑え、安定した家賃収入を得ることが可能です。
反対に、選んだ管理会社が入居付けに消極的であったり、空室に関する提案が少なかったりする場合は空室率が高くなり、持ち出しが発生する可能性が高まります。
アパート投資を成功させるためにも、信頼できる管理会社を選びましょう。
関連記事:不動産投資を成功させる不動産管理会社の選び方!管理業務内容を解説
まとめ
アパート投資の「持ち出し」とは、収支が赤字の際に自己資金で補填することを言います。
赤字が一時的であったり、計画的に持ち出しをおこなっていたりする場合は問題ありませんが、意図せず持ち出しがつづいている場合は、やがてローンの返済が滞り、任意売却や競売を余儀なくされるケースもあるため注意が必要です。
持ち出しを防ぎ、安定したアパート経営をおこなうためにも、好立地の物件を選び、綿密な収支シミュレーションをおこない、しっかりとキャッシュフローを得られることを確認しましょう。