不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?
2021/11/03

不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%?

不動産投資の返済比率とは?不動産投資の返済比率の目安や計算方法は?返済比率の計算方法返済比率の違いで比較!比率が高い場合のデメリットは?返済比率が50%の場合のシミュレーション返済比率が60%の場合のシミュレーションデメリット1:修繕費用等の突発的な出費に対応できないデメリット2:空室の増加に対応できないデメリット3:ローンの金利上昇に対処できない不動産投資の返済比率を下げるためには?返済比率が40%の場合のシミュレーション方法その1.物件購入時に頭金を多く入れる方法その2.物件購入時の諸費用をおさえる方法その3.繰り上げ返済をおこなう方法その4.返済期間を延長する方法その5.ローン金利を下げるよう交渉するまとめ

不動産投資をおこなう場合、多くの人は金融機関から融資を受けて不動産投資物件を購入します。

このとき、特に注意したいのがローンの「返済比率」です。


どんなに高利回り物件であってもローンの返済比率が高すぎる場合は、十分なキャッシュフローを得ることができず、ローンを返済できない可能性もあります。

安全に不動産投資おこなうための返済比率は一般的に50%以下と言われていますが、どうすれば返済比率をおさえることができるのでしょうか?


今回は不動産投資におけるローンの返済比率を下げる方法や目安となる比率について解説します。

また、3種類の返済比率で計算シミュレーションをおこないながら、それそれの比率がキャッシュフローにどんな影響を与えるのかまとめました。


余裕のある不動産投資をおこなうためにも、返済比率についてぜひ理解してください。


不動産投資の返済比率とは?

不動産投資における「返済率」とは、家賃収入に対して毎月発生する融資の返済額の比率を指します。

返済比率は融資を受ける金融機関によって違いますが、収入と返済額を比較することで、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを知る指標となります。


返済比率が低ければ、それだけ手元に残るキャッシュフローが増加します。

逆に高すぎる場合は手元に残るキャッシュフローが少なくなり、想定外の空室や修繕費用などが発生してしまうとローンの返済ができなくなる可能性があるため注意が必要です。


どれだけ利回りがよい収益物件であっても返済比率によっては赤字経営になってしまうこともあるため、健全な不動産投資をおこなうえで重要な指標のひとつとなります。


不動産投資の返済比率の目安や計算方法は?

ローン 木の家

一般的に不動産投資が安全におこなえる返済比率の目安は50%と言われています。

比率が高くなればなるほどキャッシュフローが減るため経営状態はきびしくなります。

比率に対する危険度は以下の表を参考にしてください。


返済比率

経営状態

40%以下

安全

50%以下

比較的安全

50%~55%

注意が必要

55%以上

危険



返済比率の計算方法

返済比率を求める計算式は下記になります。


返済比率(%) = 毎月のローン返済額 ÷ 毎月の満室時家賃収入 × 100


たとえば、毎月の返済額が50万で満室時の毎月の家賃収入が100万であれば、以下の計算になります。


50万円(毎月のローン返済額) ÷ 100万円(毎月の満室時家賃収入) × 100 = 50%


上記の計算結果から、毎月の満室時家賃収入に対して50%が毎月のローン返済に充てられていることがわかります。



不動産投資ローンを組む場合は収支シミュレーションを十分におこない、返済比率に注意して不動産投資用ローンを利用しましょう。

なお不動産物件の収支シミュレーションは、下記のような金融機関や大手不動産ポータルサイトなどの「不動産ローンシミュレーター」などを使うと簡単に計算できます。


「オリックス銀行 投資用不動産ローン・住宅ローンお借り入れシミュレーション」


「不動産投資連合体 収益・投資物件簡易収支シミュレーター」


返済比率の違いで比較!比率が高い場合のデメリットは?


指 バツ印 ビジネスマン

不動産賃貸経営では、ローン返済以外にもさまざまな経費を支払う必要があります。

また、収支シミュレーションをおこなう際には、想定空室率を考慮しなくてはなりませせん。

ここでは、返済比率が50%の場合と60%の場合、それぞれのシミュレーションを比較しデメリットをまとめました。


返済比率が50%の場合のシミュレーション

ここでは、返済比率が50%の場合のシミュレーション結果を紹介します。


例)返済比率が50%(比較的安心)の場合

家賃収入/月

100万円 
(満室時)

経費/月

20万円
(家賃収入の20%)

想定される空室損/月

15万円 
(家賃収入の15%)

ローン返済額/月

50万円 
(返済比率50%)

残額/月

15万円


上記の経費(修繕費、管理費、固定資産税等)20%は、一般的な不動産投資にかかる割合として収支シミュレーションでも用いられる数字です。

また、想定空室損(空室率)は5~15%が一般的ですが、ここでは15%で計算をしてみました。


このように返済比率を50%におさえることができれば、毎月の残金(大家さんの収入)は15万円となり、突発的な費用の発生や多少空室が増えても対応が可能となります。


返済比率が60%の場合のシミュレーション

では、上記と同様の家賃収入額で返済比率が60%の場合も見てみましょう。


例)返済比率が60%(注意が必要)の場合

家賃収入/月

100万円 
(満室時)

経費/月

20万円
(家賃収入の20%)

想定される空室損/月

15万円 
(家賃収入の15%)

ローン返済額/月

60万円 
(返済比率60%)

残額/月

5万円


毎月の残額は5万円となり、非常に少ないです。

この返済比率では、以下のようなデメリットへの対処がむずかしくなってしまいます。


デメリット1:修繕費用等の突発的な出費に対応できない

所有する不動産投資物件の設備が故障や破損した場合、即座に修理や修繕が必要になりますが、毎月の残金が少ないと修繕費用の捻出がむずかしくなってしまいます。


一棟物件は区分マンションに比べて部屋数が多く建物も大きいため、不具合が発生した場合は対応範囲が広く費用もかかります。

特に中古の一棟物件は築年数によって修繕箇所も増える傾向が強いため、ある程度の自己資金を手元に残し、いざというときのための備えが必要です。


そのためにも、無理のない返済比率の物件を選ぶことが重要です。


デメリット2:空室の増加に対応できない

不動産投資において最大のリスクとなるのが空室です。

物件選びの際に賃貸需要の高い好立地物件を選んだとしても、いつかは退去者が出るのは避けられませんし、次の入居者が決まるまでのあいだは空室になることが十分予測できます。


上記の返済比率シミュレーションでは空室損として15%で計算しましたが、想定以上の空室が出たり空室期間が長引いりした場合は収支が赤字になる危険性もあるのです。


空室期間中はその部屋の家賃収入がないにもかかわらず、ローンの返済や経費はかかります。

毎月の残額で賄えない場合は持ち出しとなり、手持ちの資金がどんどん減ってしまい返済が滞り、最終的には不動産を差し押さえられる危険性も考えられます。


デメリット3:ローンの金利上昇に対処できない

不動産投資ローン契約時に「変動金利」を選んだ場合、金利が上昇することでローン返済額が増えてしまい、残額に大きな影響が出ることも予想できます。


現時点(2021年10月)では低金利なため、返済比率が高くても毎月のローン返済額を無理なく支払うことができているかもしれません。

しかし、今後の経済状況によっては金利が上昇する可能性は十分考えられます。


現況で返済比率が高い場合は、金利が上昇することでさらに返済比率は上がります。

金利上昇によって、毎月の残額の減少を余儀なくされる危険性があることを念頭においたうえで物件を選ぶ必要があります。


不動産投資の返済比率を下げるためには?


電卓 クエスチョンマーク

ここでは、返済比率に余裕がある場合の計算シミュレーションを紹介するとともに、返済比率を下げる方法について解説します。


返済比率が40%の場合のシミュレーション

上記の返済比率が高くなった場合のシミュレーションとは逆に、ここでは返済比率が低くなった場合のシミュレーションをおこないました。

どのように変化したのか見てみましょう。


例)返済比率が40%(安心)の場合

家賃収入/月

100万円 
(満室時)

経費/月

20万円
(家賃収入の20%)

想定される空室損/月

15万円 
(家賃収入の15%)

ローン返済額/月

40万円 
(返済比率40%)

残額/月

25万円


返済比率40%では、残額が大幅に増えることがわかりました。

これだけの金額が手元に残れば、突発的な修繕費用がかかっても、十分対処できるでしょう。このように、返済比率を低くすることができれば、余裕を持って不動産投資をおこなうことが可能になります。


しかし実際には、ここまで返済比率が低い収益物件を見つけるはむずかしいかもしれません。

また、経年劣化とともに不動産物件の家賃は下落していくため返済比率を低く保つのは、さらにむずかしくなります。


そこで、不動産投資を安全におこなえる返済比率50%以下におさえるためにできる対策方法を以下にまとめました。


方法その1.物件購入時に頭金を多く入れる

収益物件購入時に自己資金を頭金として多めに入れ、融資額を減らすことで返済比率を下げる方法があります。

不動産投資ローンの融資額が減れば、元金にかかる金利も減るため、毎月のローン返済額をおさえることにつながります。


しかし、自己資金に余裕がない場合、この方法はおすすめできません。

不動産投資物件の建物や設備に不具合や故障が生じた場合、それらの修繕費用が急遽必要になる場合もあります。


こういった突発的な費用を賄うために、ある程度の自己資金をプールしておくことが重要です。


方法その2.物件購入時の諸費用をおさえる

不動産投資物件の購入時には、諸費用(仲介手数料、印紙税、不動産取得税など)が必要になります。

これらの諸費用を減らすことで融資額を減らすことが可能です。


不動産売買時の仲介手数料が発生しない物件を選んだり、不動産投資会社と提携している金融機関でローンを利用することで費用の一部を減らせます。


方法その3.繰り上げ返済をおこなう

自己資金に余裕ができたら、ローン返済期間中に前倒してローンを返済する「繰り上げ返済」をするのも返済比率を下げる方法のひとつです。

毎月支払うローン返済額を減らすことで、返済比率を下げることができます。


ただし、金融機関によっては繰り上げ返済に手数料がかかる場合があります。

繰り上げ返済の度に数千円~数万円の手数料を設定している金融機関もあれば、残っている元金に対して手数料〇%と設定している金融機関もあるため、繰り上げ返済の条件などをしっかりと調べたうえで利用するとよいでしょう。


また、繰り上げ返済することで手持ちの資金も減ってしまうため、想定外の出費に備えてある程度の余剰金を残しておくことをおすすめします。


方法その4.返済期間を延長する

返済比率を下げる方法として、返済期間の延長も有効な手段のひとつです。

返済期間が延びることで毎月のローン返済額が減り、結果的に返済比率を下げられます。


ただし、返済期間を延ばすことで返済総額は多くなってしまいます。

また、金融機関から融資を受ける際に保証会社に保証金を支払っている場合は、保証金の追加を求められるケースもあるため注意が必要です。


なお、返済期間の延長は、ローン契約者の希望がかならずしも通るとは限りません。

融資対象物件の耐用年数や金融機関の物件評価によっては、断られる可能性もあります。

どうしても返済期間を延長した場合は、ほかの金融機関に借り換えの相談をしてみるのも方法のひとつです。


方法その5.ローン金利を下げるよう交渉する

ローン金利を下げることも、返済比率を低くするための有効な手段です。

金利が下がれば毎月の返済額が減るため返済比率が下がり、それだけキャッシュフローを増やすことができます。


金利を下げるには、不動産投資物件購入時に複数の金融機関にローン審査を申し込み、できるだけ金利の低い金融機関から融資を受けるとよいでしょう。

ただしローン返済中の場合の金利引き下げ交渉は、金融機関が受け付けているか確認の上、交渉をおこなう必要があります。


返済期間お延長と同様、どうしても金利を下げたい場合は、ほかの金融機関に相談してもよいでしょう。


まとめ

ローンの返済比率が高すぎると手元に残るキャッシュフローが少なくなり、突発的な出費に対応できなかったり赤字経営になってしまったりという危険性が高まります。

理想的な返済比率は50%以下ですが、その割合を維持するためには頭金を多く入れたり繰り上げ返済をおこなったり、工夫が必要です。


不動産投資物件を購入する際には、しっかりと収支シミュレーションをおこない、無理のない返済比率を維持できる物件を選ぶことが重要です。

安全な不動産投資をおこなうためにも、返済比率にぜひ注目してください。

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