不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説
2021/11/08

不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説

不動産投資における繰り上げ返済の種類と特徴返済期間短縮型の特徴返済額軽減型の特徴繰り上げ返済のシミュレーション例不動産投資で繰り上げ返済をおこなうメリットローンの総返済額が減る返済期間を短縮できるキャッシュフローの改善につながる金利変動リスク対策につながる所有物件を効果的に増やせる精神的に楽になる不動産投資で繰り上げ返済をおこなうデメリット資金不足で突発的な出費に対応できない場合がある手数料が発生する場合がある計上できる費用が減るため所得税が上がる低金利の場合は効果が薄い団信の生命保険効果が少なくなる不動産投資で繰り上げ返済をおこなう際の注意点繰り上げ返済は高金利の物件を優先させる低利回り物件は繰り上げ返済しない手持ち資金額に留意する繰り上げ返済でローンを完済したら抵当権抹消登記の手続きをするまとめ

不動産投資を始めるにあたって、多くの場合は金融機関の不動産投資ローンで借入れをおこない一棟アパートや区分マンションなどの不動産物件を購入します。

そして賃貸経営で得た家賃収入から月々のローン返済をおこないますが、ローン返済期間中、手持ち資金に余裕ができたら繰り上げ返済を検討してみましょう。


ローンの繰り上げ返済をすることで、返済総額を減らしたり、返済期間を短縮したりできますが、そのほかにもメリットはたくさんあります。

今回は、不動産投資における繰り上げ返済の種類やメリット・デメリット、利用する際の注意点を解説します。


また、繰り上げ返済のシミュレーション例も記載しました。

繰り上げ返済によってローン返済額がどのこらい減少するのか、ぜひ確認してください。


不動産投資における繰り上げ返済の種類と特徴


ローン ビジネスマン 文房具

繰り上げ返済とは、月々のローン返済額よりも多くの金額を返済分として支払い、ローン元本の一部または全額を前倒しで返済することで、ローン元本の残債を予定よりも早く減少できます。

元本が減ることで、支払う利息を減らしたり返済期間を短くすることが可能です。


なお、残債の一部を繰り上げ返済する場合は2種類の方法があります。


返済期間短縮型の特徴

ひとつ目は「返済期間短縮型」です。

毎月のローン返済額はそのままですが、返済期間が短縮されるのが特徴です。

返済期間が短くなれば、その分の支払い利息を大幅に減らすことができ、結果として総返済額の減少につながります。


返済額軽減型の特徴

ふたつ目は「返済額軽減型」で、返済期間はそのままですが毎月のローン返済額が減少するのが特徴です。

返済期間短縮型に比べて支払い利息の軽減面での効果は薄いですが、月々のキャッシュフローは増加するため、資金を貯めたい場合や突発的な修繕費用が発生した際など急な出費に備えることができます。


繰り上げ返済のシミュレーション例

ここでは、返済期間短縮型・返済額軽減型の繰り上げ返済シミュレーションの結果を紹介します。

諸条件は以下のようになります。


例)繰り上げ返済シミュレーションの条件


・当初借入元金  : 30,000,000 円

・当初借入期間  : 30年 0ヶ月

・返済ずみ期間  : 1年0ヶ月

・返済方法    : 元利均等返済

・借入金利    : 2.5%

・繰り上げ返済額 : 2,000,000 円


 

期間短縮型

返済額軽減型

月々の返済額

118,536円

110,434円

残り返済期間

26年3ヶ月

29年0ヶ月

減少する利息額

1,979,669円

811,214円


返済期間短縮型は、残りの返済期間が2年9カ月短縮されたことで、利息額約200万円が減少しました。


返済額軽減型の場合は、減少する利息額は約81万円となり、返済期間短縮型に比べると減少幅が小さいです。

その代わり毎月の返済額が8千円程度下がっています。


返済期間短縮型、返済額軽減型、どちらで繰り上げ返済をしても利息額が減少することがわかりました。


どちらのタイプの繰り上げ返済をおこなうかは、タイミングや不動産経営状況を確認した上で適切な繰り上げ返済をおこなうとよいでしょう。


不動産投資で繰り上げ返済をおこなうメリット


不動産投資で繰り上げ返済をおこなえば、さまざまなメリットを得ることができます。


ローンの総返済額が減る

上記に記載したように、ローン残債の全額または一部を繰り上げ返済した分は借入元本にあてられます。

元本が減ることで毎月支払う予定だった利息が減り、その結果ローンの総返済額も減少します。


返済期間を短縮できる

繰り上げ返済をおこなう際、上記の返済期間短縮型を選んだ場合は、ローンの返済期間を短縮でき、結果として総返済額を大幅に減らすことができます。


ただし、返済期間短縮型の繰り上げ返済を選んだ場合は、毎月のローン返済額は変わりません。

返済期間短縮型の繰り上げ返済をおこなう際は、突発的な修繕費用に対応できるよう、自己資金に余裕があるときにおこなうとよいでしょう。


キャッシュフローの改善につながる

上記の返済額軽減型で繰り上げ返済をおこなえば、月々のローン返済額が減少するため毎月のキャッシュフローの改善に役立ちます。

ただし、返済期間はそのままとなります。


金利変動リスク対策につながる

不動産投資物件購入の際「変動金利型」ローンを組んだ場合、今後の経済状況によってはローン金利が上昇するリスクがあります。

金利が上がってしまうと支払う利息が増えてしまうため、金利変動リスクをおさえるためにも、繰り上げ返済をできるだけおこない、借入期間を短縮たり返済総額を減らすとよいでしょう。


ただし、不動産投資ローンの金利タイプが変動金利ではなく、「固定金利型」を選んだ場合は、固定金利期間中に金利が変動しても支払う利息額は変わりません。

繰り上げ返済をおこなう際には、不動産投資ローンの金利タイプを確認するとよいでしょう。


所有物件を効果的に増やせる

最初の不動産投資が好調で、今後も不動産経営を拡大したいと考えている場合は、積極的に繰り上げ返済をおこないローン完済期間を短縮するとよいでしょう。


ローンを完済した1件目の不動産物件を担保に2件目の物件を購入し、1件目の物件から得られる収益を2件目の繰り上げ返済にあてます。

2件目の物件がローン完済したらそれを担保にして3件目を購入……といった具合に所有物件を効率よく増やすことで資産形成の加速・拡大につながります。


このサイクルを繰り返すことで所有する不動産投資物件が増え、大きな資産形成へとつながるのです。


精神的に楽になる

高額な不動産投資物件をローンで購入しているため、「借金」が大きなプレッシャーになることも少なくありません。

繰り上げ返済をおこなえばローン残債が減少するため、精神的な負担も減るのです。


不動産投資で繰り上げ返済をおこなうデメリット


デメリット ノート 植物

不動案投資ローンの繰り上げ返済には多くのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。

ローンの繰り上げ返済を上手に利用するためにも、どのようなデメリットがあるのか、しっかり把握しておきましょう。


資金不足で突発的な出費に対応できない場合がある

自己資金に余裕がない状態でローンの繰り上げ返済をしてしまうと、なんらかの原因で現金が必要になっても支払いができない可能性があります。


不動産投資はミドルリスクの投資方法と言われていますが、現物投資特有のリスクは存在します。

収益物件の設備の故障や破損にともなう修繕費リスクや退去による空室リスクが発生する場合もあります。


繰り上げ返済をおこなう場合は、こういった予期せぬ費用がかかることを想定したうえで、ある程度の自己資金を残しておくことも重要です。


また、新たに不動産投資物件を購入したいと考えている場合も、繰り上げ返済したことで資金が枯渇しては初期費用を支払うこともできません。


ローンの繰り上げ返済は、資金に余裕がある状態で、いくらまでなら返済にあてても自己資金に支障がないか、しっかり検討したうえで実行に移すとよいでしょう。


手数料が発生する場合がある

ローン期間中の繰り上げ返済には、一定の手数料が発生する場合もあります。

金融機関によって手数料額は異なります。

たとえば、1度の繰り上げ返済につき数千円~数万円程度(繰り上げ返済額によって変動)の手数料が必要だったり、残っている元金に対して手数料として数パーセントを支払う金融機関など、その条件はさまざまです。


繰り上げ返済を複数回に渡っておこなう場合は、その都度手数料が発生してしまうため、ある程度まとまった返済資金が貯まってから、まとめて繰り上げ返済すれば手数料を節約できます。


また、金融機関や金利タイプによっては繰り上げ返済できない場合もあります。

こちらも金融機関によって条件が異なるため、ローン契約時には、繰り上げ返済に必要な手数料や条件を確認しておきましょう。


計上できる費用が減るため所得税が上がる

不動産投資で不動産所得があった場合は確定申告が必要になります。(不動産所得が20万円以下は確定申告不要の場合があります)


確定申告では、支払ったローン利息を経費として計上できますが、繰り上げ返済したことで利息分が減った(またはなくなった)場合は、経費計上できる額も少なくなります。

そのため、繰り上げ返済する前と比べて所得税や住民税が高くなる可能性があるのです。


不動産所得が20万円以下でも確定申告が必要なケースは?赤字なら損益通算も

不動産投資で収入があっても、不動産所得(= 総家賃収入 - 必要経費)が20万円以下であれば確定申告は不要です。

しかし不動産所得が20万円以下であっても確定申告が必要になる場合もあるので注意しましょう。


【確定申告が必要になるケース】

・給与収入が2,000万円を超えた場合

・ほかの副業による所得との合計が年間20万円を超えた場合


また、不動産所得が赤字の場合は本業の所得(給与所得など)と「損益通算」して課税対象額を減らすことが可能です。

損益通算結果の、所得税を払いすぎている場合は還付が受けられるため、忘れずに確定申告をおこないましょう。


低金利の場合は効果が薄い

融資を受けた際の金利が低い場合は、繰り上げ返済の効果は薄くなります。

低金利であるため、そもそも利息額の負担自体が小さく、そのため繰り上げ返済の効果も大きくないため、繰り上げ返済のメリットを得られにくくなります。


低金利の場合は、わざわざ繰り上げ返済せずに、自己資金として現金をプールしておくか、新たな不動産物件の購入費用にするとよいでしょう。


団信の生命保険効果が少なくなる

不動産投資ローンを利用する場合、ほとんどの金融機関では「団体信用生命保険(団信)」加入が融資条件なります。


団信とは、ローン契約者が病気や事故で死亡(または高度障害)などでローンの返済ができなくなった場合、保険会社がローン全額の返済をおこなう保険システムです。

保険金によってローンが完済された不動産投資物件は、遺族(家族)が引き継ぐため、生命保険代わりにもなります。


この場合、「ローン残債=保険金額」となるため、繰り上げ返済して残債を減らしてしまうと生命保険としての効果も少なくなります。


不動産投資で繰り上げ返済をおこなう際の注意点

考えるビジネスマン 注意 ビックリマークローンの繰り上げ返済の効果を十分に引き出すためには、タイミングや手持ち資金額などにあわせて適切におこなう必要があります。

ここでは繰り上げ返済をおこなうにあたって注意したい点をまとめました。


繰り上げ返済は高金利の物件を優先させる

上記でも説明したように低金利の物件は、繰り上げ返済の効果が薄いです。

複数の不動産物件を所有している場合は、できるだけ高金利の物件に対して繰り上げ返済をおこなうことで、より効果を実感することができます。


低利回り物件は繰り上げ返済しない

不動産投資は、少ない自己資金で大きな資産を形成できる「レバレッジ」を効かせた投資方法です。

そのため、利回りが低い物件のローンを繰り上げ返済すると、結果的に自己資金の投入額が増えてしまいレバレッジ効果が薄くなってしまいます。


利回りの低い物件は繰り上げ返済をするよりも、自己資金として新たな不動産物件の購入費用にあてたり、貯蓄しておくとよいでしょう。


手持ち資金額に留意する

繰り上げ返済をおこなうことで自己資金は減少しますが、突発的な修繕費用の発生や金利の変動リスクなど、想定外の事態に備えて、ある程度の現金をプールしておくことも必要です。


繰り上げ返済することで総返済額を減らすことも大事ですが、それ以上に不動産投資物件を安全に運用することが重要です。

そのためにも、繰り上げ返済をおこなう場合は、自己資金に余裕があるか、いくらまでなら繰り上げ返済にあてても問題ないかなど、しっかりと計画を立てることをおすすめします。


繰り上げ返済でローンを完済したら抵当権抹消登記の手続きをする

不動産投資ローンを全額繰り上げ返済する際は、抵当権の抹消登記の手続きを忘れずにおこないましょう。

抵当権の抹消手続きは、自分でおこなうこともできますが、法務局に提出する書類作成などの手間がかかります。

自分で手続きをおこなうことがむずかしい場合は、司法書士などに依頼するとよいでしょう。


まとめ

不動産投資ローンの繰り上げ返済をおこなうことで、総返済額を減らしたり、返済期間を短縮したりというメリットを得られます。

ただし、繰り上げ返済する場合は、突発的な出費に対処できる程度の自己資金を残しておく必要があります。


まずは、繰り上げ返済のシミュレーションをおこなって、繰り上げ返済することで得られる効果を確認しましょう。

効果が薄い場合や自己資金に余裕がない場合は無理に繰り上げ返済せず、そのままプールしたり新たな不動産投資物件の購入資金にするなど検討するとよいでしょう。

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