アパート投資で手出し(赤字)になりやすい物件の特徴を解説!
2025/07/04

アパート投資で手出し(赤字)になりやすい物件の特徴を解説!

アパート投資の「手出し」とは?物件を売却しても黒字回復できない可能性が高い赤字のアパート物件は実績として評価されない手元の自己資金が減っていくアパート投資で手出しを防ぐ3つの方法1:厳しい数字で収支シミュレーションをおこなう2:周辺を含めて現地調査をおこなう3:アパート投資のリスクを把握しておくアパート投資で手出しになりやすいNG物件の特徴ローンの返済比率が高い物件賃貸需要が低い立地の物件アパート投資では手出しがOKのケースもあるまとめ

アパート投資における「手出し」とは、月々の収支が赤字になったときに自己資金で不足分を補填することです。

手出しが一時的であれば大きな問題ではありませんが、手出しがつづく場合は今後のアパート投資に大きな影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。


では、どのような物件が手出しになりやすいのでしょうか。


今回は、アパート投資における「手出し」について、手出しになりやすい物件の特徴・手出しがつづくことで起こりうるリスク、そして手出しを防ぐ方法について解説します。


現在、手出しが多くて困っている方だけでなく、アパート投資を検討中の方もぜひ参考にしてください。


アパート投資の「手出し」とは?

シーソーの上の収入と支出 レンガの壁 ツタ


アパート投資における「手出し」とは、月々の収支が赤字のときに自己資金から不足分を補填することをいいます。「持ち出し」と呼ばれることもあります。


そもそもアパート投資は、家賃収入や売却益を得ることで資産を増やす「不動産投資」です。

そのためアパート投資を開始する前には、しっかり黒字化できるかどうか検討したうえで「収支計画」を立てます。


アパート投資の収支は、年間の支出(ローン返済金・修繕費・保険料・税金など)より収入(家賃・礼金など)が多ければ利益が出ていれば「黒字」となります。


もし収支計画を立てる段階で、黒字化がむずかしいと判明した場合は、物件を選び直したり、自己資金やローンなどの資金計画を検討し直したりして、収支計画を立て直すのです。


ただし、アパート投資の収支計画はあくまで予測です。

長期にわたってアパート投資を継続する場合、物価の変動や景気動向、税制などが変化することはめずらしくありません。


そのため、健全なアパート投資をつづけるためには、定期的に収支計画を見直すことが欠かせないのです。

また予期せず赤字になってしまい、一時的に手出しをせざるを得ないケースもありますが、その場合は大きな問題にはなりにくいです。


しかし、アパート投資で赤字がつづくことで以下のようなリスクが発生する可能性もあるため注意が必要です。


物件を売却しても黒字回復できない可能性が高い

アパート投資の成否は、アパート運用中に得た家賃収入(インカムゲイン)と物件の売却益(キャピタルゲイン)のトータルで決まります。

たとえアパート投資の運用中に赤字がつづいても、物件の売却益で最終的に黒字化できれば、このアパート投資は「成功した」と考えられるのです。


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しかしアパート投資で赤字がつづいているアパートは、立地も良くない場合も多く、売却額が購入額を下回る「売却損(キャピタルロス)」になるケースもめずらしくありません。


したがって、毎月手出しが発生しているような状況では、たとえ売却益があってもトータルで黒字にすることは非常にむずかしいと考えられます。


特にローンが残っている物件を売却するためには、ローン残債を一括返済しなければなりません。


通常、物件の売却金でローンを一括返済しますが、売却額でローンを返済できない場合は自己資金などから補填することになります。

しかし手出しで自己資金に余力がなければ売却することもできず、結局手出ししながらアパート投資を継続することになってしまうのです。


このような状況になる前に、アパート投資が毎月赤字で手出しがつづくようであれば、できるだけ早い段階で「損切り」する判断も必要になるでしょう。


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赤字のアパート物件は実績として評価されない

アパート投資で手出しのが多い場合、新たに収益物件を購入する際の融資審査で不利になるケースが考えられます。


アパート投資をはじめ不動産投資では、所有物件を増やして投資規模の拡大を図ることが可能です。


アパート投資では、物件の購入資金の大部分を金融機関から融資を受けるのが一般的です。

しかし、融資を受けるためには融資審査に通過しなければなりません。融資審査では、ローン契約者の個人属性や物件の収益性・資産価値などのほか、アパート投資の実績も考慮されます。


既存のアパート投資で得た利益が多ければ、「不動産投資実績」があるとみなされ、審査上有利に働く可能性があります。

投資が評価されれば有利な条件で新規物件の融資を受けやすくなるでしょう。


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しかし、アパート投資で手出しが発生している場合は、審査のうえでプラスの評価にはつながりにくく、融資審査に通らない可能性も考えられます。


将来的にアパート投資の規模拡大を狙っているのであれば、手出しは大きなマイナス要因になりうることを覚えておきましょう。


手元の自己資金が減っていく

アパート投資で手出しが発生すると、当然ですが自己資金が減っていきます。

手出し=赤字であるため、黒字にならないかぎり、物件を保有しているだけで自己資金は減ってしまうのです。


万が一自己資金が尽きてしまうと手出しで補填することができなくなります。その結果、ローンの返済が滞ると物件を差し押さえられ、最終的に競売にかけられるおそれがあります。


競売では、市場価格よりも低い価格で売却される傾向があるため残債務を抱える可能性が高く、最悪の場合は自己破産するおそれも考えられるのです。


関連記事:不動産投資で自己破産に陥る理由を解説!破産を避ける5つの方法


アパート投資を円滑にすすめるためには、ある程度まとまった額の自己資金を手元に残しておくことは非常に重要です。

しかし、手出しがつづくようであれば、損失を最小に抑えるためにも、できるだけ早め売却を検討しましょう。


アパート投資で手出しを防ぐ3つの方法

リスクダウン 青いブロックに下向きの矢印 RISKDOWN


前述したように、アパート投資で手出しがつづくと最悪の場合は物件を競売されるなどのリスクが生じます。そのため、できるだけ手出しを防ぐことが安定したアパート投資につながります。


手出しを防ぐための主な方法は次の3点があげられます。


1:厳しい数字で収支シミュレーションをおこなう

2:周辺を含めて現地調査をおこなう

3:アパート投資のリスクを把握しておく


それぞれについて詳しく解説します。


1:厳しい数字で収支シミュレーションをおこなう

アパート投資で手出しが発生する原因のひとつ目は、「収支計画で見積もった数字があまい」ことがあげられます。


収支シミュレーションをおこなう場合、家賃の下落率・空室率・ローン返済額と返済期間・ローン金利など、さまざまな項目の数字を検討する必要があります。

これらの数字の見積りがあまいと想定した収益を得られず、結果的に手出しが発生してしまうのです。


手出しを防ぐためにも、収支シミュレーションはできるだけ厳しい数字を設定しておこない、そのうえで安定した収益を得られる物件を選ぶことが大事です。


また利回りを参考にする際は、購入時の諸費用や運用時の必要経費(ランニングコスト)を反映して計算する「実質利回り」を用いましょう。


実質利回りの計算は以下の式で求めます。


実質利回り(%)=(年間家賃収入−年間必要経費)÷(物件購入価格+購入時の諸経費)×100


実質利回りを計算することで「手元に残るおおよその金額」を把握することで、手出しを防ぎやすくなるでしょう。


なお、アパート投資では「表面利回り」が使われることも多いです。

収益物件ポータルサイトなどに掲載されている物件情報に記載されている利回りのほとんどが表面利回りです。


表面利回りは下記の計算で求めます。


表面利回り(%)= 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100


表面利回りの計算には経費は反映されていないため、「物件価格に対してどの程度の年間収益が得られるか」をざっくりと表します。

そのため表面利回りだけで収益物件を選んでしまうと、実際の収益が想定した数字よりもかなり低くなるケースも多いため注意が必要です。


関連記事:アパート経営の最低の利回りラインは?選ぶべき高利回り物件を解説


2:周辺を含めて現地調査をおこなう

アパート投資で手出しが発生する原因のふたつ目は、「物件や周辺環境のリサーチが不十分」であることがあげられます。


収益用のアパート物件は高額です。

購入してから「失敗した!」と気付いても、簡単に買い直すことはむずかしいでしょう。

手出しを避けるためには、物件・周辺環境の入念な調査が欠かせません


ここで大事なのは、現地へ行き、直接物件と周辺環境をチェックすることです。

入居者に選ばれやすいアパートの主な条件を参考にして、物件及び周辺調査をおこないましょう。



物件(建物・設備)のチェックポイント

入居者に選ばれやすいアパートは、外観や室内がしっかりと管理されていて、ニーズの高い便利な設備が導入されている物件です。

物件の建物や設備のチェックする際は、以下のポイントを確認しましょう。


【物件のチェックポイント】

◦建物・設備の状態:破損や汚損箇所の有無・ニーズの高い設備導入の有無 など

◦共用部の清掃:エントランス・ゴミ置き場・駐輪場などのはきちんと管理されているか など

◦入居状況:賃料・入居者の属性・入居年数 など


アパートの建物は経年とともに劣化しますが、管理が適切にされていれば、古くても入居は付きやすいです。


したがって、建物・設備・共有部の管理状態が悪いアパートは見た目が悪く、内見があっても成約に結び付きにくいです。また購入後、修繕費が高額になるケースもあるため注意が必要です。


また中古アパートの場合は、現在の賃料や既存の入居者についても確認しましょう。入居者の属性を確認することで、ターゲットニーズが乖離していないか判断できますし、賃料設定が適切かどうかもわかります。


特に空室率が高い原因のひとつとしてあげられるのが、設定している賃料が周辺の家賃相場よりも高いケースです。

賃料を見直すことで手出しの防止につながる可能性もあるため、かならず確認しましょう。



周辺調査のチェックポイント

アパート投資をおこなううえで、立地は最重要ポイントのひとつです。

入居者は安全かつ便利な暮らしを求めます。

通勤・通学がしやすく、生活するうえで便利な施設が複数存在する、利便性の高いアパートが選ばれやすいです。


【周辺調査時のチェックポイント】

◦駅からの距離:徒歩10分以内・複数の路線を利用できるか など

◦周辺に便利施設があるか:コンビニやスーパーなどの買い物施設・銀行や郵便局・幼稚園や学校・公園 など

◦周辺に嫌悪施設はないか:騒音や臭気を発する工場・墓地や斎場・反社事務所・歓楽街 など

◦競合物件の有無


上記の条件が多くあてはまる物件であれば、退去後もすぐに次の入居者が決まりやすく手出しの防止につながるでしょう。


周辺環境の確認方法は、実際にアパート周辺を歩いてみるとわかりやすいです。

物件情報に記載されている情報が正しいかどうか実際に駅から物件まで歩いてみたり、アパートの周囲を散歩したりすると良いでしょう。


また地元の不動産会社を訪ねてリサーチすると、より多くの情報を得ることも可能です。


ただし、立地に関しては、アパートのターゲット層によって求める条件が異なります。

たとえば単身者をターゲットにした場合、駅から近く、周辺にコンビニや銀行などがあるアパートが選ばれやすいです。


一方、ファミリー層をターゲットにしたアパートの場合は、駅から多少離れていても、評判のよい学校が近隣にある、安全に子育てができる立地の物件が選ばれやすいです。


また周辺に競合物件が多い場合、入居者獲得のために家賃の引き下げを余儀なくされるケースがあるため注意が必要です。


3:アパート投資のリスクを把握しておく

アパート投資には、さまざまなリスクを伴います。しかし、これらリスクの中には事前に把握しておくことで避けられたり、損失を最小に抑えたりすることが可能です。


アパート投資における主なリスクには、以下のようなものがあります。


◦空室リスク

◦家賃滞納リスク

◦家賃下落リスク

◦金利上昇リスク

◦修繕リスク

◦災害リスク


上記のようなリスクを想定しないままアパート投資を始めてしまうと、想定通りの収入が得られなかったり、想定外の出費に対応できなかったり、手出しの原因になってしまいます。


前述したようにアパート投資のリスクには、あらかじめ備えておくことで損失を最小に抑えることができるものも多いです。

適切なリスク対策をおこなうことが、手出しの防止につながるでしょう。


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アパート投資で手出しになりやすいNG物件の特徴

NGブロックの上に立つ模型の家 青いバツ印のプラカード


アパート投資で手出しになりやすい物件には特徴があります。

手出しを避けるためにも、以下のようなアパート物件の購入は、できるだけ避けることをおすすめします。


ローンの返済比率が高い物件

アパート投資を始める際は、金融機関から融資を受けるのが一般的です。

融資を利用することで、自己資金の負担を軽減でき、レバレッジを効かせた投資ができるなど多くのメリットがありますが、ローンの返済比率に注意する必要があります。


ローンの返済率とは、月々の家賃収入に対するローン返済額の割合のことで、ローンの支払いリスクがどのくらいあるかを計る指標として用いられます。


返済比率は50%以下が目安です。

50%を超えるとアパート投資の家賃収入に対して、ローン返済金の負担が重い=手出しの可能性が高くなるおそれがあるため注意が必要です。


ローン返済比率が高い物件の主な特徴には以下のようなものがあります。


◦新築物件

◦築古物件

◦相場よりも高い価格が設定されている中古物件


いずれも物件もローン返済率が高くなる要素を含んでいるため、購入を検討する際は十分な注意が必要です。


特に新築物件は、そもそもの価格が高額なのに加えて、建築費の高騰によって物件価格がさらに上昇しています。


一方で、築古物件は価格が安いですが、空室になりやすく、想定した家賃収入を得られない可能性があります。

また、建物や設備の修繕費用が高額になるケースもめずらしくありません。


なお、ローン比率は、アパート投資を始める前の収支計画の段階で確認することができます。


アパート投資では、予期せず空室が発生したり、突発的な支出が必要になったりする場合もありますが、そういった状況でも無理なくローンの返済を継続できる物件を選ぶことが大事なポイントになるでしょう。


関連記事:不動産投資ローンの返済比率を下げる方法を解説!目安の比率は何%


賃貸需要が低い立地の物件

アパート投資で安定した収益を得られるかどうかは、物件の立地にかかっていると言っても過言ではありません。


前述したように、入居者は、駅から近い・買い物施設や便利施設が近いなど、アパートの立地を重視します。


逆に言えば、駅から遠い・コンビニなどが周辺にないなど、入居者ニーズを満たさないアパートは選ばれにくく、入居者探しがむずかしいと考えられます。


空室がつづくと家賃収入が減少するため、手出しが発生しやすくなるのです。

物件を選ぶ際は、賃貸需要が高い物件を選びましょう。


アパート投資では手出しがOKのケースもある

2軒の模型の家 赤い丸印のプラカード 電卓


前述したように、アパート投資は資産を増やす目的でおこなわれます。そのため、収支が黒字になるよう収支計画をたてておこなうのが一般的です。


ただし、月々の手出し額よりも将来的に得られる利益のほうが大きければ、手出しを前提した収支計画を立てるケースもあります。


たとえば、毎月多少の手出しが発生しても、大きな売却益が期待できる場合などが該当します。

またローン完済後の家賃収入を目的としてアパート投資をおこなう場合なども、計画の一環として少額の手出しを容認することもあります。


ただし、アパート投資の収支は計画通りにいくとは限りませんし、売却に関しても想定通りの価格で売れるとはかぎりません。

そのため手出しを前提に収支計画を立てる際は、専門家の意見などを参考にして、より慎重な計画が求められることを覚えておきましょう。


関連記事:不動産投資で毎月手出しのある物件の対策方法!損切りのタイミングも


まとめ

当記事では、手出しになりやすい物件の特徴や、手出しを防ぐ方法について解説しました。


アパート投資で「手出し」が必要になるのは、収支が赤字のときです。

手出しが一時的であったり、計画の一環だったりする場合は問題ありません。


しかし、予期せず手出しがつづくようであれば、最悪の場合は物件が差し押さえられてしまうおそれもあるため早急な対策が求められます。


安定したアパート投資をおこなうためにも、できるだけ手出しが発生するような状況を避けることが大事です。


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岩崎 雅

2020年7月1日〜
当サイトのライターとしてコラム作成業務を開始
プロフィール
不動産ジャンルのライター歴は2年半以上。その間、100本以上のコラム構成・執筆を担当。不動産以外のジャンルも含めると500本以上の執筆経験あり。