金利上昇リスクは不動産投資にどう影響するのか?対策方法も解説!
2024/02/16

金利上昇リスクは不動産投資にどう影響するのか?対策方法も解説!

不動産投資における金利は2種類ある金利上昇とインフレの関係不動産投資で金利が上昇するとどうなる?不動産投資でおこなえる金利上昇リスクへの対策方法「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」のある金融機関を選ぶ手元に資金を残しておく返済期間は長く設定する繰り上げ返済をおこなうローンの借り換えをおこなう固定金利に切り替える物件を売却する金利が上昇することで家賃を値上げできる場合もあるまとめ

2022年~2023年にかけて、日本を除く先進国(アメリカ、欧州、イギリス、オーストラリア)で物価上昇の抑制を目的とした大幅な利上げがおこなわれました。

日本では、日銀の金融緩和政策である「ゼロ金利政策」が1999年に導入されて以来、現在も低金利を維持しています。


しかし2023年9月に、みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行をはじめとした大手銀行は、固定型住宅ローン金利の引き上げをおこないました。

これによって、今後は住宅ローンや不動産投資ローンの変動金利についても利上げの可能性が高いとの見方もされています。


では金利が上昇した場合、不動産投資にはどのような影響が出るのでしょうか?また金利上昇リスク対策にはどのような方法があるのでしょうか?


今回は金利上昇リスクが不動産投資に与える影響を解説しながら、対策方法を紹介します。

いざ利上げとなったときに慌てないよう、いまから予習しておきましょう。


不動産投資における金利は2種類ある

固定金利 変動金利 積み木


不動産投資で収益物件を購入するにあたって、金融機関の不動産投資ローンを利用するのが一般的です。その場合、毎月決まった元金と金利分を返済していきます。


不動産投資におけるローン金利は、「固定金利」と「変動金利」の2種類から選びますが、金利上昇によって影響があるのは「変動金利」を選んだ場合のみです。


固定金利は、借入時から契約満期まで金利が変わらないため、金利上昇の影響を受けません。固定金利は返済期間中、安定した返済計画を立てられるのがメリットですが、変動金利と比較して金利は高めに設定されています。


なお固定金利の期間は何種類かあります。全期間固定金利以外の固定金利を選んだ場合は、一定の固定金利期間が過ぎると、固定金利で延長するかまたは変動金利へ変更するか選択できる場合があります。

そこで変動金利を選んだ場合は、その後は金利上昇の影響を受けることになります。


変動金利は、経済状況や金融市場に応じて数年ごとに金利の見直しがおこなわれます。

金利が低いときには借入金に対する利息の支払いが少なくて済むため、低金利の昨今は変動金利を選ぶ人がほとんどです。


しかし金利が上昇した場合は月々の返済額が増えてしまいます。これを「金利上昇リスク」といいます。


関連記事:【2023年10月】不動産投資ローンの金利推移と相場|金利上昇の対策方法


関連記事:不動産投資ローンの変動金利で金利上昇した場合の対策方法を解説!


金利上昇とインフレの関係

金利上昇の一因となるのがインフレ(インフレーション)です。

インフレになると物価が上がる一方でお金の価値は下がります。一般的にインフレになると消費者の購買意欲の抑制や物価の安定化などを目的に、銀行が利上げをおこないます。


このようにインフレによる物価の上昇に連動して、金利も上昇する仕組みになっているのです。


関連記事:インフレ対策に不動産投資が向いている理由を解説!現物投資は有利?


不動産投資で金利が上昇するとどうなる?

不動産投資で金利が上昇すると支払い利息が増えるため、これまで家賃収入だけで支払えていた月々のローン返済が困難になるケースが考えられます。


不足額は手元の資金(預貯金や給与収入など)から補填することになりますが、その状況がずっとつづくと最終的には手元の資金も尽きてしまうでしょう。

するとローンの返済が滞り、最悪の場合は物件を差し押さえられるおそれもあるのです。


また金利が高くなることで不動産の買い控えが起きます。不動産が売れない状態がつづくと、最終的には不動産価格の下落につながるのです。


不動産投資でおこなえる金利上昇リスクへの対策方法

金利上昇 ピンクとオレンジの画用紙 ペン


依然として低金利状態がつづく不動産投資ローンの金利ですが、今後の金融政策によっては金利上昇の可能性は否定できません。


前述したように、金利が上昇すると月々のローン返済額が増加するため、返済が困難になることも考えられるのです。

そのため不動産投資をおこなうにあたって、金利上昇リスクを見越した対策を考えておく必要があります。


ここでは金利上昇リスクへの対策方法を紹介します。


「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」のある金融機関を選ぶ

金融機関によっては、金利上昇による急激なキャッシュフローの悪化を避けるために、「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」が設けられているケースがあります。

月々の返済額をできるだけおさえたい場合は、融資を受ける際に「5年ルール」「1.25倍ルール(125%ルール)」がある金融機関を選びましょう。


5年ルールとは

変動金利は半年ごと(おもに4月と10月)に金利の見直しがおこなわれ、翌々月から適用されるのが一般的です。


しかし「5年ルール」を設けている場合は、たとえ金利が上昇しても5年間は返済額が据え置かれます。そのため金利の上昇による、急激なキャッシュフローの悪化を防ぐことができるのです。


なお5年ルールが適用された場合、「金利上昇で増えた返済額」と「据え置きされた返済額」に差額が生じます。この差額は6年目からのローン返済額に上乗せされます。


その際、月々の返済額のうち金利が占める割合が大き過ぎると、元本の割合が少なくなってしまいます。

すると返済期間が満了になっても元本の返済が終わらず、残った元本について一括返済を要求されるケースがあるため注意が必要です。


大幅な金利上昇などが起こった場合は5年ルールで返済額が据え置かれている間に、繰り上げ返済などをして元本をできるだけ減らしておきましょう。


1.25倍ルール(125%ルール)とは

金利が上昇したことで月々の返済額が増えても、前回の返済額の1.25倍(125%)を上限にするというルールです。

たとえば、5年目までの月々の返済額が10万円だった場合、6年目からの月々の返済額が13万円だったとしても12.5万円が返済額の上限となるのです。


このように5年ルールと1.25倍ルール(125%ルール)を併用することで、6年目以降の月々の返済額が大幅に増加することを防げます。


ただし、5年ルール同様、1.25倍ルール(125%ルール)も上昇した金利分の支払いを先延ばしにしただけです。最終的には上昇した金利についても支払いが生じることを覚えておきましょう。


手元に資金を残しておく

不動産投資では、金融機関から融資を受ける際、頭金を入れるのが一般的です。

その際は金利上昇リスクに備えてできるだけ多く借入れをおこない、自己資金のうちある程度の資金を手元に残しておきましょう。


手元に資金があれば急激な金利上昇が起きても繰り上げ返済などで対応することができます。

また手元に資金を残しておくことで、金利上昇にかぎらずさまざまなリスクに対処できたり、新規物件の購入費用にしたりと有効的に活用できます。


資金に余裕があれば自己資金率を上げても

自己資金に余裕がある場合は、ローン借入時に自己資金(頭金)を多く入れて、自己資金率を上げるのも金利上昇リスクの対策につながります。


頭金を多く入れることで借入れ額が減り、融資審査に有利にはたらくため、結果的に低い金利で融資を受けられる可能性が高くなります。

また月々のローン返済額も減少するのでキャッシュフローにも余裕が出るでしょう。


物件価格に対して自己資金を多く投入しても手元に十分な資金を確保しておける場合は、ぜひ検討してみましょう。


返済期間は長く設定する

金利以外にもキャッシュフローへ影響を与える要因のひとつが返済期間です。

返済期間はなるべく長く設定することで月々の返済額がおさえられ、その分キャッシュフローに余裕がうまれます。


逆に返済期間が短いと月々の返済額が高くなるため、金利が上昇した際にキャッシュフローが急激に悪化するおそれがあるため注意が必要です。


ローンの返済期間は、繰り上げ返済などによって短縮することはできますが、長くすることは基本的にできません。ローンの借り換えをおこなう場合でも、現在の返済期間以内という条件が付く場合がほとんどです。


現在のように月々のローン返済額が少なくて済む低金利のあいだは返済期間をできるだけ長く設定して、金利上昇に備えておくのが得策といえるでしょう。


関連記事:不動産投資ローンの返済期間を短期と長期で比較! シミュレーションも


繰り上げ返済をおこなう

金利が上昇したことでキャッシュフローが圧迫されはじめたら、手元に残しておいた資金を使って繰り上げ返済をおこないましょう。


繰り上げ返済は「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、どちらかを選ぶことができます。


返済期間短縮型は、月々のローン返済額はそのままでローンの返済期間を短くします。総金利負担はこちらの方が少なくなりますが、金利上昇により月々の返済額が上がってしまった場合のキャッシュフロー改善には向きません。


一方、返済額軽減型はローンの返済期間は変えずに月々のローン返済額を減らすことができるので、金利上昇によって悪化した月々のキャッシュフローの改善が見込めます。


なお、金融機関によっては、2種類の繰り上げ返済のうち、どちらか片方しか用意されていないケースもあるので注意しましょう。


また大きな金利上昇がない場合は、手元の資金を温存しながら様子をみましょう。

月々の収支をきちんとチェックし、減収した場合はそれが一時的なものかどうか、対策に資金の投入が必要かどうかなどの判断をおこないましょう。


関連記事:不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説


ローンの借り換えをおこなう

高い金利でローンを組んでいる場合は、金利の低いローンへ借り換えをおこなうことで金利上昇リスク対策につながります。


その際は、前述した「5年ルール」や「1.25倍ルール」のあるローンに借り換えると金利が上昇してもより安心できるでしょう。

またローンを借り換えることで、団体信用生命保険の内容の見直しができるのもメリットです。


ただし、ローンの借り換えは、手数料などの費用がかかります。また、すでに金利が上昇している場合は借り換えをおこなっても、思ったほど金利が下がらない場合もあります。


加えて、ローンの借り換えをおこなうことで、借り換え前の金融機関からの印象が悪くなるケースがあるため注意が必要です。

とくに今後も借り換え前の金融機関と取引をしたいと考えている場合は、安易にローンの借り換えをしないほうがメリットになることも考えられます。


ローンの借り換えは金利面だけでなく、メリットとデメリットを総合的に検討したうえで判断しましょう。


関連記事:不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット


固定金利に切り替える

金利上昇が予想される時点で変動金利から固定金利へ切り替えることで、金利上昇リスクを避けることにつながります。


ただし、固定金利への切り替えやそのタイミングを慎重に見きわめる必要があります。

一般的に固定金利は変動金利と比べて金利が高いです。また金利上昇が予想される場合は、真っ先に固定金利が高く設定されてしまいます。


その場合、変動金利から固定金利に切り替えることで、より金利負担が重くなる可能性もあるため注意しましょう。


固定金利に切り替えを検討する際は、借入れをしている金融機関にできるだけ早く相談することをおすすめします。


物件を売却する

金利が上昇した場合、不動産の価格が上昇している可能性があるため、不動産の売却を検討するのもよいでしょう。


物件を売却するメリットは、売却益でローンを完済でき、これ以上金利を支払う必要がなくなることです。


ただしローン残債がある状態で物件を売却する場合は、残債を一括返済する必要があります。売却額が残債よりも多ければ問題ありませんが、少ない場合は不足分を自分の資金から補填しなくてはなりません。


また、不動産は現金化するまでに時間がかかることが多く、売りたいときに買手が見つからず売れないことも少なくありません。


仲介業者に依頼した場合、買手が見つかり売買契約が締結されるまで、3ヶ月~1年程度かかる場合もあります。

物件の売却を決定したら、できるだけ早く売却活動に入りましょう。


関連記事:不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も


関連記事:不動産投資物件の売却に最適なタイミングと有利にする方法!


関連記事:不動産投資でローン残債がある物件も売却可能!注意点や流れを解説


金利が上昇することで家賃を値上げできる場合もある

家 棒グラフ 右肩上がりの矢印


不動産投資にとって金利の上昇はリスクでしかないように感じますが、じつはそれだけではありません。


前述したように利上げは物価の上昇によって引き起こされます。物価が上昇すれば賃金の引き上げにつながり、賃金が上がれば家賃が高くなっても入居できる人が増えます。

したがって金利上昇は、賃貸経営にとって家賃を上げるよい機会ととらえることができるのです。


まとめ

融資を受ける際に変動金利を選んだ場合、金利上昇が起きると不動産投資ローンの金利が上がり、月々のローン返済額が増えるためキャッシュフローの悪化が懸念されます。


金利上昇リスクを防ぐためには、手元に資金を残しておき繰り上げ返済に使ったり、固定金利に切り替えたり、場合によっては物件を売却するのもひとつの方法です。


実際に変動金利の利上げがおこなわれるのか、その場合どのくらい金利が上昇するのかを予測するのは非常にむずかしいです。


しかし、金利上昇リスクは不動産投資をおこなううえで、無視できない重要な問題のひとつです。

健全な不動産投資をおこなうためにも、しっかりと金利上昇リスク対策をおこないましょう。

一覧に戻る