アパート投資にかかる修繕費の種類と目安を解説!費用を抑えるには?
2025/05/02

アパート投資にかかる修繕費の種類と目安を解説!費用を抑えるには?

アパート投資で修繕が必要な理由アパート投資の主な修繕内容と頻度・費用の目安原状回復工事(リフォーム工事)補修工事予備修繕工事(定期点検)大規模修繕工事アパート投資で修繕費を抑える方法修繕費用を含めた収支計画を立てておく定期点検で小規模な修繕をおこなう修繕費の見積りは複数の業者から取る築浅や大規模修繕工事後の物件を選ぶまとめ

長期にわたっておこなうアパート投資では、建物や設備を維持するための修繕工事が欠かせません。しかし「修繕費がどのくらいかかるのかわからず不安だ」という人も多いでしょう。

そこで今回は、アパート投資における修繕費について、修繕をおこなう箇所別に頻度や修繕費の目安を解説します。

また修繕費を抑える方法も紹介します。

安定した家賃収入を長期間得るために、ぜひ参考にしてください​​。​


アパート投資で修繕が必要な理由

雨漏り 傘を差した家の模型


入居者に選ばれやすいアパートにはいくつか条件があります。

「駅から近い」や「近隣に買い物施設がある」など利便性が良いことはもちろん、「快適に暮らせるアパートかどうか」もアパート選びの重要なポイントのひとつです。


たとえば同じような立地で家賃が同額のアパートがあった場合、外観や内装がきれいで設備の整ったアパートが選ばれやすくなります。


しかしアパートの建物は経年とともに外観の塗装が剥げたり、ヒビが入ったり、設備の故障が増えるなど劣化が目立つようになります。また地震や台風など自然災害の影響で建物や設備が損傷することもあるでしょう。


もし修繕をおこなわず、傷みや故障をそのまま放置してしまうとどうなるでしょう。

その場合、新しい入居者が見つかりにくくなったり、既存の入居者の満足度が低下し退去が発生したり、いわゆる「空室リスク」につながります。


空室が増えると入居者を獲得するために家賃の引き下げが余儀なくされるため、収益も減少します。収益が減少すると、その後の修繕費を確保するのがさらに難しくなり、建物や設備は劣化する一方です。


修繕されずに放置されたアパートは見た目だけでなく建物の耐久性にも影響するため、アパートの安全性が低下し、資産価値も下がってしまいます。

もしアパートの売却を検討した場合、建物の状態が悪く空室だらけのアパートは買い手がつかなかったり、相場よりも大幅に値引きしないと売れなかったりする可能性があります。


このように利益も見込めない、売却もできないといったリスクを回避するためも、適切な修繕を定期的におこなうことが必要不可欠となるのです。


アパート投資の主な修繕内容と頻度・費用の目安

大規模修繕 家の模型 黄色い背景


前述したようにアパート投資のリスクを軽減するためには修繕を欠かすことはできません。また修繕内容によっては高額な修繕費が発生します。

そのためアパート投資で安定した家賃収入を得るためには、修繕の頻度や修繕費の目安を把握し、あらかじめ収支計画を立てておくことが重要なポイントとなります。


ここでは、アパート投資における主な修繕内容について、頻度と費用の目安を解説します。


原状回復工事(リフォーム工事)

アパートの入居者が退去した場合、次の入居者をむかえるために室内をクリーニングしたり、壁紙や床材を貼り直したりといった原状回復工事をおこないます。この費用を「原状回復費(リフォーム費)」と言います。


原状回復工事は、室内の破損や汚損の程度がどのくらいかによって費用額が変わってきます。また工事内容によって、大家さんと入居者、どちらが費用を負担するかも変わります。


◦修繕の頻度:入居者の退去後

◦費用の目安:数万円~20万円程度(状況によっては数十万円以上かかる場合もある)


関連記事:不動産投資に必要な設備費用と交換時期の目安!コスト削減のヒントも


短期入居で室内の状態が良ければ数万円の室内クリーニングのみで完了しますが、経年による壁紙や床材の劣化が見られる場合は、それらの張り替え費用が発生します。


なお、原状回復費を大家さんと入居者のどちらが負担するかは、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に明記されています。以下は、貸主(大家さん)と借主(入居者)の原状回復費用の負担例となります。


【貸主(大家さん)が費用負担すべきもの】

◦家具などの設置によるカーペットなどのへこみ

◦日照などによって変色した壁紙

◦画鋲を刺した穴跡(通常使用の範囲内)


【借主(入居者)が費用負担すべきもの】

◦タバコによる畳の焼け焦げ

◦壁の落書きや

◦引越作業で生じた傷


参考:国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン


貸主(大家さん)が負担する原状回復費用は、経年劣化や自然消耗による修繕や交換などが該当します。たとえば壁紙やフローリングの日焼けや色褪せは経年によって起きるため貸主(大家さん)が負担します。


一方、借主(入居者)が費用を負担するのは、経年劣化や自然摩耗以外の原因で生じた破損や汚損などの修繕・交換にかかった費用が対象になります。

なお、入居者が原状回復費用を支払う場合、入居の際に入居者が支払った敷金から差し引きしたうえで残金を返還するのが一般的です。


補修工事

「補修工事」は、アパートの建物や設備、入居者が入居中の室内設備などに不具合が発生した場合におこなう修繕を言います。単に修繕と呼ぶこともあります。


補修工事は多岐にわたります。電気器具や水回り設備など比較的費用が安価な工事から、エアコンや給湯器の交換など中程度の費用がかかるもの、雨漏りや災害被害による破損など高額な費用がかかるケースなどさまざまです。


◦修繕の頻度:発生する都度

◦費用の目安:数千円~数十万円程度(場合によってはさらに増加する可能性あり)


補修工事は、費用の多少にかかわらず突発的に発生することが多く収支計画を立てにくいです。突発的な支出を防ぐためには、後述する「予備修繕(定期点検)」で損傷などが軽微のうちに修繕したり、「大規模修繕工事」の際にしっかりと工事をおこなったりすることが大事なポイントになります。


予備修繕工事(定期点検)

予備修繕工事(定期点検)は、周期的に建物や設備を点検し、損傷が軽微なうちに修繕をおこないます。


たとえば、外壁のヒビ割れなどは大きくなってしまうと修繕費が増加しますし、雨水が染み込み建物の内部を傷める原因になりかねません。ヒビが軽微のうちに修繕することで、その後の修繕費用を抑えることにつながるのです。

こういった軽微な損傷は1ヶ月~数ヶ月ごとの見回りなどで発見・修繕がおこなわれます。


また排水管の詰まりを未然に防ぐために排水管の高圧洗浄などをおこなうのも予備修繕と言えるでしょう。排水管の洗浄は数年に1度の頻度でおこなわれる場合が多いです。


◦修繕の頻度:定期的(数年に1回)

◦費用の目安:数千円~数十万円程度(修繕・交換の内容によって異なる)


「損傷や故障が起きていないのにコストをかけるのはもったいない」との考え方もありますが、定期点検などで軽微なうちに修繕箇所を発見し修繕をすることで、却って修繕費用を抑えることができるのです。


大規模修繕工事

大規模修繕工事は、アパートの外壁塗装やタイルの張り替え、屋根の葺き替え、ベランダの防水工事などをおこないます。


大規模修繕工事をおこなうことで建物の劣化を防ぐことで資産価値を維持し、新規入居者を獲得しやすくしたり、既存入居者の満足度を高め退去を防止したりといった効果があります。

そのため、安定したアパート投資をおこなううえで大規模修繕工事は必要不可欠な修繕工事です。


ただし大規模修繕工事は、広範囲にわたって工事をおこなうため工事期間が長く、費用も数百万円以上と高額になるケースが多いです。


修繕の頻度:築後10年~15年周期でおこなう

費用の目安:数百万円~数千万円(アパート規模や修繕内容によって変動する)


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大規模修繕工事には数百万円から数千万円の費用がかかります。その額を急に用意するのはむずかしいため、アパート投資を始める際に長期修繕計画を立て、「修繕積立金」を積み立てておきましょう。


なお、アパートの建物や設備は箇所によって劣化速度が異なります。そのため修繕時期をずらしておこなうのが一般的です。これは大規模修繕工事にかかる費用を分散するうえでも効果があります。


アパートでおこなう主な大規模修繕の工事箇所と工事時期の目安は次のようになります。


エアコン・給湯器など

交換の目安は設置後10年~15年程度が目安です。

エアコンや給湯器などは、およそ7年~10年ほどで故障などの不具合が発生する可能性が高くなります。製造から年数が経っていると部品の製造が終了しているため修理対応ができず交換が必要になるケースがほとんどです。

交換にかかる費用は約10万〜11万円/基が相場です。


給排水管など

給排水管も経年とともに老朽化するため、交換することで漏水リスクを軽減できます。交換の目安は築30年目程度ですが、築15年以上経過した給排水管は、劣化したり、臭いや詰まりが発生したりすることもあります。


なお排水管を数年に1度、高圧洗浄をおこなうことで臭いや詰まりを軽減でき、排水管の寿命を延ばすことにつながります。


屋根の葺き替え・屋上の防水など

屋根の葺き替えや屋上の防水などの修繕は、塗装・補修は築11年〜15年目、防水処理・葺き替えは築21年〜25年目におこなうのがおすすめです。


屋根や屋上に傷ができると雨漏りの原因となるため、定期点検が必要です。また台風などが発生したあとは、屋根瓦が割れたり、防水箇所に傷がついたりする可能性があるため、その都度確認すると良いでしょう。


費用の目安は、屋根や屋上の塗装・補修工事の場合は約40,000円〜50,000円/戸、防水処理・葺き替えは約30万〜32万円/戸となります。戸数が多ければそれだけ費用も高額になるため注意が必要です。


ベランダや外階段の防水・手すりの防錆処理など

雨水対策としてベランダや外階段などに防水処理が施されている場合の大規模修繕工事は、築10年~15年目が目安になります。また、鉄製の手すりがある場合は防さび加工が必要です。


ベランダや外階段の塗装・防水処理の目安は約45,000〜55,000円/戸、鉄部の塗装は約20,000〜35,000円/戸です。


外壁の塗装(タイルの張り替え)・補修など

建物の外壁塗装は建物の防水性を高めるだけでなく、外観を美しく保つ効果もあります。ヒビ割れなどを放置しておくと雨水が壁内に沁みこみ、建物の基礎部の損壊につながります。また色褪せが目立つと外観がみすぼらしく見え、アパート内見者の印象悪化につながる可能性があるため注意が必要です。

外壁の修繕をおこなう頻度の目安は、塗装の場合で築11年〜18年目程度、タイルの張り替えは築12年〜18年目程度でおこなうと良いでしょう。


なお定期点検などで外壁やタイルにひび割れなどが見つかった場合は、その都度修繕をおこなうことで大規模修繕までの期間を延長することにつながるため、結果的に大規模修繕費用をおさえることができます。


キッチン・風呂・洗面台・トイレなど水回りの設備

キッチンや風呂、洗面台やトイレなどの水回り設備は、使用状況によって交換時期が異なります。

風呂とトイレは10年~15年程度、キッチンと洗面台は20年~30年程度で交換されるのが一般的です。


ただし、設備が際立って古い・劣化が著しいなどの場合は不具合がなくても、空室対策として交換されるケースも少なくありません。

また、これら水回りの設備の修繕や交換は、入居者が退去したタイミングで検討される場合が多いです。


アパート投資で修繕費を抑える方法

COSTと書かれた木製ブロック 家の模型 電卓



アパート投資で最大の収益を得るためには、できるだけ費用を抑えることが重要です。しかし健全なアパート経営をおこなうためには、建物や設備の修繕は欠かすことはできません。


では必要な修繕はおこないながら、費用を抑えるためにはどのような方法があるのでしょうか。

ここではアパートの修繕費を抑えるためのポイントを紹介します。


修繕費用を含めた収支計画を立てておく

アパート投資を始める際は、修繕費を含めて資金計画をしっかりと立てておきましょう。

特に大規模修繕費は高額です。しかし、大規模修繕工事は修繕をおこなう時期や頻度を把握しやすいため、大規模修繕工事にあわせて費用を積み立てておくことが比較的容易にできます。


また修繕費は築年数が経過するにしたがって増加するのが一般的です。

新築時には抑えられていた修繕費も、築10年を過ぎると大規模修繕だけでなく、日常的な修繕箇所も増え、それに伴い修繕費も増加します。収支計画を立てる際は忘れずに増加する修繕費を盛り込んだうえで、安定した収益をえることが可能かどうか判断することが大事です。


定期点検で小規模な修繕をおこなう

前述したように、できるだけ修繕費を抑えるためには定期点検などで傷や痛みをみつけて早急に修繕をおこなうことが大事です。傷などが軽微のうちに修繕できれば、それ以上傷みがすすむこともなくなり、大きな修繕費用が発生するのを防ぐことにつながります。


また定期点検とは別に、台風や地震などのあとは破損箇所がないかその都度点検することを忘れてはいけません。


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また、アパートなどの賃貸経営では、「法定点検」が義務付けられています。

法定点検とは、「建築基準法」や「消防法」などの法律によって義務付けられている点検のことを指し、定期的に検査をおこない、その結果を管轄役所への報告が義務付けられています。


法定検査をおこなうことで、建物や設備の故障や事故を未然に防ぐことができ、入居者の安全性の確保につながります。主な法定点検には次のような種類があります。


◦消防用設備点検・機器点検:6ヶ月に1回

◦簡易専用水道管理状況検査:1年以内ごとに1回

◦水質検査:1ヶ月に1回

◦受水槽清掃:1年に1回

◦エレベーター定期検査:1年に1回


アパートの入居者が安全に生活するためにも、かならずおこないましょう。


修繕費の見積りは複数の業者から取る

大規模修繕費は高額なため、できるだけ工事が安い業者を選ぶことで修繕費を抑えることにつながります。

そのため工事を依頼する前には、かならず複数の工事業者から見積もりを取り、内容を比較したうえで業者を決めましょう。


実は工事業者によって、工事内容や価格には幅があるケースが多いです。

複数の業者の見積もりをじっくりと比較することで、相場観をつかめます。そのうえで工事内容が充実しているか、足りない工事や余分な工事の有無、価格は適切かどうかを判断しましょう。


なお不動産管理会社に修繕の手配などを委託している場合は、大家さん自身で工事業者を選べない場合もあるため注意しましょう。


築浅や大規模修繕工事後の物件を選ぶ

アパート投資に欠かせない修繕費ですが、経年劣化がすすむ築古物件に比べると築浅物件は修繕費の発生が少なくて済むケースが多いです。そのため修繕費をできるだけ抑えたい場合は築浅の収益物件がおすすめです。


特に修繕をおこなわずに放置された築古の収益物件が相場よりも大幅に安い価格で売られていることもありますが、その場合は高額な修繕費が発生するケースが非常に多いため注意が必要です。


まとめ

アパート投資において欠かせない修繕費ですが、定期点検などで傷みが軽微なうちに修繕することで、大きな修繕費を抑えることにつながったり、大規模修繕までの期間を引き延ばしたりすることにつながります。


しかし大規模修繕工事は避けることはできませんし、高額な費用がかかります。肝心な時に修繕費が不足して大規模修繕がおこなえない、といったことがないように、計画的に大規模修繕費用を積み立てておきましょう。


ぜひ当記事を参考にして、必要な修繕箇所や修繕費の目安を把握し、無理のない収支計画を立て、安定したアパート投資をおこなってください。

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