不動産投資における簿価とは?時価との違いや活用方法を解説!
2024/03/29

不動産投資における簿価とは?時価との違いや活用方法を解説!

不動産投資における簿価とは不動産投資で簿価を活用する方法物件の売却タイミングの判断材料とする価格交渉時の指標にする不動産投資用物件の売却時は諸費用と税金が発生する収益物件の売却で課税される税金の種類収益物件の売却で発生する諸費用の種類まとめ

不動産投資をおこなっていると、「簿価」という単語が出てくることがあります。

簿価は、帳簿上に記載される物件価格をいいます。

ただし簿価は、単なる帳簿上の数字ではなく、収益物件の売却のタイミングを計る際などに役立つ数字なのです。


今回は簿価について、その役割や活用方法を解説します。また、簿価とよく比較される「時価」との違いについても説明しています。

ぜひ参考にしてください。


不動産投資における簿価とは

家 上昇する赤い矢印 下降する青い矢印


「簿価(帳簿価格)」とは、さまざまな業種の会計処理に使用される専門用語で、会計帳簿上で記録されている資産の評価額をいいます。


不動産投資においての簿価は「不動産を購入したときの取得価格」になり、たとえば1億円で購入した収益物件は簿価も1億円になります。


1億円で購入した不動産の価値が、その直後に下落し市場価格が9千万円になった場合でも、簿価は1億円のままです。逆に物件価格が値上がって2億円になったとしても、簿価は1億円のままとなります。


なお簿価は、毎期ごとに不動産の評価がし直されます

不動産は土地と建物にわかれますが、建物の簿価は築年数の経過とともに減価償却がおこなわれ、年々価値が減少していきます。そして減価償却期間が終わると帳簿上の価値はなくなります。


ただし土地は経年劣化しないため減価償却はおこなえません。減価償却されるのは建物及び付帯設備のみとなります。


関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも


一方で、経年や市場の影響などによって変動する不動産の市場価格を「時価」といいます。

たとえば1億円で購入した不動産の価格が9千万円に下がったとしましょう。この場合の簿価は1億円ですが、時価は9千万円となります。


このように同じ不動産であっても、簿価と時価はかならずしも一致するとはかぎりません。両者それぞれ独立した数値なので混同しないようにしましょう。


不動産投資で簿価を活用する方法

アパートの模型 ブタの貯金箱 間取り図


簿価は、不動産投資のどのようなシーンで活用すればよいのでしょうか。ここでは簿価の活用方法について解説します。


物件の売却タイミングの判断材料とする

収益物件の売却のタイミングを見計らう際に、簿価と時価を比較して判断することができます。

具体的には、帳簿上の物件価格である簿価よりも市場価格である時価が高いタイミングで売却するのがおすすめです。


ただし、簿価よりも時価が高くなるからといって、かならずしも売却益が得られるとはかぎりません。

より詳しく売却損益を知りたい場合は、簿価と時価だけでなく諸費用を加味して、売却損益を計算してみるとよいでしょう。


売却損益 = 売却時に手元に残った金額 -(簿価 + 譲渡費用 + 取得費)


ただし、売却益は譲渡所得税の課税対象となるため、収益に応じて納税をおこなう必要があります。とくに簿価と時価の差が大きすぎると課税対象額も高額になるケースが考えられます。

収益物件の売却益は、全額が収入となるわけではないということを理解しておきましょう。


関連記事:不動産投資の残債利回りで売却のタイミングを確認する方法を解説!


価格交渉時の指標にする

不動産の売却額を決める際は、物件の簿価を把握しておくことで物件の価値を計る際に役立ちます。

とくに価格交渉の際は、物件の価値を具体的に示すことで適正価格のアピールにつながり、無理な値引き交渉を避けるとともに交渉を有利にはこべるでしょう。


不動産投資用物件の売却時は諸費用と税金が発生する

家の模型 費用 電卓


不動産を売却した際は諸費用や税金が発生します。

これらの支出を忘れていると想定した資金計画が崩れてしまう可能性もあるため、収益物件の売却時に発生する諸費用と税金の種類と目安額を把握しておきましょう。


ここでは収益物件を売却した際に必要となる消費用と税金の種類を紹介します。


関連記事:不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も


収益物件の売却で課税される税金の種類

印紙税

印紙税は、不動産売買時に作成する不動産売却契約書に貼付して納税します。

印紙税額は不動産の売買価格によって決まるため一律ではありません。詳しくは下記の「印紙税の税率表」を参照してください。


なお平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成された売買契約書(記載金額が10万円を超えるもの)については、軽減税率の対象になります。


【印紙税の税率表】

参考:国税庁『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置


登録免許税(抵当権抹消登記)

ローンが残っている収益物件を売却するためには、抵当権抹消登記に必要な登録免許税を支払う必要があります。


抵当権とは、融資を受ける際に債権者である金融機関が、債務者であるローンに対して、融資対象の物件を担保とする権利のことです。

抵当権が抹消されるのはローンを完済したタイミングになります。


登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。

売却する不動産が土地と建物の場合は、それぞれに1,000円ずつ課税されるので、合計2,000円を登録免許税として納めます。


なお登記手続きを司法書士などに依頼する場合は別途報酬(目安は1万円~3万円程度)が必要です。なお手間はかかりますが、登記手続きは個人でおこなうことも可能です。


譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却して売却益があった場合、その利益に課税される税金です。利式のない売却損だった場合は支払う必要はありません。

譲渡所得税は、所得税・住民税・復興特別所得税の3種類の税金をまとめて納税する形になります。


譲渡所得税の計算は、以下の式でおこないます。


譲渡所得税 = 譲渡所得 × 譲渡税率


なお譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって2種類にわかれます。


【譲渡所得税率(いずれも売却した年の1月1日を起点に計算する)】

◦短期譲渡所得(保有期間が5年以下)

所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%


◦長期譲渡所得(保有期間が5年超)

所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%


短期譲渡所得の税率は、長期譲渡所得の税率のおよそ2倍となります。譲渡所得税をおさえたい場合は保有期間が5年を超えた時点で売却するとよいでしょう。


消費税

収益物件を売却した場合は、売主が個人であっても消費税が課されます。

自宅を売却した場合、消費税は発生しません。

なお消費税は収益物件の建物に対してのみ課税されます。


収益物件の売却で発生する諸費用の種類

繰上返済手数料

金融機関によっては、ローンの一括返済に対して手数料が必要になる場合があります。

手数料は金融機関によって異なります。1回ごとに定額を支払うケースや、残債に対して一定の割合で手数料を支払うパターンがあります


定額制の場合、1回あたりの手数料の目安は、都市銀行で1万円程度、ネット銀行は5,000円程度になります。

また。


関連記事:不動産投資の繰り上げ返済の種類を紹介!メリット・デメリットを解説


仲介手数料

不動産仲介会社を通して不動産の売買をおこなった場合、仲介手数料を不動産仲介会社に支払います。

仲介手数料は物件の売買価格によって変動しますが、宅地建物取引業法によって上限が定められています。


【仲介手数料の計算と上限】

◦売却価格が200万円以下の場合:物件価格×5%

◦売却価格が200万円~400万円以下の場合:物件価格×4%+2万円

◦売却価格が400万円を超える場合:物件価格×3%+6万円


なお、いずれも別途消費税(10%)がかかります。


関連記事:不動産投資の仲介手数料には上限額がある!仕組みや計算方法を解説


清算金(預かり敷金など)

オーナーチェンジ物件の場合、入居者から預かっている敷金を買い主に引き渡します。


関連記事:不動産投資のオーナーチェンジ物件とは?好条件物件の見分け方!


まとめ

不動産投資においての簿価は「不動産を購入したときの取得価格」であり、建物の簿価は築年数の経過とともに減価償却がおこなわれ、価値が減少していきます。

一方、時価は市場の影響などによって変動する不動産の市場価格を指します。


簿価は、時価を比較することで、不動産の売却のタイミングを見計らう指標にしたり、価格交渉時に正当性をアピールする根拠にしたり、帳簿上以外でも出番が多いです。


ぜひ最新の簿価を把握しておき、不動産投資に役立ててください。

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