不動産投資の残債利回りで売却のタイミングを確認する方法を解説!
2024/03/19

不動産投資の残債利回りで売却のタイミングを確認する方法を解説!

残債のある不動産投資用物件は売却できる?不動産投資で残債利回りを活用する方法売却で残債を一括返済できるか判断する収益物件の売却タイミングを予測する不動産投資用物件の売却に必要な諸費用と税金印紙税登録免許税(抵当権抹消登記)譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)消費税繰上返済手数料仲介手数料清算金(預かり敷金など)不動産投資で残債のある収益物件の売却方法売却額がローン残債を上回る場合売却額がローン残債を下回る場合任意売却する売却を見送る不動産投資で譲渡所得が発生した場合の確定申告について売却損でも確定申告をおこなうべきケースまとめ

不動産投資をおこなう際に指標とされる数値のひとつに「利回り」があります。利回りにはいくつか種類がありますが、「残債利回り」については知らない人もいるのではないでしょうか。

残債利回りは、おもに物件の売却時の指標とすることができます。では具体的には、どのようなシーンで活用するのでしょうか?


今回は不動産投資の残債利回りについて、計算方法や利用方法について解説します。

とくに残債のある収益物件の売却を検討中の人は、ぜひ活用してください。


残債のある不動産投資用物件は売却できる?

家 引渡し 手


残債があっても収益物件を売却することはできます。

ただし、残債のある不動産を売却するためには、ローン残債を一括返済して、設定されている「抵当権」を外す必要があります。


抵当権とは、不動産投資ローンを組む際に金融機関(債権者)がローン契約者(債務者)に対して、購入する収益物件を担保とする権利のことで、貸し倒れなど万が一に備えて、債権者が損失を被らないために設定されます。


したがって所有者であっても抵当権が設定されている収益物件を自由に売却することはできません。

残債のある収益物件を売却するには、前述したようにローン残債を一括返済し、抵当権を外す必要があるのです。


関連記事:不動産投資でローン残債がある物件も売却可能!注意点や流れを解説


不動産投資で残債利回りを活用する方法

家 不動産投資 木目


「残債利回り」とは「年間家賃収入の比率が、ローン残債に対してどれだけあるのか」を示す数値です。

ここでは、残債利回りの利用方法を解説します。


売却で残債を一括返済できるか判断する

前述したように、残債のある収益物件を売却するためにはローン残債を一括返済しなくてはなりません。

そのためには、その物件がローンの残債を一括返済できる価格で売却できるかどうか確認する必要があります。


物件の売却価格を知るためには、不動産会社に査定してもらう必要がありますが、売却可能なおおまかな価格を知るために役立つのが「残債利回り」です。

残債利回りは、以下の方法で計算します。


【残債利回りの計算方法】

残債利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 残債 × 100


たとえば、年間家賃収入が108万円(9万×12ヶ月)で、ローン残債が2,500万円の区分マンションを売却すると仮定します。


108万円 ÷ 2,500万円 = 4.32%


ここで求めた残債利回りと、周辺の同等物件(物件種別、設備、築年数など)の利回り相場を比較してみましょう。

残債利回りが利回り相場よりも高い場合は、2,500万円で物件を売却できる可能性が高くなるため、残債の一括返済が視野に入ります。


逆に残債利回りが利回り相場を下回る場合は、2,500万円で物件を売却するのはむずかしいかもしれません。その際は、残債の一括返済に足りない分の資金の調達が必要になる場合もあります。


このように残債利回りを計算することで、残債の物件を一括返済できる価格で売却できるかどうか判断する目安として使用できます。


収益物件の売却タイミングを予測する

不動産投資は長期にわたっておこなえる投資方法ですが、規模拡大の資金づくりのために物件を売却することもありますし、減価償却が終わって節税効果が薄くなる前に売却を検討するケースもあります。


関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも

関連記事:不動産投資物件の売却に最適なタイミングと有利にする方法!


このように収益物件の売却を検討する際に残債利回りを参考にすることで、今現在だけでなく、何年後にいくらくらいで物件を売却できるか予測することも可能です。


たとえば、現在の残債利回りでは残債の一括返済がむずかしくても、数年後ローン返済がすすんだ時点の残債利回り次第では、残債を一括返済が可能な価格で売却できる可能性もあります。


あくまでも想定ではありますが、築年数や家賃下落率など考慮したうえで5年後、10年後……の残債利回りを確認しておけば、売却が現実的になった際に役立つでしょう

売却に適したタイミングを見計らうためにも、定期的に残債利回りを確認しておくとよいでしょう。


不動産投資用物件の売却に必要な諸費用と税金


税金 机と椅子 パソコン


収益物件を売却するにあたって忘れてはならないのが、諸費用と税金です。

これらの支出を忘れていると、売却益が売却損に転じたり、一括返済するためのお金が足りなくなったりすることも考えられます。

そうならないためにも、収益物件の売却時に発生する諸費用と税金の内訳をしっかり把握しておきましょう。


関連記事:不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も


印紙税

不動産売買の契約書を作成する際は、契約書記載の売買額に応じた収入印紙を貼付して印紙税を納める必要があります。

なお記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成された契約書については、軽減措置の対象になります。


【印紙税の税率】


登録免許税(抵当権抹消登記)

ローン残債のある収益物件を売却する場合、物件の引き渡し前にローンを完済し、抵当権の抹消手続きをおこないます。


抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。土地と建物はわけて数えられます。たとえば一棟アパートの場合は土地と建物それぞれに1,000円ずつ課税されるので、合計で2,000円となります。


なお登記手続きを司法書士などに依頼する場合は別途報酬が必要です。依頼する司法書士によって報酬額は異なりますが、目安は1万円~3万円程度です。


譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)

売却益があった場合のみ、譲渡所得税の納税が必要です。

譲渡所得税の計算は、以下の方法でおこないます。


譲渡所得税 = 譲渡所得 × 譲渡税率


なお譲渡所得税の税率は、所有期間によって2種類にわかれます。


【譲渡所得税率】

◦保有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%

◦保有期間が5年以下:(短期譲渡所得):39.63%

*売却した年の1月1日を起点に計算する


保有期間が5年以下の短期譲渡所得の税率は、長期譲渡所得の税率のおよそ2倍となります。税金をなるべく抑えたい場合は、できるだけ5年を超えてから売却するとよいでしょう。


消費税

収益物件を売却した場合は、売主が個人であっても消費税が課されため注意しましょう。

なお消費税は収益物件の建物に対して課税されますが、土地にはかかりません。


繰上返済手数料

金融機関によっては、繰り上げ返済時に手数料が必要になる場合があります。手数料は金融機関によって異なりますが、都市銀行で1万円程度、ネット銀行は5,000円程度が目安になります。

また残債に対して数パーセントを手数料として支払うケースもあります。


仲介手数料

不動産仲介会社を通して不動産の売買が成約した場合、成功報酬として仲介会社に仲介手数料を支払います。


なお、仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められており、成約価格が400万を越える場合は、成約価格の3%+6万円となっています。それを超えての請求は違法行為となります。


清算金(預かり敷金など)

オーナーチェンジ物件の場合、現在の入居者から預かっている敷金を新しいオーナー(買い主)に引き渡します。


関連記事:不動産投資のオーナーチェンジ物件とは?好条件物件の見分け方!


不動産投資で残債のある収益物件の売却方法

売却 家 3軒


前述したように、残債のある収益物件でもローン残債を一括返済できれれば売却は可能です。ここではローン残債がある収益物件を売却する方法について解説します。


関連記事:不動産投資でローン残債がある物件も売却可能!注意点や流れを解説

関連記事:不動産投資の成否は出口戦略で決まる!できるだけ高く売る方法とは?


売却額がローン残債を上回る場合

ローン残債を上回る金額で物件が売れた場合、その売却金で残債を一括返済し、抵当権抹消登記をおこないます。


ただし、物件を売却する際には諸費用や税金が発生します。不動産売却でかかる諸費用は売却価格の4%~6%程度が目安です。

売却金から諸費用を指し引いた残りがローン残債を上回っていれば問題ありませんが、足りない場合は不足額をなんらかの方法で補填する必要があります。


売却額がローン残債を下回る場合

売却額がローン残債を下回るときは、そのままでは物件の売却はできません。このような状態を「オーバーローン」といいますが、残債に足りない額を調達できれば、物件を売却できます。


完済に足りない資金の調達方法はなんでもかまいません。

手元に十分資金があれば、そこから出してもよいですし、手持ちの資金がなくても、フリーローンなどを利用することも可能です。ただし、ローンを利用するためには融資審査が必要となります。

どのような方法であれ、ローンを完済できれば抵当権抹消登記がおこなえます。


任意売却する

任意売却とは、債権者の了承のもとで、ある程度所有者の希望条件で不動産を売却する方法です。

競売よりも市場価格に近い価格で売れる可能性が高いため、ローン残債を減らせるのがメリットです。


任意売却は、よく競売と比較されますが、所有者の希望が一切反映されない競売に比べると任意売却の方が所有者の希望が汲まれやすいです。

月々のローン返済がきびしくなった場合は、物件が差し押さえられ競売にかけられる前に債権者に任意売却の相談をするとよいでしょう。


なお任意売却した場合でもローンが完済されるわけではありません。売却額によっては、ローンが残ります。その場合は債権者に返済計画を相談するとよいでしょう。


また売却手順などは一般的な不動産売買とほぼ同じです。

そのため売却までに時間がかかったり、希望する額で売れなかったり、買い手が見つからないときは売却できないケースもあるため注意が必要です。


売却を見送る

ローンの完済に必要な資金を用意できない場合は、売却の見送りも検討しましょう。

月々のローン返済をつづけることで残債は減っていき、いずれオーバーローンは解消されます。


物件の建物の価値は経年によって下落しますが、土地の価値はゼロ円になることはありません。物件価格がローンを完済できる額になるまで待つのもひとつの方法なのです。

それまでは地道に返済をつづけましょう。


不動産投資で譲渡所得が発生した場合の確定申告について

不動産投資用物件を売却し、売却益があった場合は、売却した翌年の確定申告(原則として、毎年2月16日から3月15日まで)をおこなう必要があります。


関連記事:【サラリーマン向け】不動産投資の確定申告のやり方を詳しく解説!


なお、売却損であれば確定申告をおこなう必要はありませんが、その場合は税務署から「お尋ね(おたずね)」というハガキが届きます。

お尋ねには、不動産の売却に関する内容の確認事項が記載されているので、売却益の有無を含め、必要事項を記載して返信しましょう。


返信しない場合は、売却益があったにもかかわらず確定申告をしなかったとみなされ、税務調査の対象となる可能性もあるため注意が必要です。お尋ねが届いた際は、速やかに返信しましょう。


関連記事:不動産投資で税務署から「お尋ね」が来る理由と対処方法を解説!


売却損でも確定申告をおこなうべきケース

収益物件の売却時に売却損だった場合、譲渡所得税は課税されません。そのため確定申告は不要です。

ただし同年に別の収益物件を売却し、売却益があった場合は、その売却益と売却損を相殺できるため確定申告をおこなうとよいでしょう。


なお不動産所得が赤字になった場合は給与所得などと損益通算がおこなえますが、収益物件の売却によって売却損が出ても給与所得などとの損益通算はおこなえません。


ただし、不動産投資用物件以外の不動産(マイホームなど)を売却して損失が出た場合は、買換え特例の要件を満たすことで売却益をそのまま買換え時の支出と相殺することができる場合があります。


関連記事:不動産投資の損益通算で節税しよう!計算例や注意ポイントを解説


まとめ

不動産投資の「残債利回り」について解説しました。

残債利回りは、「年間家賃収入の比率が、ローン残債に対してどれだけあるのか」を示す数値です。


活用シーンとしては、残債のある収益物件を一括返済できる金額で売却できるかどうかの指標にしたり、将来的な物件の売却タイミングを計ったりする際に役立ちます。


なお収益物件を売却する際は、さまざまな諸費用や税金が発生します。忘れてしまうと資金計画に影響を及ぼす可能性もあるため、物件の売却を検討する際は、かならず予算に含めておきましょう。

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