不動産投資におけるノンリコースローンの特徴やメリット・デメリット
2024/03/25

不動産投資におけるノンリコースローンの特徴やメリット・デメリット

ノンリコースローンとは?リコースローンとの違いは?ノンリコースローンの特徴リコースローンの特徴不動産投資でノンリコースローンを利用するメリットローン返済の責任範囲を限定できる属性が低くてもローンを組める可能性がある不動産投資におけるノンリコースローンのデメリット取り扱いのある金融機関が限定される融資条件がきびしい融資審査がきびしいノンリコースローンを利用する際の確認ポイント責任財産限定特約を確認する制約条項(コベナンツ)について確認するまとめ

不動産投資をおこなううえで欠かすことができないのが、不動産投資ローンやアパートローンなどの利用です。

これらのローンは「リコースローン」と呼ばれる融資方式にあたりますが、「ノンリコースローン」という種類のローンがあることはご存じでしょうか。


今回は不動産投資におけるノンリコースローンについて、その特徴やメリット・デメリット、リコースローンとの違いを解説します。

またノンリコースローンを利用時に、確認したいポイントも紹介します。ぜひ参考にしてください。


ノンリコースローンとは?リコースローンとの違いは?

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ここでは、ノンリコースローンとリコースローン、それぞれの特徴を解説します。

ノンリコースローンの特徴

「ノンリコースローン(non-recourse loan)」は非遡及型融資と呼ばれており、融資対象となる不動産自体の収益性を担保に融資が決まります。

そのためローン契約者(債務者)が全額返済の責任を負うことがないため、ローン契約者に有利なローンともいえるでしょう。。


たとえば、ノンリコースローンを利用して5,000万円のローンを組んだ収益物件が、残債4,000万円の時点でローンが滞り、対象物件が差し押さえられたとします。

差し押さえられた物件を売りに出したところ、3,000万円でしか売れなかった場合でも、ローン契約者は1,000万円の差額を支払う義務が生じません。


ようするに担保となった不動産の売却後は、売却額とローン残債の差額がいくらであっても、そのあとの残債はゼロとなるのです。


リコースローンの特徴

「リコースローン (recourse debt)」は遡及型融資と呼ばれるゆうし方式で、万が一の貸し倒れリスクに備えて不動産の収益性だけでなく、ローン契約者の信用力も加味したうえでローン契約が結ばれます。


たとえば、リコースローンを利用して5,000万円のローンを組んだ収益物件が、残債4,000万円の時点でローンが滞り、対象物件が差し押さえられたとします。

差し押さえられた物件を売りに出したところ、3,000万円でしか売れなかった場合、回収できなかった差額1,000万円についてローン契約者は、なんらかの方法で返済する義務が生じます。


一般的な不動産投資ローンには、このリコースローンが採用されています。


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不動産投資でノンリコースローンを利用するメリット

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ここではノンリコースローンを利用する際のメリットを紹介します。


ローン返済の責任範囲を限定できる

ローンの返済が滞った場合でも、担保に設定している物件を売却する以上の返済義務を負わずに済みます。

したがって、ほかの資産への影響もないため、複数の収益物件を所有し、不動産投資の規模を拡大していくことも可能です。


また、ノンリコースローンは収益性の高い物件のみが担保とみなされます。そのため、ノンリコースローンの対象となる物件は資産価値が高いことが認められていると考えられるでしょう。


属性が低くてもローンを組める可能性がある

ノンリコースローンは、不動産の収益性や資産価値に対して融資をおこなうため、ローン契約者の個人属性(年収や勤め先の規模、職業など)は融資審査の対象になりません。


しかしノンリコースローンの融資をおこなう金融機関も、できるだけ貸し倒れのリスクは下げたいところです。

そこでポイントとなるのが「自己資金(頭金)をどのくらい投入できるか」です。投入できる自己資金の額によって、ノンリコースローンを利用できる可能性が生まれます。


たとえばリコースローンを利用して収益物件を購入したくても、個人属性が低い(収入が安定しない職業、転職したばかりなど)場合は融資審査に通りにくく、融資を受けられない場合があります。


このように個人属性の低さが理由でリコースローンが借りれなかった人でも自己資金を物件価格の2割~3割程度あてることができれば、ノンリコースローンを組める可能性もあるのです。


不動産投資におけるノンリコースローンのデメリット

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メリットの大きなノンリコースローンですが、一方で利用時する際に気をつけたいデメリットもあります。


取り扱いのある金融機関が限定される

ノンリコースローンは世界的に広く普及している融資方式ですが、日本では圧倒的にリコースローンの利用者の方が多いです。そのため国内では知名度が低く、取り扱いのある金融機関が限定されています。


現在ノンリコースローンを取り扱っている金融機関は大手を中心に複数ありますが、法人向けのものが多く、融資条件などの詳細をホームページ上に記載している金融機関はほとんどありません。


そのためノンリコースローンの利用したい場合は、まず金融機関に取り扱いの有無を問い合わせたうえで詳細を確認必要があります。


融資条件がきびしい

一般的なローンと比べるとノンリコースローンは、お金を貸す金融機関のリスクが高いです。

そのため金融機関は少しでもリスクを下げるために、リコースローンよりも金利を高く設定したり、返済期間を短くしたり、融資条件をきびしくしているケースがあります。


融資審査がきびしい

ノンリコースローンはお金を貸す金融機関のリスクが大きいため、融資審査は非常にきびしく難易度が高いです。担保物件の収益性がきびしく審査され、評価が低い場合は融資を受けることはできません。


なおノンリコースローンの対象となる不動産の種類は、物流施設や商業施設、病院など、おもに法人が投資をおこなう物件です。

個人が投資する一般的な賃貸物件(アパート・マンションや戸建住宅など)でもノンリコースローンが利用可能なこともありますが、それは非常にめずらしいケースになります。


ノンリコースローンを利用する際の確認ポイント

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ノンリコースローンを利用する際は、以下のポイントについて確認をおこないましょう。確認を怠ると、ノンリコースローンの恩恵を受けられない可能性もあるため注意が必要です。


責任財産限定特約を確認する

責任財産限定特約とは、債権者である金融機関と債務者であるローン契約者のあいだで取り決める規定のことです。ノンリコース条項とも呼ばれます。

責任財産限定特約には、おもに次のような規定が設けられるケースが多いです。


◦返済原資は責任対象の不動産のみに限定する

◦債権者は、責任対象以外の資産に強制執行を実行しない

◦すべての返済原資を処分しても残債がある場合、債権者は未払債権を放棄した状態とする


この取り決めを債権者と債務者のあいだで交わすことにより、ノンリコースローンの責任範囲を明確にします。ノンリコースローン契約において非常に重要な内容となるため、しっかり確認しましょう。


制約条項(コベナンツ)について確認する

制約条項はコベナンツとも呼ばれ、金融機関が融資をおこなうにあたって、ローン契約者に求める条件が盛り込まれた契約のことです。

この契約内容は債務者であるローン契約者は守り必要があり、債権者である金融機関は資金回収にともなうリスクを軽減します。


制約条項には、おもに次のような条件が記されているケースが多いです。


◦担保にした不動産を別の融資物件の担保しない

◦一定以上の純資産額やキャッシュフローを維持すること


なお詳しい契約内容は金融機関によって異なります。契約を結ぶ前に提示された制約条項を無理なく守ることができるかどうか、しっかり確認しましょう。


まとめ

ノンリコースローンは、おもに法人がおこなう不動産投資に利用される融資方式です。

しかし物件の収益性が高く、ある程度の自己資金を投入できるのであれば、個人属性が低いなどの理由でリコースローンの審査に落ちてしまった人でもノンリコースローンを利用できる可能性はあります。


ただし、ノンリコースローンの融資審査は非常に難易度が高く、収益性の高い物件でなければ融資審査をとおることはむずかしいでしょう。


ノンリコースローンは、万が一ローン返済ができなくなっても担保物件さえ渡してしまえば残債の返済義務を負わずに済むため、ほかの資産に影響する心配がありません。

不動産投資の規模を拡大したい人は、ぜひ検討してください。


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