アパート投資の空室率の目安はどのくらい?計算方法や対策方法を解説
アパート投資をおこなううえで、特に留意しておきたいのが「空室率」です。
アパート投資の主な収入源は、入居者が支払う家賃です。
空室率が高いアパートは、満室時と比較して得られる家賃収入が少なくなるため、キャッシュフローに悪影響を及ぼしやすくなるため注意が必要です。
しかし、空室率は気になるが算出方法がわからない、どの程度までなら許容範囲内であるか知りたいという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、アパート投資における空室率について、適正と言われる空室率の目安や空室率の算出方法について紹介します。
また空室率が高くなる原因とその対策方法についても解説します。
アパート投資における空室率とは
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アパート投資における空室率とは、アパート全体の部屋数に対して入居者がいない部屋が占める割合を数値化したものです。
アパート投資の主な収入源は、入居者が毎月支払う家賃です。
空室率が高いということは入居者が少ないことを表し、その分家賃収入が減少することになります。
反対に空室率が低くなると、それだけ家賃収入が増えることを意味します。
このようにアパート投資では、いかに空室率を低く抑えるかが安定した家賃収入を得られるかどうか重要なポイントとなるのです。
また、アパート投資を始めるにあたって、アパートの建築費用や購入費用として不動産投資ローンを利用するのが一般的です。
住宅ローンとは異なり、不動産投資ローンの返済原資は融資を受けた物件の家賃収入になります。
もし、空室率が高く十分な家賃収入を得られない場合、家賃収入からローンの返済などの支出をまかなえず、オーナーの預貯金や給与から手出しをすることになってしまいます。
関連記事:アパート投資で手出し(赤字)になりやすい物件の特徴を解説!
手出しができる手元の資金が尽きてしまえばローンの返済が滞り、最悪の場合は物件を差し押さえられてしまうおそれも考えられます。
そうならないためには、定期的に空室率を確認し、必要に応じて適切な空室対策をおこない、空室率を下げなくてはなりません。
そのためにもまずは空室率の目安がどのくらいであるかを把握し、原状の空室率を確認することが大事です。
なお、空室の原因と対策方法については、後述する『アパート投資で空室率が上昇する主な原因と対策方法』をご覧ください。
アパート投資で適正な空室率の目安
前述したように、アパート投資ではできるだけ空室率を低く抑える必要がありますが、賃貸物件の入居者が永遠に入居しつづけることはありません。
退去後、次の入居者がすぐに決まったとしても原状回復工事期間などを挟むため、どうしても空室期間は存在するため、事実上空室率を0%のまま維持することはまず不可能です。
これはどんなに立地条件の良い、賃貸需要の高い物件であっても変わりません。
そのため、アパート投資を含め賃貸経営における適正と言われる空室率の目安は5〜10%程度であると言われています。
アパートを選ぶ際は、この空室率の目安となる数値を基準として考えるとよいでしょう。
ただし、空室率は常に一定ではありません。
たとえば自然災害などで建物や設備が汚損した場合、賃貸経営を継続できなくなる可能性があります。
また周辺環境の変化によって賃貸需要が変わる場合も考えられます。
現況の空室率だけにとらわれず、空室率が高くなっても無理なくローンの返済やランニングコストの支払いを継続できる物件を選ぶことが重要となります。
できるだけ空室率を低く抑えられる物件の特徴については、後述する『アパート投資で空室率の低い物件の特徴』をご覧ください。
アパート投資の空室率の計算方法

アパートの空室率は、自分で計算することが可能です。
ただし、空室率の計算方法はいくつかの種類があり、算出する方法によってその値は変わってきます。
ここでは、アパート投資でよく用いられる3種類の空室率の計算方法を紹介します。
現時点から見た空室率
いま現在を基準にして空室率を求める計算方法で、以下の式で求めます。
現時点の空室率(%)=空室の数÷総戸数×100
式を見るとわかるように、単純にアパートの現時点の空室数を総戸数で割るだけなので、簡単に値を算出できます。
たとえば、総戸数が10戸あるアパートで空室が1戸だった場合、1÷10×100となり、空室率は10%となります。
ただし、この値はあくまでも計算した時点での空室率であり、その前後の空室は反映されていないため、年間通して平均的な空室率を知りたい場合などには適していません。
そのため、現時点から見た空室率は、大まかに空室率を把握する際に用いる数値であることを覚えておきましょう。
部屋の稼働状況から見た空室率
部屋の稼働状況から見た空室率は以下の式で求めます。
稼働状況から見た空室率(%)=(空室の数×空室だった月数)÷(総戸数×12ヶ月)×100
前述の現時点の空室率の求め方とは異なり、年間の空室期間を反映しているため、より現実的な空室率を算出できます。
たとえば、総戸数10戸のアパートで1室の空室が6ヶ月続いた場合、(1×6ヶ月)÷(10×12ヶ月)×100となり、部屋の稼働状況から見た年間の空室率は約5%です。
同じアパートでも、2室が6ヶ月間空室だった場合は、(2×5ヶ月)÷(10×12ヶ月)×100で、空室率は10%となります。
オーナーチェンジ物件を選ぶ際、通年の稼働率を把握することで、空室率の推移を把握できるため、今後の空室率を予測しながら収支シミュレーションをおこなうことも可能です。
アパート投資は長期にわたっておこなう事業です。
そのため、年間の空室率を把握し分析することで、より詳しい収支シミュレーションがおこなえるでしょう。
賃料から見た空室率
賃料から見た空室率は、以下の計算式で求めます。
賃料から見た空室率(%)=(満室時の年間想定賃料―実際の年間賃料収入)÷満室時の年間想定賃料×100
アパート内に賃料が異なる部屋があった場合、単に空室期間だけで求めた空室率では、どのくらいの賃料未収入があったかを知ることができません。
そこで上記の計算式で空室率を求めることで、賃料の回収率が分かります。
たとえば、総戸数10戸のうち賃料10万円の部屋が5戸あり、残り5戸の賃料が9万円だったとします。
このアパートが満室だった場合、(10万円×5戸)+(9万円×5戸)=95万円となり、年間の想定賃料は1,140万円です。
もし、10万円の部屋が2戸、6ヶ月空室になった場合、未収賃料は120万円です。
(1,140万円―1,020万円)÷1,140万円×100で、賃料から見た空室率は約10.5%となります。
家賃収入の回収率を確認できるため、収支計画を立てる際に重視される空室率です。
アパート投資で空室率が上昇する主な原因と対策方法

ここでは、アパート投資で空室が発生するおもな原因とその対策方法について解説します。
人口の減少
総務省の統計によると日本の総人口のピークは2008年の1億2,808万4,000人でしたが、その後は人口の減少傾向が続いています。
特に地方都市では人口の減少が著しく、それに伴い賃貸住宅の空室率も上昇しています。
アパート投資は、アパートを借りる人がいなければ収入を得られません。
人口が減ることで賃貸住宅を必要とする人の数も減少するため、人口が少ない地域では必然的に賃貸需要は低下してしまいます。
人口の減少による空室率の上昇を防ぐためには、候補地の人口推移や空き家率などを確認しましょう。
人口の流出が少ない賃貸需要の高い地域の物件を選ぶことで、空室率の高いエリアの物件を避けることにつながります。
賃貸物件の増加
人口の減少が少ない首都圏であっても空室率が高くなる可能性があります。
エリアの人口の変化がないにもかかわらず、周辺に似たような間取りの「競合物件」が多数建築されてしまう「供給過多」になってしまうと、需要とのバランスが崩れてしまいます。
一般的に大学周辺のアパートの入居付けは比較的容易ではありますが、入居希望者の数がおおむね一定の場合、競合物件のあいだで入居者の奪い合いになりがちです。
そのため、安易に物件を選んでしまうと想定した家賃収入が得られず、アパート経営が破たんするおそれも考えられます。
アパートの建築・購入を検討する際は、その地域の競合物件の数や空室率をかならず調査することをおすすめします。
間取りのニーズが低い
空室率が高くなる原因のひとつとして、間取りに問題があるケースが考えられます。
特に空室になりやすいのが、一部屋あたりの面積が狭い2DKや3DKの間取りです。
少し前までは家族構成に合わせて、1部屋あたりの面積が狭くても部屋数が多めの間取りが好まれました。
しかし現在は家族構成が変わったこともあり、部屋数よりも1部屋あたりの広さが重視される傾向が高まっています。
1LDKの部屋と2DKの部屋の面積がほぼ同じであれば、多くの場合で選ばれるのは1LDKの部屋でしょう。
そのため、2DKや3DKの部屋は人気が低く、空室が埋まりにくくなっています。
ニーズの低い間取りの部屋は、思い切ってリノベーションをおこなうことで入居付けが容易になる場合があります。
たとえば2DKを1LDKに、3DKであれば2LDKに変更するなどです。
ただしリノベーションには費用がかかるため、どのくらいの期間で費用を回収できるのか、賃料の値上げは可能かなど、費用対効果を十分検討することが重要なポイントとなるでしょう。
設定賃料が相場よりも高い
賃料が高ければ、より多くの賃料収入を得られます。しかし賃料には、そのエリアごとに相場があります。
そのため、相場よりも家賃が高い場合は入居者が見つかりにくく、空室率が上昇する可能性が高くなるため注意が必要です。
特に長期入居者が退去した場合、現況の賃料相場が大幅に下落しているケースがあるため注意が必要です。
退去者が出た場合、まずは周辺の競合物件の賃料相場を確認し、相場に沿った適切な賃料で新規入居者の募集をするとよいでしょう。
アパート投資で選ぶべき空室率が低い物件の特徴

アパート投資で成功するためには物件選びが非常に重要です。物件選びさえ間違えなければ、安定したアパート投資につながります。
ここでは空室率の低い物件の特徴について紹介します。
賃貸需要の高い立地の物件
前述したように日本の総人口が減少している現在、賃貸需要が高い地域は人口が集中する一部の都市部が挙げられます。
さらに立地でいえば、駅までの距離が近く、周辺に買い物施設や便利施設(銀行や郵便局、役所など)が多い利便性が高い場所にある物件や、住環境がよいエリアなどが該当します。
こういった立地の物件は入居者に選ばれやすく、賃料を相場より高く設定しても入居が決まりやすいのがメリットです。
ただし、自家用車で移動するのが一般的な地域(地方都市や首都圏郊外のベッドタウンなど)では、駅からの近さよりも駐車場の有無などが重視されるケースもあります。
いずれにしても立地選びに失敗しても、アパート物件は高額であるため気軽に買い替えることはむずかしいです。
そのため、アパート建築や購入を検討する際は、徹底的に立地をリサーチしたうえで、総合的に判断することがアパート投資の成功につながると言えるでしょう。
入居者ニーズの高い設備が導入されている物件
最近では、入居者ニーズの高い設備を導入するアパートも増えています。
特にセキュリティ関連の設備(TVモニター付きインターホンや防犯カメラなど)や宅配ボックス、24時間ゴミ出し可能設備などは単身者向け物件では人気です。
ファミリー向け物件であれば、追い炊き機能付きの風呂やシステムキッチン、最近では浴室乾燥システムなどのニーズも高まっています。
ターゲット層によってニーズの高い設備は異なるため、ターゲットとする入居者に合わせた設備を導入することで空室率を下げることにつながります。
外観や共用部が清潔な物件
入居希望の内見者にとって、最初に目にする建物の外観や共用部によって第一印象が決まります。
そのため外観が古びていたり、エントランスなどの共用部が汚れていたりすると、アパートの印象が悪くなってしまう可能性が高くなるため注意が必要です。
外壁が古びていたり汚れていたりする場合は、塗装や高圧洗浄機で洗浄することで見た目が良くなります。
共用部の汚れやゴミが目立つ場合は、管理委託を依頼している管理会社に清掃を徹底するよう連絡するとよいでしょう。
共用部を清潔に保つことは、内見者だけでなく、既存の入居者の満足度=退去率にも影響します。
新規入居者を獲得して空室を埋めることも大事ですが、既存の入居者を退去させないことも、空室率を上げないためには重要であることを念頭においておきましょう。
まとめ
安定したアパート投資をおこなうためには、できるだけ空室率を低く抑えることが重要になります。
適正と言われる空室率の目安は5~10%程度ですが、さらにシビアな数値であっても無理なくローン返済が可能な物件を選ぶことをおすすめします。
また、総人口が減少傾向にある現在、空室率を抑えるためには人口の流失が少ない地域の中で立地の良い物件を選ぶことが大事です。
アパートは一度購入してしまうと、買い替えることは簡単ではありません。
立地選びに失敗しないよう、十分にリサーチを重ねたうえで空室率の低い物件を選びましょう。