アパート投資で修繕積立金が重要な理由!必要箇所と目安額も紹介
アパート投資で安定した家賃収入をおこなうためには、適切な資金計画を立てることが欠かせません。その際、ぜひ注目したいのが「修繕費」です。
アパートの建物や設備は経年とともに劣化していくため、定期的なメンテナンスや修繕を避けて通ることはできません。
特に10~15年周期でおこなう「大規模修繕」は高額な費用がかかるため、毎月の家賃収入から一定額を積み立てて、「修繕積立金」を用意しておくことをおすすめします。
今回は、アパート投資における修繕積立金の重要性や修繕内容と目安額について詳しく解説します。
また修繕積立金を無駄なく積み立てる方法についても紹介します。
アパート投資を検討中の方や修繕積立金の扱いに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。


アパート投資における修繕積立金の重要性

アパート投資をおこなううえで、建物の経年劣化は避けることはできません。建物だけでなく、アパートの設備についても年数が経過するとともに故障個所が増え、修繕や交換が必要になります。
また、入居者が退去したあとには、次の入居者を迎えるために室内クリーニングや壁紙を張り替えるなどの修繕も必要です。
これらの修繕を適切におこなわないアパートは、建物の外観が古びて見えたり、室内の清潔感に欠けたり、入居希望者の内見時にマイナス要因となってしまうケースがあります。
アパート投資の主な収入源は入居者が毎月支払う賃料です。
入居率が下がると毎月の賃料収入が減少してしまうため、ローン返済やランニングコストなどの支払いがむずかしくなり、キャッシュフローの悪化が懸念されるため注意が必要です。
安定したアパート経営をおこなうためには、必要に応じた修繕は非常に重要です。
しかし、アパートの経年劣化を防ぐためには、ときに高額な修繕費が発生します。場合によっては手元の資金だけでは修繕費をまかなえないこともあるでしょう。
そこで重要になるのが「修繕積立金」です。
先に述べたように、アパートの建物や設備は経年とともに劣化します。
そのため、建物や設備の修繕が必要になった場合に備えて、修繕積立基金としてあらかじめ毎月の賃料収入から一定額を積み立てておくことで、いざというときに適切な修繕工事をおこなうことが可能になるのです。
アパート投資における主な修繕内容とタイミング

アパートの修繕は、修繕内容とタイミングや頻度によって、以下の種類に分けることができます。
◦大規模修繕
◦小規模修繕(予備修繕費)
◦退去後の原状回復工事(リフォーム工事)
◦日常的な修繕
いずれも安定したアパート投資をおこなううえで欠かせない工事であるため、修繕内容やタイミングをきちんと把握しておきましょう。
大規模修繕
大規模修繕は、アパートの建物全体や大きな設備を対象におこなう工事です。
大規模修繕では、外壁塗装・屋根の葺き替え(塗装)・給排水設備の交換などをおこないます。
大規模修繕はアパートの規模にもよりますが、10年~15年周期でおこなうのが一般的です。
外壁塗装や屋根の葺き替えなどは足場を組む大規模な工事になるため、それだけ費用も高額になりやすいです。
そのため、アパート投資を開始する際に修繕計画を立てた上で、「大規模修繕積立金」として資金を確保しておくことが求められます。
大規模修繕の詳しい内容と工事のタイミング・費用の目安については、後述する『アパート投資における大規模修繕工事の内容とタイミング・費用の目安』をご覧ください。
小規模修繕(予備修繕)
小規模修繕は、建物や設備の劣化・故障を防ぐためにおこなうメンテナンスや修繕にかかる費用を指します。そのため予防修繕と呼ばれる場合もあります。
小規模修繕の主な内容には、以下のようなものが該当します。
◦シロアリの検査・薬剤散布
◦外壁や屋根の状態確認
◦設備などのメンテナンス・修繕
小規模修繕をおこなうことで、不具合のある箇所を軽微なうちに修繕できるため、大規模修繕費を削減できたり、大規模修繕の周期を延ばしたりすることにつながります。
小規模修繕をおこなうタイミングは修繕箇所によって異なりますが、1年に1回、数年に1回などが一般的です。
修繕費用についても修繕箇所や修繕の程度によって異なり、数万円から数十万円程度が目安になります。
たとえば、シロアリの検査・予防にかかる費用は、1坪あたり6,000~8,000円程度が目安です。
延べ床面積が30坪程度のアパートの場合、18~24万円程度になりますが、業者によって費用が異なるため複数の業者から見積りをとり、費用や内容を比較するとよいでしょう。
退去後の原状回復工事(リフォーム工事)
入居者が対処したあとは、新しい入居者を迎えるために室内をクリーニングしたり、必要に応じて壁紙や床を張り替えたり、設備の交換が必要になるケースがあります。
これらの修繕を「原状回復工事(リフォーム工事)」と言います。
ただし、原状回復工事は必須ではありません。室内や設備の状況に応じて、必要な箇所のみおこなうのが一般的です。
たとえば入居期間が短く壁紙や床材の痛みが少ない場合は室内クリーニングのみで済ますこともできます。
原状回復工事にかかる費用は、室内クリーニングが15,000~20,000円程度(1Rの場合)が目安です。
壁紙や床材を張り替える場合は、グレードや素材によって単価が異なります。
一般的なものであれば、壁紙の張り替えは750~1,500円/㎡、フローリングの張替えは 2~6万円/畳が目安となるでしょう。
なお、原状回復にかかる費用負担は、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』に沿って、貸主(オーナー)と借主(入居者)それぞれで負担します。
日常的な修繕
アパート投資では、自然災害や予期せぬ事故が原因で建物の損壊や設備の不具合などが突発的に発生するケースも少なくありません。
また、共用部の電球の交換や軽微な傷みなどを修繕する場合にも費用が発生します。
こういった日常的な修繕にかかる費用は数千円程度で済む場合もありますが、修繕箇所によって必要となる修繕費用は大きく変わります。
アパート投資における大規模修繕工事の内容とタイミング・費用の目安

ここでは、大規模修繕工事の内容とタイミング、用意しておくべき大規模修繕積立金の目安について、国土交通省の『民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック』を基に築年数別に紹介します。
築5~10年目
アパートを建築して初めての大規模修繕は、築5~10年目あたりでおこなうのが一般的です。
大規模修繕をおこなう主な箇所は、ベランダ・階段・廊下の塗装、室内設備の修理、排水管清掃などで、費用目安は1Kで約7万円/1戸となり、一棟10戸のアパートであれば約70万円の費用がかかる計算です。
1LDK~2DKの場合は約9万円/1戸となり、一棟10戸であれば約90万円が必要です。
築11~15年目
2回目の大規模修繕工事は、築11~15年目におこなわれます。
主な修繕箇所は、屋根の葺き替え・外壁塗装、ベランダ・階段・廊下の防水や塗装、給湯器・エアコンなどの修理・交換排水管清掃など多岐にわたります。
修繕箇所に屋根や外壁が含まれるため、目安は1K 1戸あたり約52万円、1LDK~2DKでは約64万円/1戸と高額です。
10戸のアパートであれば約520~640万円が必要であるため、かならず修繕積立金を用意しておくことをおすすめします。
築16~20年目
築16年を過ぎると、建物や設備の劣化がすすみ、通常の修繕費の負担も大きくなりがちです。
この時期の大規模修繕は、ベランダ・階段・廊下の塗装や室内設備の修理、給排水管の洗浄、外構の修繕などが必要になります。
大規模修繕費の目安は、1Kで1戸あたり約18万円、1LDK~2DKでは1戸あたり約23万円です。
ただし、給排水管は洗浄だけでなく交換が必要になるケースもあるため、修繕費用が増加する場合もあることを覚えておきましょう。
築21~25年目
築20年を過ぎると、建物の見た目も築古感が増してきます。また新築時に比べると家賃も下落するのが一般的です。
空室リスクも増えるため、しっかりと大規模修繕をおこない、物件の価値を維持することがより重要になります。
大規模修繕箇所は、屋根の葺き替え・外壁塗装、ベランダ・階段・廊下の塗装や防水、排水管の洗浄のほか、浴室やキッチンなど室内の水回り設備の修理交換が必要になる場合も多くなります。
そのため大規模修繕に必要な費用目安は、1K1戸あたり約80万円、1LDK~2DKでは1戸あたり約98万円と非常に高額です。
一棟10戸のアパートであれば、約800~980万円の費用が発生するため、修繕積立金がない場合は費用を捻出するのが困難であると考えられます。
もし、1度に全戸の設備交換などがむずかしい場合は、交換時期をずらすなど計画的におこなうことが必要になるでしょう。
築26~30年目
築26年を過ぎると家賃の下落率がなだらかになりますが、修繕費は増加しやすくなります。
大規模修繕の対象となるのは、ベランダ・階段・廊下の塗装、室内設備の修理、給排水管の高圧洗浄等や交換、外構の修繕などです。
費用の目安は1戸あたり約18万円ですが、直前の大規模修繕で室内設備の交換などがおこなわれていない場合は、このタイミングで交換するケースもあるため、修繕費を見積もる際は注意しましょう。
アパート投資で大規模修繕費用を積み立てる方法を紹介

アパート投資で安定した家賃収入を得るためには大規模修繕に向けて、修繕積立金は必須です。
しかし、毎月いくら積立ててよいか分からないというケースもあるでしょう。
ここでは、アパート投資で無駄なく修繕積立金を積み立てる方法をいくつか紹介します。
管理会社で管理してもらう
家賃管理を管理会社に委託している場合は、管理会社に修繕費を積み立ててもらうことも可能です。
毎月入居者が支払った家賃から一定額を積み立ててもらえ、管理もしてくれるため、手間がかかりません。
また、実際に大規模修繕工事が必要になった場合も管理会社が修繕積立金の額を把握しているため、費用の過不足が簡単に分かります。
ただし、万が一管理会社が倒産してしまうと修繕積立金が戻って来ないおそれもあるため、管理会社の経営状態をしっかりと確認しておくことをおすすめします。
また管理会社によっては、修繕費の積立てや管理をおこなっていない場合もあるため、あらかじめ管理会社に確認しておきましょう。
積立定期預金を利用する
各金融機関で提供している「積立定期預金」を利用する方法もおすすめです。
積立定期預金は、目標となる金額をあらかじめ設定しておき、その金額に達するまで毎月決まった額を積み立てていく方法の定期預金です。
初回に手続きをおこなえば、毎月自動的に指定の口座から引き落としで積立てされるため手間がかかりません。
また、満期型の定期預金とは異なり、途中解約や積立金の一部を引き出すことも可能であるため、突発的に資金が必要になった場合も安心です。
賃貸住宅修繕共済を利用する
『賃貸住宅修繕共済』とは、全国賃貸住宅修繕共済協同組合が提供している制度で、大規模修繕工事の屋根の修繕・軒裏の修繕・外壁塗装や外壁の修繕が対象となります。
(正式名称は、「賃貸住宅の大規模修繕積立金の損金算入制度」)
賃貸住宅修繕共済の大きな特徴は、共済に賭けた費用は、その年の経費として計上できる点です。
通常、アパートの修繕積立金は、積立てている最中は単なる預金とみなされるため、経費としてみとめられません。
実際に大規模修繕をおこない、支払いが生じたことで経費計上が可能になります。
修繕積立金は最終的には経費となりますが、毎年経費計上できるため、節税したい場合にはおすすめの制度です。
アパート投資で修繕費が足りないときはどうする?

しっかりと修繕計画を立て、毎月修繕積立金をプールしていた場合でも、災害などが原因で予期せぬ支出が発生したことで修繕積立金を使用してしまい、修繕費が足りなくなるケースもあるかもしれません。
万が一修繕積立金が不足しても、大規模修繕はかならずおこなうことをおすすめします。
なぜなら、大規模修繕をおこなわないことで建物の外観が劣化し、入居者が集まりにくくなり、空室率が上がり、家賃下落の原因になりかねません。
また建物や傷みや設備の故障を放置することで、後々の修理や修繕費用が高額になりやすくなります。また建物の劣化により安全性も低下してしまうおそれがあります。
もし修繕費用が足りない場合は、金融機関からの借入を検討してみましょう。
物件の建築や購入で借入れたローンの返済状況によっては、リフォームローンなどを利用できる可能性があります。
また使用目的に縛りがないフリーローンなども検討してみるとよいでしょう。
まとめ
アパート投資で長期にわたって安定した家賃収入を得るためには、適切な時期におこなう大規模修繕工事が必要不可欠です。
しかし大規模修繕には高額な費用がかかるため、あらかじめ修繕計画をたて、必要な修繕費を把握したうえで「修繕積立金」を準備しておく必要があります。
大規模修繕の時期を引き延ばしてしまうと、建物の劣化がすすみ、修繕費が嵩むだけでなく、空室や家賃下落の原因となってしまうため注意が必要です。
安定したアパート投資のため、またアパートの入居者の安全な暮らしのため、しっかりと修繕積立金を用意しておきましょう。