アパート投資の平均運用期間は何年?黒字化と利回りの関係を解説
「アパート投資の運用期間は平均で何年くらいのだろう?」
「投資資金の回収や黒字化するまではどのくらいかかるの?」
アパート投資の運用期間は特に決まっていませんが、売却益を目的にするか、家賃収入目的かによって、おのずと運用期間は変わってきます。
またアパート投資をおこなううえで投資資金を回収するまでの期間を把握しておけば、出口戦略もたてやすくなるなどのメリットがあります。
そこで今回は、アパート投資の目的別に平均となる運用期間を紹介しながら、短期運用・中期~長期運用についてそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。
また利回りと黒字化の関係を説明しながら、黒字化までの期間をシミュレーションしています。
アパート投資を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。


アパート投資の平均運用期間は何年?

アパート投資の運用期間はアパートオーナーによって異なりますが、元が取れたタイミングか黒字化したタイミングで物件を売却するケースが多いです。
一般的にアパート投資で投資した資金を回収するためには5年~10年程度、黒字化するには10年以上が目安とされています。
そのためアパート投資の平均運用期間は、5年~15年程度であると考えられます。
ただし、上記の運用期間はあくまで平均です。自分が運用するアパートに投資資金を何年で回収できるかはアパートの購入費用やローン返済、利回りなどによって変わってきます。
またアパート投資は数十年単位で継続することも可能です。実際に築40年を超えるアパート物件を運用しているアパートオーナーも少なくありません。
特に老後の生活資金を得る目的でアパート投資を始めるケースでは、ローン完済後も継続してアパート投資をおこないます。
ローン完済後のアパート投資で得た家賃収入は、その大部分を自由に使えます。そのため定年退職後、年金とは別の収入源として老後生活の大事な資金にすることができるのです。
アパート投資の運用期間別メリット・デメリット

アパート投資は運用期間によって、狙うべき利益が異なります。ここでは、短期・中期~長期にわけて、運用期間の違いやメリット・デメリットを解説します。
短期運用のメリット・デメリット
短期運用のアパート投資は、主に売却益(キャピタルゲイン)を狙っておこなわれます。
売却のタイミングが重要となるため売買のスピードが速く、運用期間は5年程度、長くても10年以内のことが多いです。
アパート投資の短期運用は、物件のリノベーションなどを活用して物件の価値を高めるなどの手法が用いられます。
たとえば、築古物件を安く購入し、内装を入居者ニーズの高い間取りに変更したり、最新の設備を導入したり、物件に新たな価値を付加することで価格を上げ、売却するのが一般的です。
また物件の立地も非常に重要です。主に都市部や再開発エリアなど、短期間で不動産市場の価格上昇が見込める地域にある物件をターゲットにし、価格が安いときに購入し、価格が上がったら売却して利益を得ます。
アパート投資の短期運用のメリットは、短期間で大きな利益が見込める点です。
その一方で、値上がりするエリアや物件の見極めは非常にむずかしく、見誤ると大きな損失につながるリスクもあります。
加えて、不動産の売却時には「譲渡所得税」が課せられますが、不動産の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。
所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」の税率は20.315%なので、短期間で売却すると譲渡所得税の負担が大きく、その分の収益が減少するのもデメリットになります。
関連記事:不動産投資で物件売却時に発生する税金の種類を解説!計算方法も
中期~長期運用のメリット・デメリット
中期~長期運用のアパート投資は、主に賃料収入(インカムゲイン)を目的としておこなわれます。アパートの部屋を第三者に貸し出すことで得る賃料収入は、短期間で大きな利益は得られませんが中期~長期にわたって安定した収入を得ることが期待できます。
中期運用期間は10年~20年程度が目安になります。安定した家賃収入が得られるとともにある程度の流動性も期待できます。特に投資資金の回収が完了するタイミングで売却を検討することが多いです。
安定したアパート経営がおこなわれていれば比較的買い手が見つかりやすく、加えて立地が良ければ希望する金額で売却できる可能性が高くなります。
なお、アパート投資の中期運用では、売却と大規模修繕工事の実施のタイミングに注意が必要です。
アパート投資では、築10年~15年周期で大規模修繕工事をおこなうのが一般的です。
アパートの建物は経年とともに劣化していきます。大規模修繕工事は、経年による建物の劣化を抑えるために外壁の塗装や屋根の葺き替え、給排水管の交換などがおこなわれます。
大規模修繕工事によって、外観や設備を整えることで空室対策や資産価値の維持につながるのです。
しかし、大規模修繕工事は建物全体の修繕やメンテナンスがおこなわれるため、高額の修繕費用が発生します。修繕箇所にもよりますが、1度の大規模修繕工事には数百万円以上かかります。
関連記事:不動産投資に必要な3種類の修繕費の目安を解説!修理交換時期も紹介
そのため、物件の売却を検討する場合は、できるだけ大規模修繕工事の前に売却することで、大規模修繕工事の費用を節約することにつながります。
運用期間が20年以上の長期運用では、長年にわたってコツコツと積み上げてきた家賃収入を元手にして投資規模の拡大も狙えます。
また、ローンの返済が完了することで家賃収入の大部分がキャッシュフローとして手元に残るようになります。手残り金は老後の生活資金としたり、趣味に投じたり、自由に使うことが可能です。
その一方で、築20年を超えると老朽化によって建物を修繕する頻度が増加するため、修繕費用も増大していく傾向です。加えて、老朽化によって空室リスクの上昇や家賃の下落によって家賃収入の低下などのデメリットがあります。
場合によっては赤字になるケースも考えられます。
赤字経営が続く場合は売却も視野に入ってきますが、木造アパートは減価償却期間の22年を超えると融資条件が悪くなるのが一般的です。
金融機関によっては融資がつかなかったり、融資額が少なかったり、融資期間が短くなるため、なかなか買い手が見つからず売却まで時間がかかったり、希望する価格で売れなかったりするケースも増えるため注意が必要です
相続予定の場合は建て替えの検討も
投資用アパートの相続を考えている場合は、売却よりも建て替えを検討することで、相続税の節税につながる可能性があります。
不動産は、ほかの財産よりも相続税評価額が低いため、同じ額面のほかの財産と比較した場合、課せられる相続税が少なくなります。
また相続する土地でアパートなどの賃貸経営をおこなっている場合、小規模用地の特例などの要件によってさらに評価額が下がり、相続税を大幅に節税することが可能です。
そのため投資用アパートを売却して現金化してから相続するよりも、相続税が安くなる投資用アパートとして相続することをおすすめします。
関連記事:アパート経営でできる節税方法とは?税金の種類ごとに徹底解説!
アパート投資の利回りと資金回収期間の関係

賃貸アパートに投資した資金の回収期間を計算する際は、「利回り」に注目しましょう。
一般的に不動産投資における利回りは、購入費用に対して年間の利益がどの程度あるのか表します。
利回りの数値が高ければ高いほど利益率が高く、多くの利益を得ることができ、短期間で投資した資金を回収することも可能です。
逆に利回りが低いと1年間に得られる利益が少なく、投資資金の回収にも時間がかかります。
アパート投資で使用される利回りの種類は主にふたつで、ひとつは「表面利回り」、もうひとつが「実質利回り」になります。
それぞれの利回りについて、計算方法や特徴を解説します。
表面利回り
物件の購入価格に対して、おおよその利益率を表し、主に収益物件の広告などに掲載されます。
【表面利回りの計算方法】
表面利回り(%)=年間の家賃収入÷物件の購入価格×100
計算式を見るとわかるように、表面利回りの算出には経費が考慮されていません。
そのため、実際にアパートを運用して得られる利益よりも高い数値が出やすくなるため注意が必要です。
くれぐれも物件広告に記載されている表面利回りだけ見て、収益物件は選ばないようにしましょう。
実質利回り
収益物件の購入価格のほか、諸費用や経費を考慮して計算するため、現実的な利益に近い数値を算出できます。
【実質利回りの計算方法】
実質利回り(%)=(年間の家賃収入-年間の経費)÷(物件の購入価格+物件購入時の諸経費)×100
年間の家賃収入に空室率を反映させて計算することで、さらに現実的な利益に近い数値を算出することもできます。
ただし実質利回りの計算に使われる数字は、想定上のものであり、実際のアパート投資で得られる利益そのものではありません。
あくまで「参考」であることを理解したうえで活用しましょう。
利回りを使った資金回収期間シミュレーション
前述したように、利回りの数値が高いほど利益率も高く、アパートに投資した資金の回収機関が短くなります。
ここでは2種類の利回りの数値を使って、同額の物件に投資した場合の資金回収期間の違いについてシミュレーション結果を紹介します。
なお今回は、計算を簡略にするため表面利回りを使用します。
◇物件①
物件価格:5,000万円
表面利回り:10%
回収金額/年:5,000万円×10%=500万円
回収期間:5,000万円÷500万円=10年
◇物件②
物件価格:5,000万円
表面利回り:15%
回収金額/年:5,000万円×15%=750万円
回収期間:5,000万円÷750万円=6.66…年
このように利回りの数値によって、投資資金の回収期間は異なります。利回りが高い方が、配収期間は短くなるのです。
なお、実際のアパート投資の平均利回りは、上記のシミュレーションに使用した数値よりも低いです。
またアパート投資の利回りは、物件の種類や築年数、エリアによって差があります。一般的に物件価格の高い都市部の利回りは低く、築年数がすすむことで利回りは高くなるなど、さまざまな条件が利回りに影響することを覚えておきましょう。
アパート投資で黒字化するためのポイント

アパート経営を黒字にしたい場合、いくつかポイントがありますが、特に重要となるのがアパート選びです。正しい投資用アパートを選ぶことができれば、その後のアパート経営をスムーズにおこなえます。
ここでは、アパート投資の黒字化に必要なポイントを紹介します。
賃貸需要の高い投資用アパートを選ぶ
アパート投資を成功させるためには、物件選びが非常に重要なポイントになります。
アパートの立地、建物の状態、周辺環境などをよく確認したうえで、高収益が見込めるアパートを選びましょう。
物件の良し悪しの判断材料は非常に多いため、ここでは物件を選ぶ際にこれだけは優先してチェックしたいポイントを周辺環境と建物にわけて紹介します。
【周辺環境のチェックポイント】
◦駅からの距離が近い
◦周辺に買い物施設がある
◦周辺の治安がよく、安全に生活できる
◦周辺に競合物件が少ない
◦幼稚園や保育園、小中学校学校が近隣にある
◦周辺に賃貸需要が見込める会社や工場などがある
【建物の状態のチェックポイント】
◦外観や共有部(エントランス、廊下、庭など)の清掃や手入れは行き届いているか
◦室内の清掃や手入れは行き届いているか
◦室内の設備で古すぎるものはないか
◦間取りは賃貸ニーズにあっているか
立地がよくても、アパートの建物の状態が悪いと入居希望者に選んでもらえません。
特にアパートの顔である外観やエントランスの手入れが悪いと、そこの住むイメージがわかず敬遠されてしまいます。
室内の設備が古すぎたり、間取りが現代の賃貸ニーズに合っていなかったりする場合も同様です。
上記のチェックポイントのうち、できるだけ多くの条件を満たすアパートを選ぶことでスムーズなアパート経営につながり、黒字化が容易になります。
物件を選ぶ際は出口戦略についても考えておく
投資用アパートを選ぶ際は、同時に出口戦略についても具体的に考えておくことが大事です。
たとえば、アパート投資が順調にすすみ投資資金の回収や黒字化ができたらアパートを売却し、新規の投資用不動産を購入する資金にすることも可能です。
賃貸需要が高い好立地のアパートであれば、建て替えてアパート投資を継続するのも出口戦略の選択肢になります。
また、万が一アパート投資が行き詰ってしまっても立地や建物の状態が良いと売却しやすいため、損失を最小に抑えることにつながるのです。
投資用アパートを選ぶ際は投資の出口を想定して、物件選びの段階で売却のしやすさを前提に収益物件を選びましょう。
関連記事:不動産投資の成否は出口戦略で決まる!できるだけ高く売る方法とは?
まとめ
アパート投資の平均運用期間は、5年~15年程度と言われていますが、売却益を狙った場合の運用期間は10年程度の短期運用のケースが多いです。
家賃収入を目的としておこなうアパート投資では、中期運用(10年~20年程度)~長期運用(20年以上)にわたって運用するのが一般的です。
短期運用と中期~長期運用には、それぞれメリットとデメリットがありますが、どちらの場合も重要なのは、安定して家賃収入を得られ、売却しやすい物件を選ぶことです。
アパート投資は正しい収益物件を選ぶことで、安定した家賃収入を得ることができ、スムーズに売却もすすむでしょう。
アパート投資を成功させるためにも、自分に合ったアパート投資手法をみつけてください。