不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!
2023/05/01

不動産投資に必要なランニングコストとは?コストカットは可能!

不動産投資におけるランニングコストとは? 目安はどのくらい?不動産投資に必要なおもなランニングコストの種類税金税理士費用ローン返済金減価償却費管理委託手数料・管理費損害保険料入居者募集費用修繕費・修繕積立金共用部の水道光熱費雑費不動産投資のランニングコストを削減する方法削減しやすいランニングコスト1:修繕費(原状回復費)削減しやすいランニングコスト2:管理委託手数料削減しやすいランニングコスト3:所得税・住民税不動産投資のランニングコストを削減する際の注意点まとめ

不動産投資をはじめる際の資金計画で忘れてはならないのが、建物の維持・管理費用や税金などの「ランニングコスト」です。ランニングコストは月々の家賃収入から支払うことになるため、これらの費用がいくらかかるのかを把握しておく必要があります。

そこで今回は、不動産投資で必要なランニングコストの種類と削減方法について解説します。


不動産投資におけるランニングコストとは? 目安はどのくらい?

コスト 家 電卓

不動産投資でいう「ランニングコスト(維持費用)」とは、投資物件の建物や設備の維持や管理、運用時に発生する費用を指します。

一般的には、ローン返済金や税金、管理費・管理委託料、修繕費などがランニングコストにあたります。なおランニングコストの目安は毎月の家賃収入の20%~30%です。

一方、不動産投資用物件購入・建築時に支払う費用(物件価格・建築費用、諸費用)を「イニシャルコスト(初期費用)」といいます。


不動産投資をはじめる際に1回かぎり負担するイニシャルコストと異なり、ランニングコストは不動産投資を継続するかぎり必要不可欠な費用です。そのため物件選びの際はランニングコストがどのくらいになるのか把握し、利益をどの程度出せるのか十分検討することが非常に重要になります。


不動産投資に必要なおもなランニングコストの種類

維持費 家 お金

不動産投資におけるランニングコストには、おもに以下のような種類があります。


  • 租税公課(所得税・住民税、固定資産税・都市計画税、個人事業税など)
  • 税理士費用
  • ローン返済金
  • 減価償却費
  • 管理委託手数料・管理費
  • 損害保険料
  • 入居者募集費用
  • 修繕費・修繕積立金
  • 共用部の水道光熱費
  • 雑費(事務用品費、消耗品費など)

それぞれ詳しく解説します。


税金

不動産投資では、ランニングコストとして以下の税金が必要になります。


所得税・住民税

不動産投資で収益が出た場合は所得税・住民税が課されます。

本業がサラリーマンなどの人は、勤め先の会社からもらう給与収入と不動産収入を合算した金額から経費や控除を差し引いた課税所得をもとに税額が計算されます。


なお、所得税・住民税額は確定申告をおこなうことで税額が決まります。

確定申告とは、1年間の所得にかかる税金を計算し、納税額を報告する手続きのことです。

1月1日~12月31日分の所得を、翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署に確定申告書や決算書類などの必要書類を提出して、納税または還付等を受けることにより税金の過不足の清算をおこないます。


固定資産税・都市計画税

固定資産税は不動産を保有する個人・法人にかかる地方税で、その年の1月1日時点で不動産の所有者に課せられます。土地だけでなく建物も固定資産とみなされます。

算出方法は【固定資産税評価額×税率-軽減額】です。税率は通常1.4%ですが実際の税率は自治体によって異なるため注意が必要です。


都市計画税は、都市計画法の区域内にある建物・土地に課される税金です。

算出方法は【固定資産税評価額 ✕ 税率】となり、税率の上限は0.3%ですが地域によって異なります。


なお固定資産税評価額は、3年に1回のペースで人口の推移などを参考に評価替えがおこなわれます。一般的に不動産取得費の50%〜60%程度が評価額として算定されるケースが多いため、事前に大まかな金額を把握しておくと安心です。


固定資産税について詳しくはこちら!>>不動産投資の固定資産税について基本と計算方法、軽減措置を解説


個人事業税

個人事業税は地方税の一種であり、法定業種が対象です。不動産貸付業は第1種事業に該当するため個人事業主として不動産投資をおこなっている場合で、前年度の事業所得が290万円を超える人は個人事業税が発生するため注意しましょう。


個人事業税の額は「(所得額-290万円)×税率(5%)」で計算します。事業主控除額が290万円なので、290万円を超過した分に課税されます。


税理士費用

税金の処理などを税理士に依頼する場合に発生するランニングコストです。確定申告のみの依頼であれば5〜10万円/1回が目安ですが、依頼する税理士によって顧問料などは異なるため事前に顧問料の比較をおこないましょう。


税理士について詳しくはこちら!>>不動産投資で税理士に依頼するメリット!選び方や相場、注意点も


ローン返済金

不動産投資物件の購入・建築時に不動産投資ローンを利用した場合は、毎月ローンを返済する必要があります。借入額や返済期間によって毎月の支払い額は異なりますが、毎月のローン返済は元本と金利を合わせた額を支払います。


不動産投資ローンについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン利用に関する基礎知識!メリットや審査内容を解説


減価償却費

減価償却費とは、不動産の購入費用(土地は除く)を耐用年数に基づいて分割した金額を毎年の確定申告時にて計上する会計処理です。


減価償却費は実際の出費はないにも関わらず経費計上できます。たとえば耐用年数の残りが10年の不動産投資物件を1,000万円で購入した場合、帳簿上では毎年100万円ずつを10年間支払うことになります。

そのためキャッシュフローは黒字でも会計上は経費が増えることで利益が減り、課税対象となる所得額が減少し、結果として節税につながるのです。


なお、建物の修繕や設備の取り換え工事にかかった費用を「資本的支出」とする場合は減価償却費として経費計上が可能です。ただし工事内容によって、資本的支出にするか、「修繕費」として一括経費にするか判断がむずかしい場合も多いです。


資本的支出とは、おもに既存よりもグレードの高い設備に変更するなど、物件の資産価値を上げた場合の費用を指します。たとえば、通常のシステムキッチンを食器洗浄機付きのシステムキッチンに取り換えた場合などが該当します。

「資本的支出」か「修繕費」か、どちらにするか迷った場合は税理士などのプロに相談しましょう。


減価償却について詳しくはこちら!>>不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも


管理委託手数料・管理費

賃貸経営において、建物管理(修繕やメンテナンスなど)や入居者管理(入退去管理やクレーム対応など)といった業務は不動産管理会社に委託するのが一般的です。区分マンションの場合は管理組合に管理費を支払う必要があります。


管理委託手数料の相場は月額家賃収入の5%~8%ですが、管理会社や契約内容によって業務範囲は異なるため、あらかじめ複数の管理会社から見積もりを取り、料金と業務範囲を比較検討しましょう。


管理会社について詳しくはこちら!>>不動産投資を成功させる不動産管理会社の選び方!管理業務内容を解説


損害保険料

不動産投資物件に掛ける損害保険料(火災保険や地震保険、孤独死保険など)です。

地震や風水害で被害を受けると高額な修繕費用の発生や、最悪の場合は賃貸経営が立ち行かなくなる恐れもあるため、必要な損害保険に加入しておくことが重要です。


なお損害保険料は数年分を一括で支払うほうが安くなります。その場合は払い込んだ保険料額を1年単位で割り、各年に経費計上しましょう。


保険について詳しくはこちら!>>不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!


入居者募集費用

入居者募集に関して、不動産仲介会社に支払う仲介手数料や広告費です。ただし、これらのランニングコストは成約時に発生するため、大家さん自身で入居者を見つけた場合は支払う必要はありません。


修繕費・修繕積立金

不動産投資物件の建物や設備が破損・故障した場合にかかった修繕費や退去後の原状回復費用、メンテナンス費用などです。

原状回復費用の目安はワンルームタイプで約8万円、ファミリータイプの場合で20〜30万円程度です。


ただし、修繕の程度や種類によっては修繕費ではなく「資本的支出」として資産に計上し、減価償却する必要があるため注意が必要です。


また一棟アパートや一棟マンション、戸建て賃貸住宅などの場合、運用中のランニングコストとは別に大規模修繕費に備えた「修繕積立金」も必要です。

大規模修繕とは、物件の屋根の葺き替えや外壁塗装、配管の取り換えなど物件の経年劣化を防ぎ資産価値を維持するため、約10年~15年ごとにおこなう工事です。


通常の修繕費に比べて非常に大きな金額になるため、急に費用を用意するのは困難です。そのため毎月大規模修繕に備えた積み立てをおこなう必要があります。

修繕積立金の目安は物件のタイプや規模によって異なりますが、家賃収入の5%~8%くらいが望ましいといわれています。

いざというときのために、修繕積立金をランニングコストに含めた資金計画を立てておきましょう。


なお日頃から定期的にメンテナンスや修繕をおこなっておくと、結果として建物や設備の状態を維持できるため、大規模修繕までの期間延長につながります。


修繕積立金について詳しくはこちら!>>不動産投資用マンションの修繕積立金の適性額や使い道を解説!


共用部の水道光熱費

廊下や階段、エレベーターなどの共用部分の電気代や水道代が該当します。物件の規模によって増減するため、資金計画を立てる段階で想定しておきましょう。


雑費

上記以外で不動産投資のために発生したランニングコストは「雑費」となります。雑費には以下のような種類があります。


雑費について詳しくはこちら!>>不動産投資の雑費計上時の注意点!高額すぎると税務調査の可能性も


交通費

購入検討中の不動産の現地調査などの移動費用(バス代、タクシー代、電車代、飛行機代などの運賃、ガソリン代、駐車場代、高速道路料金など)や宿泊代は「交通費」になります。


通信費

不動産投資に関して使用した電話料金やインターネット料金、書類の郵送代などが該当します。

なお、電話やインターネットを不動産投資とプライベートで共用している場合は、不動産投資に利用した分の金額のみがランニングコストになるため按分計算が必要です。


新聞図書費

不動産投資のための情報収集や勉強を目的とした新聞代・図書費(動産投資の専門雑誌や不動産投資セミナーの参加費用など)などは雑費として計上可能です。


接待交際費

不動産投資に関係する税理士や管理会社との打ち合わせ時に支払った飲食費、不動産投資関係者の冠婚葬祭費用などが該当します。冠婚葬祭費用など領収書がない場合は、招待状やあいさつ状などを証拠として保管しておくと万一、税務調査が入った場合も安心です。


消耗品費

不動産投資のために購入した10万円以内の消耗品(パソコンやスマートフォン、机、什器など)やコピー用紙など文房具が該当します。

なお、10万円を超える物品については減価償却が必要となる場合もあるため注意しましょう。また高額すぎる製品の場合(ハイスペックの高額パソコンなど)は不動産投資に不必要とみなされる場合もあります。


その他の雑費

上記以外のランニングコストでも不動産投資に関連する費用であれば雑費として計上できます。ただし、あくまでも不動産投資をおこなううえで発生した費用であることが大前提であることを忘れないようにしましょう。


不動産投資のランニングコストを削減する方法

コスト削減 ハサミ コストカット

前述したように不動産投資に必要なランニングコストの目安は月額家賃の20%~30%と大きな割合を占めます。そのためランニングコストを削減できれば、それだけ多くの利益を得ることにつながります。


上記で紹介したランニングコストのなかには削減できるものもあります。ここではコストカットしやすいランニングコストについて解説します。


削減しやすいランニングコスト1:修繕費(原状回復費)

修繕費のなかでも、入居者の退去後におこなう原状回復費は削減しやすいです。劣化した部分の補修は必須ですが、過剰なリフォームは費用がかかります。修繕の要・不要をよく検討したうえで必要な箇所だけリフォームをおこなうことで費用の削減につながります。


なお大家さん自身でDIYをおこなうことでコストカットになります。ただし、DIYに慣れていない人が壁紙の貼り替えなどをおこなう場合は失敗してしまい、却って費用や時間がかかる場合もあります。

DIYに自信がない場合は、最初からプロに任せるほうが無難です。


削減しやすいランニングコスト2:管理委託手数料

不動産管理会社に支払う管理委託手数料は、会社によって業務範囲や料金設定はさまざまです。たとえば大家さん自身で受け持ちが可能な部分(清掃や簡単なメンテナンス・修繕など)以外を委託することで費用をおさえることにつながります。


管理手数料の安い会社に管理会社を変更するのもよいでしょう。ただし、委託料が安くなった分だけ業務内容が手薄になりサービスの質が落ちてしまわないよう注意が必要です。

また管理委託手数料が安くても、必要な業務が別途料金として設定されているケースもあります。


管理委託会社を選ぶ際は、かならず複数の会社から見積もりを取り、慎重に比較したうえで決定するとよいでしょう。


管理会社について詳しくはこちら!>>不動産投資を成功させる不動産管理会社の選び方!管理業務内容を解説


削減しやすいランニングコスト3:所得税・住民税

所得税や住民税は必要経費を控除して計算します。そのため、経費算入できるものは適切にもれなく計上することで節税につながります。


また本業がサラリーマンなどで給与所得がある場合、確定申告をおこない、給与所得と不動産所得を合算して課税所得を算出します。そのとき不動産所得が赤字(マイナス)だった場合、給与所得から不動産所得のマイナス分を差し引きする「損益通算」することで所得を圧縮させることができます。


また、実際にはお金の支払いをしていない減価償却費を経費計上することで、会計上の赤字をつくり損益通算すれば手持ちのお金を減らすことなく所得税を減らすことができるため節税になります。


その際は脱税にならないよう税制を正しく認識するためにも、税理士に相談しながらすすめていきましょう。


節税について詳しくはこちら!>>不動産投資の節税効果をシミュレーションで紹介!仕組みや方法を解説


不動産投資のランニングコストを削減する際の注意点

電卓 コストカット グラフ

利益を追求するあまり、あれもこれもと費用を削減してしまうと入居者へのサービス低下につながりかねないため注意しましょう。


たとえば、物件管理を自主管理にして管理委託料を削減した場合、清掃がおろそかになったり、入居者のクレーム対応に時間がかかったりすると入居者の満足度が下がってしまいます。入居者の満足度が下がると退去につながるため、せっかくのコストカットの意味がなくなってしまいます。


また火災保険を選ぶ際は保険料と補償内容について十分吟味することが重要です。過剰な補償が含まれている場合は保険料も高額です。必要な補償内容に見合った保険料であるかしっかり確認しましょう。


まとめ

不動産投資の運用時に必要なランニングコストは所得税や固定資産税、ローン返済金や修繕費など、家賃収入の20%~30%程度となり、かなり大きな割合を占めます。そのため、不動産投資物件を選ぶ際は、ランニングコストがどのくらいかかるのか、利益がどの程度なのか、しっかり確認することが重要です。


また、できるだけ利益を残すためにはランニングコストの削減が欠かせません。ランニングコストのなかには削減しやすい費用もあるため、ぜひ工夫してコストカットをおこない収益アップを目指しましょう。

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