副業の不動産投資を法人化に適したタイミングを解説!注意点は?
2021/11/22

副業の不動産投資を法人化に適したタイミングを解説!注意点は?

副業の不動産投資は法人化できる?注意点は?副業の不動産投資を法人化するのに適したタイミングはいつ?タイミング1:所得税率が法人税率よりも高くなったときタイミング2:不動産投資を副業ではじめるとき副業の不動産投資を法人化するメリット 節税対策につながる金融機関の融資が受けやすくなる相続がスムーズにおこなえる副業の不動産投資を法人化するデメリット法人設立の手続きや費用が必要事務作業を委託する場合のランニングコストがかかる赤字でも法人住民税を支払う必要がある廃業(解散)にも費用がかかる法人化する手順は?不動産投資会社の社名をはじめ、基本事項を決定する定款の作成・認証資本金を振込む設立の登記書類を用意し申請する副業の不動産投資を法人化しないほうがよい場合とは?まとめ

個人事業主として不動産投資を副業でおこなっている人のなかには、会社設立に興味があっても、「法人化するほうがよいのか?それともしないほうがよいのか?」と葛藤している人も多いのではないでしょうか?

法人化するかしないかは、会社設立に適したタイミングかどうか、得られるメリットがデメリットを上回っているかどうかが重要です。


そこで今回は、不動産投資を副業でおこなっている人に向けて、法人化に適したタイミングやメリットとデメリットを解説します。

また、副業から法人に切り替えるにあたっての注意ポイントも。


副業のまま不動産投資をつづけるか、それとも法人化するか迷っている人は、ぜひ参考にしてください。


副業の不動産投資は法人化できる?注意点は?

不動産投資の法人化とは、「不動産投資をするための資産管理会社の設立」を言います。

なお、法人化(会社の設立)はだれにでもできますし、もちろん、副業で不動産投資をおこなっている途中からでも法人化することは可能です。


法人化することで、納付する所得税や住民税を減らしたり、金融機関の融資を受けやすくなったりといったメリットを得られます。

ただし、法人化には設立費用やランニングコストもかかります。


また、サラリーマンが副業で不動産投資をおこなっている場合、法人化には注意が必要です。

勤務先が副業禁止であればもちろんですが、副業として不動産投資認められていても「事業規模以下」というルールがある場合は、法人化によって会社役員になることが服務規程違反にあたる可能性があるのです。


不動産投資を副業にしていることを会社に分からないようにしていても、法人化することで登記簿謄本に記載された住所や名前から、身元が判明する例もあるため注意が必要です。


「どうしても法人化したいが会社にはバレたくない」

そんな場合は、家族や配偶者を法人の代表者として登記し、役員報酬を受け取る方法もあります。


まずは、勤め先の会社は副業を認めているか、またどの程度までなら副業とみなされるのか、しっかりと確認したうえで法人化をすすめとよいでしょう。


サラリーマンが不動産投資で有利な理由はこちら!>>サラリーマンは不動産投資で有利!理由や成功するポイントも伝授


副業の不動産投資を法人化するのに適したタイミングはいつ?

サラリーマン 時計 スマホ


副業でおこなっている不動産投資を法人する場合、適したタイミングは2通りあります。


タイミング1:所得税率が法人税率よりも高くなったとき

ひとつ目は、個人の所得税率が法人税率より高くなったタイミングです。

下記は個人の所得に対する税率表です。


個人の所得税率

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円超え 330万円以下

10%

97,500円

330万円超え 695万円以下

20%

427,500円

695万円超え 900万円以下

23%

636,000円

900万円超え 1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円超え 4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超え

45%

4,796,000円

参考:国税庁


次に法人所得の税率表をみてみましょう。


法人税率票(資本金1億円以下の法人の場合)

普通法人

全て

23.90%

中小法人

所得が年800万円相当額以下

15.00%

所得が年800万円相当額超

23.90%

参考:国税庁


上記のふたつの表を比べると、個人の課税所得額が900万円以下の所得税率は23%ですが、900万円を超えると所得税率は33%になります。


法人税の税率は最高でも23.90%なため、課税所得が900万円を超えるようであれば、法人化することで納付する所得税および住民税を減らすことができます。


タイミング2:不動産投資を副業ではじめるとき

ふたつ目は、法人を設立した上で副業として不動産投資をはじめる場合です。

前述のように、課税所得が900万円を超えた場合、個人の所得税率が法人税率よりも高くなります。


そのため、副業で不動産投資をはじめる時点での収入が900万円を超えている場合は、最初から法人化したほうが節税になるのです。

また、いずれ本格的に不動産投資をおこなうことを目標にしているのであれば、のちに大きな収益物件の融資を受けるための実績づくりになりますし、途中で法人化するよりも会社設立にかかる費用をカットできます。


いきなり法人名義で不動産用投資物件を購入・運営することになるため不安な点が多いかもしれませんがメリットは大きいです。


副業の不動産投資を法人化するメリット

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不動産投資を副業から法人化した場合、以下のようなメリットがあります。


節税対策につながる

前述のとおり、所得税率が法人税率よりも高くなった場合に法人化することで納付する所得税(住民税)額を減らすことができますが、それ以外にも法人化することで節税につながるメリットはたくさんあります。


経費と認められる費用の幅が広くなる

法人化することで経費として認められる費用が大幅に増えるため、大きな節税効果が期待できます。

たとえば、生命保険料の一部や社用車の購入・維持費用、自宅(社宅)の購入費用、また交際費用も会社経営に関する場合は一定額まで経費として認められます。


損失の繰り越し期間が長い

決算が赤字だった場合の損失を次年度以降に繰り越すことができる「赤字繰り越し」の期間が、法人は最長10年までおこなえます。

不動産物件の購入や大規模修繕などで支出が多かった年は赤字になる場合もあるため、その赤字を翌年以降に計上することで節税効果が見込めます。


減価償却費の計上をコントロールできる

法人化することで、その年に減価償却する金額を自由に決めることができるようになります。

たとえば、利益が大きくなった年は減価償却費を経費として多く計上すれば、その年に納税する税金額を減らすことができます。


不動産の短期譲渡は法人が有利

個人が不動産物件を売却すると、売却益に対して所有期間が5年以内の場合は約39%の「短期譲渡税」がかかります。

しかし法人は、不動産物件の所有期間に関係なく売却益に課せられる実効税率は約30%のため、短期所有の不動産物件の売却は法人のほうが有利になります。


ただし、法人が不動産物件を長期所有後に売却する場合は、「長期譲渡税」(個人の場合のみ適用。税率は約20%)の対象にならないため注意が必要です。


金融機関の融資が受けやすくなる

法人として会社を興すことで信用度が高くなり、金融機関からの融資を受けやすくなります。

サラリーマン以外の職業の人が副業として不動産投資ローンを利用する場合、属性の関係で融資が受けにくいです。

しかし、会社の事業として不動産投資をおこなうことで実績ができるため、法人は融資が受けやすくなります。


相続がスムーズにおこなえる

相続をスムーズにするためにも法人化は役立ちます。

個人で不動産物件を所有している場合、所有者が亡くなると相続税が発生しますが相続人が複数いると不動産物件の分割で争いが起きることも少なくありません。


しかし法人の場合、会社の財産はだれかに相続されるものではないため、相続や贈与という概念がありません。

そのため、会社の代業者が亡くなり代表者が変わったとしても、会社の資産に対して相続税や贈与税は発生しないのです。


なお、会社設立時に家族を役員にしておけば、役員報酬をとして収益を分配できます。

贈与税をかけずに家族に財産を移動できるため、節税対策として有効な手段になります。


副業の不動産投資を法人化するデメリット


腕組み サラリーマン 悩む

不動産投資を副業から法人化した場合、以下のようなデメリットがあります。


法人設立の手続きや費用が必要

法人として会社を設立するには所定の手続きや費用(株式会社で25~30万円程度、合同会社で10~15万円程度)が必要となります。


なお、法人化の手続きは個人でおこなうことも可能ですが、定款など作成しなければならない書類が多く、作成にも細かなルールがあるため、すべて個人でおこなう場合は手間と時間がかかります。


本業が忙しい場合は、報酬は必要ですが、司法書士など専門家に依頼することで不備なくスムーズに法人化できるでしょう。


事務作業を委託する場合のランニングコストがかかる

個人事業主に比べて法人は、事務作業の量が増え複雑化します。

法人化した場合、従業員の社会保加入は義務となるため、従業員の厚生年金と健康保険費用のうち半分を会社が負担する必要があります。

また、従業員の源泉徴収の納付書や源泉徴収票の作成業務も発生するため、これらの作業を外部に委託する場合は費用がかかります。


法人化すると会計処理が複雑になるため、税理士と顧問契約を結んだり、決算書の作成や確定申告書作成依頼などの費用がかかるケースも増えるでしょう。


赤字でも法人住民税を支払う必要がある

決算が赤字だった場合、個人事業主は所得税と住民税はかかりません。

しかし法人の場合、仮に経営が赤字であっても法人住民税の一部を支払う必要があります。


法人住民税は、「法人税割」と「均等割」で構成されています。

法人税割は、法人税額を基に算出されるため赤字の場合は発生しません。

しかし、均等割は収益ではなく法人の規模や従業員数などに応じて納税額が決まるため、たとえ赤字であっても支払う義務があります。


なお、均等割は資本金の金額や従業員数が多いほど課税額が高くなるため注意が必要です。


廃業(解散)にも費用がかかる

会社設立時同様、法人として会社をたたむ場合も費用がかかります。

事業をやめる際は、登記にかかわる手続き費用のほか、官報への告知掲載費用などとして7~8万円程度の費用が必要です。


また、これらの手続きすべてを税理士や司法書士などに依頼すると、30~50万円の報酬を支払わなくてはなりません。

会社を廃業する場合は上記の費用を念頭のおいておきましょう。


法人化する手順は?

法人設立届出書 印鑑 サイン


ここでは、法人化する際の手順や注意点を紹介します。


不動産投資会社の社名をはじめ、基本事項を決定する

まず、以下の基本事項を決定します。


・商号(会社名)

・本社所在地

・事業目的

・事業年度

・資本金額

・発起人

・役員


商号(会社名)が決まったら、登記に必要な実印(代表者印)や銀行印、角印の印鑑をつくりましょう。

納品に時間がかかる場合もあるので、早めに準備しておくと安心です。


定款の作成・認証

定款とは、会社の基本的な規約や規則が記載されたものです。

書式は決まっていませんが、法律上かならず記載する必要のある項目などが決められています。


【必須記載事項】

・事業の目的

・商号

・本社所在地

・資本金額

・発起人の氏名と住所


なお定款の作成は、法務局のHPにある定款のひな型を参考に自分で作成もできますが、不備があると認証してもらえないため注意が必要です。

作成には手間と時間がかかるため、費用はかかりますが司法書士に作成を依頼してもよいでしょう。


定款の作成が終わったら、株式会社場合は公証役場で公証人に定款の認証を受ける必要があります。(合同会社は認証不要です)


資本金を振込む


資本金を振込む際は、会社の口座がまだないため、発起人や代表者の個人口座に振込みます

登記申請時に振込証明書が必要になるため、作成したら通帳にコピーを添付し、大事に保管しておきましょう。

なお振込んだ資本金は、会社設立後に会社の口座に移します。


設立の登記書類を用意し申請する

登記に必要な書類を揃えて申請をおこないます。

なお、必要書類の種類や記載内容は、設立する会社の形態によって異なるため、自身の設立する会社にあわせて用意してください。


必要な種類を不備なく揃えたら、法務局に提出し、登記申請と法人実印登録をおこないます。

なお、法務局に登記申請をした日が会社の設立日になります。


また登記完了後は、会社の銀行口座を開設し、税務署、市町村役場、年金事務所などに設立の届け出をおこないましょう。


副業の不動産投資を法人化しないほうがよい場合とは?

法人化することで副業では購入できない高額の不動産物件を購入できたり、節税できたりと多くのメリットがありますが、なかには「法人化せずに副業として不動産投資をつづけてたほうがよい場合」もあります。


まず、不動産所得額が少ない場合です。

給与所得との合計額にかかる所得税率が、法人税実効税率の約29%を超えない場合は法人化するメリットがない可能性があります。


また、所得税・住民税でメリットがあっても、法人化の際にかかる費用やランニングコストを含めたうえでメリットを得られるかどうかも重要です。

特に自己資金に余裕がない状態で法人化してしまうと、副業では発生しなかった法人関連の税金や税理士への報酬などの出費が負担になることも予想されます。


現時点で法人化する旨味が薄い場合は無理に法人化せずとも、そのまま不動産投資を副業としておこない、不動産所得が増えた段階で、再度法人化の検討をおすすめします。


まとめ

不動産投資を副業から法人へ切り替えるタイミングは、所得税率が法人税率よりも高くなったとき、またはこれから不動産投資をはじめるときです。

ただし、法人化することで得られるメリットが薄い場合やデメリットが大きい場合は、まだ法人化するタイミングではないかもしれません。


不動産投資において、大きな節税効果が期待できる法人化は大変魅力があるからこそ、しっかりとメリットを享受できるタイミングで法人化を目指すことをおすすめします。

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