不動産投資における税金と節税の基礎知識
「不動産投資を始めたものの、思ったよりも手元にお金が残らない」──その原因の多くは「税金」にあります。
不動産投資は家賃収入を得るビジネスである以上、税金の影響を避けることはできません。固定資産税や所得税といった基本的な税金に加え、購入時・売却時にかかる税金まで含めれば、その仕組みは複雑です。
しかし、逆に言えば税金の仕組みを理解し、適切な節税対策を取ることで、不動産投資の収益性は大きく変わります。例えば同じ家賃収入を得ていても、税務処理の方法次第で数十万円単位の差が生じることもあります。
本記事では、不動産投資にかかる代表的な税金の種類と計算方法、さらに合法的に収益性を高めるための節税の基本を解説します。

不動産投資で発生する主な税金
不動産投資で関わる税金は「購入時」「保有時」「売却時」に大別されます。それぞれのタイミングごとに見ていきましょう。
購入時にかかる税金
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不動産取得税
不動産を購入した際に都道府県から課される税金です。税率は原則4%ですが、住宅用物件の場合は軽減措置が設けられているケースもあります。 -
登録免許税
不動産の所有権移転登記や、金融機関から借入を行った場合の抵当権設定登記に必要です。例えば3,000万円の物件を購入し、登記を行う場合は十数万円規模の税金が発生します。
印紙税
売買契約書やローン契約書に貼付する収入印紙のことです。契約金額に応じて数千円から数万円程度が必要です。
保有時にかかる税金
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固定資産税
毎年1月1日時点の所有者に課される税金です。評価額×1.4%が標準ですが、都市によって多少異なる場合があります。例えば評価額2,000万円の物件なら年間28万円が課税されます。 -
都市計画税
都市計画区域内にある土地・建物に課され、固定資産税と合わせて納税通知書で請求されます。税率は0.3%が上限です。
所得税・住民税
不動産から得た家賃収入から経費を差し引いた「不動産所得」に対して課税されます。課税所得が増えれば所得税率も上がり、15%〜45%の税率が適用されるため注意が必要です。
売却時にかかる税金
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譲渡所得税・住民税
不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、その金額に課税されます。
計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価格 -(取得費+譲渡費用)
長期譲渡所得と短期譲渡所得
- 5年以下の保有期間:短期譲渡所得として税率約39%(所得税30%+住民税9%)
- 5年超の保有期間:長期譲渡所得として税率約20%(所得税15%+住民税5%)
売却タイミングを間違えると、税金負担が倍近く変わる点は要注意です。
不動産所得の計算方法と節税の基本
不動産投資における課税のベースは「不動産所得」です。
計算式はシンプルですが、どの費用を経費にできるかを正しく理解することが重要です。
不動産所得 = 総収入金額(家賃収入など) - 必要経費
必要経費の代表例
- 減価償却費(建物部分)
- ローンの利息部分
- 管理費・修繕積立金
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料・地震保険料
- 管理委託費・仲介手数料・広告宣伝費
例えば年間家賃収入500万円の物件を保有し、経費が300万円かかった場合、不動産所得は200万円になります。これに所得税・住民税が課される仕組みです。
節税の王道パターン
不動産投資での節税は「認められた経費を正しく計上すること」が基本です。
減価償却を活用する
建物部分の購入費用は耐用年数に応じて毎年経費として計上できます。木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年が目安です。
例えば建物部分が2,000万円で鉄筋コンクリート造なら、年間約43万円を経費にできます。
ローン利息の計上
ローン返済のうち、利息部分は経費に含められます。特に返済初期は利息割合が高いため、節税効果が大きいのが特徴です。
修繕費と資本的支出の違い
- 修繕費:建物の維持管理や原状回復のために使う費用(その年の経費にできる)
- 資本的支出:建物の価値を高めるための支出(減価償却で分割計上)
区分を誤ると税務上のトラブルになるため、注意が必要です。
青色申告のメリット
- 最大65万円の特別控除
- 赤字を3年間繰り越し可能
- 家族への給与を経費にできる(要件あり)
税金対策を行う上での注意点
- グレーな節税スキーム(過剰な経費計上、名義分散など)は税務リスクを伴うため避ける
- 節税だけにとらわれず、将来の売却時の税負担もシミュレーションに入れる
- 税制は毎年のように改正が行われるため、最新情報をキャッチアップする
専門家(税理士)に相談することで適法かつ効果的な節税が可能
まとめ
不動産投資は、家賃収入だけでなく「税金を理解しているかどうか」で収益性が大きく変わります。購入時・保有時・売却時、それぞれに税金が発生し、その計算方法や控除の仕組みを把握することが必要不可欠です。
特に、青色申告や減価償却といった制度を正しく活用すれば、合法的に節税を行いながら収益を最大化できます。一方で、短期的な節税ばかりを追いかけるのではなく、将来の売却や資産形成まで見据えた長期的な視点も求められます。
「知らなかった」では済まされないのが税金です。適切な知識を持ち、計画的な対策を講じることで、不動産投資はより安定した資産運用手段となります。