不動産投資ローンの返済金は経費になる?領収書保存の注意点とは
2024/04/12

不動産投資ローンの返済金は経費になる?領収書保存の注意点とは

不動産投資ローンの返済金は経費になる?不動産所得が赤字のときの注意点不動産投資で返済金の利息以外で経費計上できるもの管理会社への管理委託料・管理費各種保険料仲介手数料・広告宣伝費修繕費減価償却費租税公課司法書士や税理士への報酬雑費不動産投資で必要経費として認められない費用スーツなどの衣類や服飾雑貨反則金や罰金資格取得に支払った学費など不動産投資に不必要とみなされる高額な費用家事按分の比率が大きすぎる場合不動産投資の経費計上は確定申告でおこなう領収書の紛失や発行されない場合の対処方法領収書の電子データでの取り扱いについてまとめ

不動産投資で収益物件の購入・運用をおこなう際は、さまざまな費用が発生しますが、不動産投資ローンの返済金は経費として認められるのでしょうか?

実はローン返済金のうち、経費として計上できるのは「利息部分」だけであって、元本は経費として認められないのです。


今回は不動産投資の経費について、計上できる費用とできない費用をそれぞれ解説します。また2024年1月1日以後の電子データでの書類保存完全義務化に伴い、領収書やレシートの保存方法や領収書が発行されない場合の対処方法も紹介します。


不動産投資ローンの返済金は経費になる?

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不動産投資ローンの返済金のうち、金利部分については必要経費として計上できます。

ただし、借入金の元本については貸借対照表上の負債として扱うため、経費計上はできません。


たとえば、月々のローン返済額10万円のうち、元本返済額が7万円、金利部分が3万円の場合、経費として計上できるのは、金利部分の3万円のみとなります。

なお、不動産ローンに関係する支出(ローン保証料など)も必要経費として計上可能です。


不動産所得が赤字のときの注意点

前述したように、不動産投資ローンの返済金のうち利息部分については経費として計上することが可能です。

ただし、不動産所得が赤字の場合は借入金のうち土地に関係する部分の利息は、経費として計上できないため注意が必要です。


不動産投資ローンは、ほとんどのケースで土地と建物、両方を購入するために利用します。

そのため不動産所得が赤字だった場合、ローンの返済額の利息部分から、土地に関する利息の割合分を差し引いて経費計上しなければなりません。


不動産投資で返済金の利息以外で経費計上できるもの

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前述したように、借入返済金のうち利息部分は経費計上が可能です。しかし不動産投資では、これ以外にも計上できる経費があります。

ここでは経費として認められる費用について詳しく解説します。


管理会社への管理委託料・管理費

所有する一棟アパートなどの収益物件の管理を外部に委託する場合に発生した管理委託料は経費計上できます。

なお区分マンションの場合、共用部分や設備などを維持する費用を管理費としてマンションの管理組合などが徴収するケースもあります。この場合も経費計上が可能です。


関連記事:不動産投資を成功させる不動産管理会社の選び方!管理業務内容を解説


各種保険料

所有物件に火災保険や地震保険をかけた場合の保険料は経費として計上できます。これらのほかにも各種特約や孤独死保険などの保険料も不動産投資に必要なものであれば経費として認められます。


関連記事:不動産投資の保険を解説!生命保険代わりになる?火災保険や特約も!


仲介手数料・広告宣伝費

入居者の退去が決まったら、できるだけ早く次の入居者を見つける必要があります。新規

入居者を募集するにあたって不動産会社などに依頼した場合、賃貸契約締結時に不動産会社に支払う仲介手数料や広告宣伝費(AD)は経費として計上可能です。


関連記事:不動産投資の仲介手数料には上限額がある!仕組みや計算方法を解説


修繕費

所有物件の建物の傷みの補修や故障した設備の修繕や交換費用、入居者が退去後の原状回復工事費などは経費として認められます。


ただし設備の交換や原状回復が物件をアップグレードするような工事の場合は「資産的支出」となり、経費では減価償却する会計処理が必要になります。


減価償却費

不動産の購入費用(土地以外の建物や付随設備)を耐用年数に基づいて分割した金額を「減価償却費」といい、毎年の確定申告時に経費として計上できます。

なお減価償却費は、その年に現金支出がなくても経費計上できるため、不動産所得を圧縮できるため節税効果につながります。


関連記事:不動産投資の減価償却についてわかりやすく解説!節税ポイントも

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租税公課

不動産投資をおこなうことで課税される税金は経費として計上可能です。経費計上できる税金には以下のような種類があります。


◦固定資産税・都市計画税

◦登録免許税

◦不動産所得税

◦印紙税

◦自動車税 など


ただし、不動産投資にかかわらず課せられる所得税・住民税、法人税は経費として計上できないため注意しましょう。


司法書士や税理士への報酬

不動産を売買するにあたって登記を司法書士に依頼した場合や、税理士に確定申告など依頼した際に支払う報酬は経費にできます。


雑費

上記以外の費用も雑費として経費計上が可能です。雑費に含まれる費用には次のような種類があります。


通信費

電話代やインターネット回線使用料などのうち、不動産投資に関するものであれば経費とすることができます。


また不動産投資の帳簿付けや情報収集に使用するパソコンの購入代金、不動産投資に関係する連絡を取るために使用するスマートフォンの料金なども経費として認められます。


旅費・交通費

不動産投資に関する打ち合わせで移動時にかかった交通費や、遠方にある不動産の現地調査で宿泊した際に支払った宿泊代金は経費として計上できます。


また不動産投資に関連する移動のために車を購入した場合は、その購入代金から維持費などを経費として計上が可能です。ガソリン代や駐車料金も経費にできます。

ただしプライベートと不動産投資に1台の自家用車を共用している場合は、家事按分(不動産投資に使用した割合だけを算出する)して経費として計上します。


新聞・図書費

不動産投資の情報収集や勉強のために購入した書籍や、不動産投資セミナーなどの参加費用は経費として認められます。


交際費

不動産投資に関連した付き合いで支払った飲食代や冠婚葬祭費用は経費計上が可能です。

ただし、あくまでも不動産投資のために支払ったお金だけが対象です。また飲食代が高額すぎる場合は経費として認められない場合もあるため注意しましょう。


消耗品費

不動産投資のために購入した10万円以内の物品(パソコンやスマートフォン、机、什器など)は経費として計上可能です。コピー用紙や筆記用具なども計上できます。


ただし10万円を超える物品については、減価償却が必要となる場合もあるため注意しましょう。


不動産投資で必要経費として認められない費用

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不動産投資で必要経費として認められる費用は、あくまで不動産投資に関係のあるものだけです。したがってプライベートで使用する物品の購入費用や交通費、交際費などは経費として認められません。


また、不動産投資に関連している場合でも、以下のケースは経費として認められない場合があるため注意しましょう。


スーツなどの衣類や服飾雑貨

スーツなどの衣類やビジネスバッグ、時計、靴などの服飾雑貨を不動産投資の打ち合わせなどで使用するケースもあるでしょう。

しかしこれらの物品は、不動産投資でなくても使用できる「ファッションアイテム」とみなされるため、経費として認められない場合が多いです。


反則金や罰金

不動産投資の打ち合わせや現地確認などの際に発生した、反則金や罰金などは経費として認められません。ただし、事故を起こした際のレッカー代は経費として認められます。


資格取得に支払った学費など

資格取得に支払った学費などは、あくまで「個人のスキルアップ」のためとみなされます。たとえ不動産投資関連の資格であっても経費として認められないため注意しましょう。


不動産投資に不必要とみなされる高額な費用

たとえば、不動産投資でパソコンを購入する際は経費計上できますが、必要以上に高額な場合は経費として認められない場合があります。

また交際費など、通常は経費として認められる費用も、常識の範囲を超えた金額の場合は経費として認められないケースもあるため注意しましょう。


家事按分の比率が大きすぎる場合

パソコンやインターネット回線、自動車のように不動産投資とプライベートで共有する場合は、その購入費用や利用料金を「家事按分」としたうえで経費計上が可能です。


たとえば、1台のパソコンを購入して不動産投資とプライベートで使用する場合、1日のうち不動産投資関連で使用する時間を算出することで、家事按分として、パソコン本体代金やインターネット料金の経費として計上します。


ただし家事按分をするには、経費計上するパソコン購入費が不動産投資に必要であると明らかにしなくてはいけません。帳簿をつける、物件の情報収取をおこなうなどパソコンの必要性や、パソコンの利用時間や業務日数を記録しておきましょう。


なお、家事按分の割合が大きすぎると経費として認められない場合もあります。

また上記の費用以外にも、家賃や水道光熱費なども家事按分が可能です。


不動産投資の経費計上は確定申告でおこなう

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確定申告は、例年2月16日~3月15日の申告期間内に前年分の所得の申告をおこないます。

計上できる経費を含め必要事項を記載した「青色申告決算書(青色申告の場合)」または「収支内訳書(白色申告の場合)」を税務署に提出し、それによって納税額が確定します。


領収書を提出する必要はありませんが、手元に一定期間保存する義務があります。

個人で不動産投資をおこなっている場合、原則として白色申告は5年間、青色申告は7年間の保存が必要です。


税務調査が入った際に提示を求められることがあるため、捨てないように気をつけましょう。


領収書の紛失や発行されない場合の対処方法

領収書を紛失した場合は、次のような支払いを証明できる書類があれば問題ありません。


◦クレジットカードの明細書

◦銀行の振込明細書

◦ECサイトで購入した場合の確認メール(宛名、日付、金額、但し書き、発行元の記載がある場合のみ有効)


また鉄道などの公共交通機関の交通費や冠婚葬祭に関する支出など、領収書の発行がむずかしい場合は支払い用途などが明らかな場合は経費として認められるケースがあります。


◦冠婚葬祭に関する支出

不動産投資に関係のある冠婚葬祭で支出した場合、金額などを記載して出金伝票を作成し、結婚式の招待状や香典返しの挨拶状などを添付します。

相手の名前や金額、日付も忘れずに記載しておきましょう。


◦公共交通機関に関する支出(交通費)

領収書やレシートが発行されない交通費は、移動目的や行き先、使用した路線などを記載した出金伝票を作成することで経費を計上できます。


なおICカードをチャージした場合は発行された領収書を保存するか、券売機にICカードを通して利用履歴を印字したものを保存しましょう。


なお、プライベートでも同じICカードを利用している場合は、不動産投資にかかわる交通費だけを抜き出して別保存にしてください。


領収書の電子データでの取り扱いについて

2022年1月に改正電子帳簿保存法の施行に伴い、2024年1月1日以後は電子データでの書類保存が完全義務化されました。

そのため領収書やレシートを電子的に受領した場合、要件に従って電子データの保存をおこなわなくてはなりません。


紙に印刷された領収書やレシートは、そのまま紙で保管しても問題ありません。

電子データで保存したい場合は、領収書などをスキャナやスマートフォンなどでコピーまたは撮影した画像をファイルで保存する「スキャナ保存」にしてもかまいません。


ただし、スキャナ保存は「真実性の確保」と「可視性の確保」を目的とし、解像度や文字の大きさなどの要件を満たす必要があります。

詳しくは国税庁ホームページ『電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】』を参照してください。


まとめ

不動産投資で経費として認められるものと認められないものを、それぞれ紹介しました。なかでもローン返済金のうち経費として計上できるのは「利息部分」だけです。元本は経費と

して認められないため注意が必要です。


また確定申告時には経費の領収書などの提出は不要です。しかし領収書は一定期間保存する義務があるため、確定申告が終わってもきちんと整理して保管しておくことを忘れないようにしましょう。


経費計上をもれなくおこなうことで課税所得額が圧縮され、結果的に節税につながります。当記事を参考にして、計上できる経費をしっかりと把握し、節税対策をおこなってください。

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