不動産投資ファンドの種類や仕組みを解説!注意すべきポイントは?
2023/08/01

不動産投資ファンドの種類や仕組みを解説!注意すべきポイントは?

不動産投資ファンドとは?「現物不動産投資」と不動産投資ファンドの違い不動産投資ファンドの種類と特徴不動産投資信託(J-REIT)不動産特定共同事業法に基づく不動産投資ファンド不動産投資ファンドのメリット少額の自己資金で投資ができる分散投資でリスクを軽減できる運用・管理全般を任せられる不動産投資ファンドのデメリットとリスク上場廃止や倒産によるリスク受け取れる配当金が少額になる可能性があるレバレッジ効果を効かせた投資ができない投資家の意向は反映されない不動産投資ファンドを利用する際の注意点自身にあうファンドを選ぶファンドのリスクを理解しておくまとめ

不動産投資に興味があっても自己資金に余裕がない人や大きな借金をしたくないという人におすすめなのが「不動産投資ファンド」です。

少額で不動産投資ができるため注目を集めている不動産投資ファンドですが、種類や特徴について知らない人も多いようです。


そこで今回は不動産投資ファンドについて、種類や仕組み、メリット・デメリット、利用する際の注意ポイントについて詳しく解説します。


不動産投資ファンドとは?

まず「ファンド」とは、複数の投資家から資金を集めて運用し、そこから得られる収益を投資家に分配する仕組みや組織をいいます。つまり不動産投資ファンドとは、「不動産を投資対象としたファンド」を指すのです。


不動産投資ファンドの投資対象となる不動産には複数の種類があります。例としては、マンションなどの住居系不動産、オフィスビルや商業(店舗)系不動産、リゾートホテル、介護・医療施設などがあげられます。それらを単体で運用するほか、複数を組み合わせて運用するファンドや不動産だけでなく株式投資などを組み合わせたファンドもあります。


また不動産投資ファンドには、家賃収入などの「運用益(インカムゲイン)」を重視するものと不動産の「売却益(キャピタルゲイン)」を重視するものの2種類にわけられます。


このように不動産投資ファンドには、投資対象となる種類や運用方法などが複数あり、組み合わせ次第で多様な投資がおこなえます。そのため不動産投資ファンドで投資先を決める際は、資金面や求めるリターンを考慮したうえで目的にあうファンドを選ぶとよいでしょう。


「現物不動産投資」と不動産投資ファンドの違い

「現物不動産投資」では、投資家本人が不動産投資ローンなどを利用して購入した収益物件(マンションやアパートなど)を運用し収益を得ます。この場合、物件選びや購入に関する手続き、運用時の管理などはすべてオーナー自身で手配する必要があります。


一方で不動産投資ファンドは、複数の投資家が出資して1件の不動産を所有します。そのため投資家ひとり当たりの投資額が小さくても元手が大きくなりやすく、個人でおこなう現物不動産投資では手が出ない超高額物件を所有することも可能になるのです。

また不動産の選定や購入に関する手続き、運用・管理はすべてファンド側でおこなうため、投資家の手間が省けます。


現物不動産の売買には時間がかかるのが一般的ですが、不動産投資ファンドの種類によっては比較的売買が簡単なものもあるため現金化しやすく、流動性にも違いがあることを覚えておきましょう。


不動産投資ファンドの種類と特徴

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不動産投資ファンドには、おもに「不動産投資信託」と「不動産特定共同事業法に基づく不動産投資ファンド」の2種類があります。ここではそれぞれの特徴を解説します。


不動産投資信託(J-REIT)

不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)は、投資信託および投資法人に関する法律に基づく投資商品です。英語の頭文字から「REIT(リート)」とも呼ばれており、日本では、JAPANの「J」をつけて「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ばれています。


REITについて詳しくはこちら!>>少額で不動産投資ができるREIT(リート)のメリット・デメリットを解説!


投資額は数万円からはじめることができ、自己資金が少ない人や分散投資をおこないたい人におすすめです。また収益の90%以上を分配するなどの条件を達成すれば法人税が非課税になるため、投資家はより多くの収益を得られる可能性があります。

ただし投資先物件の所有権は投資家にはありません。


投資対象となる不動産の種類(用途)は、オフィスビルや賃貸住宅(おもに一棟マンション)のほか、商業(店舗)系不動産、物流(倉庫)系不動産、ホテルやリゾート施設、高齢者用施設など多岐にわたります。

また上記の投資対象不動産のなかから1種類だけに投資する「単一用途特化型」と、異なる種類の不動産を組み合わせて投資する「複数用途特化型」などの種類があります。


単一用途特化型は、オフィスビル特化、住居特化、ショッピングセンターなどの商業施設特化などのタイプがあります。投資した種類の不動産が好調であれば大きな利益が期待できますが、逆に不調となれば元本割れなどのリスクが高くなるため注意が必要です。


一方、複数用途特化型は、複数の種類の不動産に投資する方法で、ふたつのタイプがあります。

ひとつはオフィスビルと住居といったふたつの用途を組み合わせて投資する「複合型」です。もうひとつは、オフィスビルと住居と商業施設といった3つ以上の用途を組み合わせて投資する「総合型」になります。


複数種類の不動産に分散投資をおこなうため、単一型に比べてリスクが低くなりますが、かわりにいずれかが好調でもそのほかが不調ということもあるため、リターンも少なくなるケースも考えられます。


上記のほかにも、エリアを絞った「地域特化型」や上場投資信託の「REIT型ETF」などもあるのでリターンやリスクを考慮したうえで目的にあった投資先を選ぶとよいでしょう。


REIT型ETF について詳しくはこちら!>>現物不動産投資、J-REIT、REIT ETFそれぞれの特徴や仕組みを解説!


なお不動産投資信託の資金調達方法は、公募ファンドと私募ファンドのふたつにわかれています。


公募ファンド

証券取引所に上場して不特定多数の投資家を対象に資金調達をおこなっているファンドです。株式と同じような方法で売買できることから、比較的流動性が高いのが特徴です。

数万円から投資できるファンドもあるので、不動産投資ファンド初心者の人や少額投資をおこないたい人向きといえるでしょう。


一方で株式同様、そのときの経済状況やインフレ・デフレの影響を受けるため値動きも大きくなりやすく、元本割れなどの危険性も考えられるため注意が必要です。


私募ファンド

投資口が証券取引所に上場されておらず、事業法人や機関投資家など一部の投資家のみを対象として販売されます。証券取引所に上場していないため、公募ファンドに比べて流動性は低いです。


また最低投資額は最低数億円からという高額な商品が多く、ハイリスク・ハイリターンな運用なのが特徴です。


不動産特定共同事業法に基づく不動産投資ファンド

「不動産特定共同事業法」は、不動産投資ファンドを運用する事業者に適用される法律です。複数の投資家から出資を受けて現物不動産の取引をおこない、その収益を投資家に分配する事業を「不動産特定共同事業」といいます。

不動産特定共同事業をおこなうためには、国土交通大臣か都道府県知事から不動産特定共同事業の許可、または登録を受けなければなりません。


そして、この不動産特定共同事業をおこなう事業者が販売する金融商品が「不動産小口化商品」です。


不動産小口化商品について詳しくはこちら!>>不動産小口化商品ついて詳しく解説!種類やメリットとデメリットは?


不動産小口化商品の特徴は、現物不動産投資で個人の購入がむずかしい超高額物件でも、複数の投資家で共同所有する仕組みであるため、数万円~数百万円程度の資金で購入できる点です。

また投資する物件や期間が定められているため、投資開始時点でリターンの想定がしやすいのも特徴となります。


不動産小口化商品には、次の3つのタイプがあります。


任意組合型

投資家が不動産の共有持分を取得したのち、投資家と事業(不動産特定共同事業者)者は任意組合契約を結びます。その後、投資家は持ち分を現物出資し、それを組合側が管理・運用をおこない、得られた収益を投資家へ分配します。


任意組合型の特徴は不動産の所有権を保有できる点です。相続時には実物不動産と同じように相続税評価額で計算されるため相続税対策に役立ちます。

なお任意組合型の運用期間は10年以上で募集されるものが多く、長期に渡って安定した収益が期待できます。


一方で、最低投資額は一口あたり100万円以上というケースが多く、また権利上、現物不動産に似た形式を持っているため、登録免許税や不動産取得税などの費用が発生します。

また匿名組合型とは異なり、無限責任となるため出資した金額以上の責務を負う可能性があるため注意しましょう。


匿名組合型

投資家と事業者が匿名組合契約を結び、事業者が所有者として不動産の管理・運営をおこないます。そのため不動産登記簿に投資家の名前が載ることはなく、匿名性が保たれるのが特徴です。


投資額は一口あたり数万円から、運用期間も数ヶ月から5年程度のものが多いので不動産投資初心者にもおすすめです。

また匿名組合は有限責任なため、万が一元本割れした場合も投資した金額以上に責任を負う必要がありません。


賃貸型

複数の投資家が不動産の共有持分を購入し、不動産を事業者に賃貸して管理・運用をしてもらいます。不動産の所有権は投資家が持ち、事業者は賃貸収入を投資家に分配する仕組みです。


一口あたり100万円以上で10年以上の長期投資が多いため、運用がうまくいっていると長期にわたって安定した収入が期待できます。ただし、賃貸型の不動産小口化商品は数が少なく、買いたくても買えないといったケースがみられます。


不動産投資ファンドのメリット

ブロック REIT 記号

さまざまな種類のある不動産投資ファンドですが、以下のようにいずれの商品にも共通するメリットがあります。


少額の自己資金で投資ができる

不動産投資ファンドは、現物不動産投資に比べて少額の自己資金ではじめることができます。通常の現物不動産投資の場合、最低でも数百万円程度の自己資金が必要になります。また金融機関の融資額には上限があるため、購入したい収益物件があっても資金不足で購入を諦めるケースも少なくありません。


しかし不動産投資ファンドなら、一口数万円程度の少額から投資することも可能なので自己資金が少ない人でもはじめやすいです。また個人では購入できない一等地の超高額物件や、資産価値の高い有料物件への投資もできるのが魅力といえます。


分散投資でリスクを軽減できる

前述したように、不動産投資ファンドは少額の不動産投資が可能です。そのため現物不動産投資では1件しか購入できない自己資金でも、不動産投資ファンドでは複数の物件に投資できるので、不動産投資のリスク分散につながります。


たとえば、間取りタイプの異なる収益物件を複数持ったり、都心部と地方に物件を持ったりすることで、空室や災害による損失が発生するリスクの分散につながります。


また不動産投資ファンドなら、一度に自己資金全額を投入する必要はありません。とりあえず少額で何件か購入し、状況次第であとから追加で購入することもできます。このように投資のタイミングをずらすことで、まとめて購入して大きな損害が発生するリスクを回避できるメリットも考えられるのです。


運用・管理全般を任せられる

現物不動産投資をおこなう場合、物件の維持・管理や入居者募集など、運用時にはさまざまな手間がかかります。管理全般を不動産管理会社に委託することもできますが、基本的な運営方針や管理方法・手配などはオーナー自身でおこなわなければならず手間がかかります。また専門的な知識やノウハウが求められる場面も少なくありません。


しかし不動産投資ファンドでは、経験豊富で多くのノウハウを持つ不動産投資のプロが運用・管理をおこないます。そのため出資者の手間がかからないだけでなく、少ないリスクで安心して任せられるのです。


不動産投資ファンドのデメリットとリスク

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前述のようなメリットが期待できる不動産投資ファンドですが、投資である以上デメリットやリスクもあります。不動産投資ファンドをはじめる際は、どのようなデメリットやリスクがあるのか理解しておくことも重要です。


上場廃止や倒産によるリスク

証券取引所に上場している不動産投資信託では、上場廃止基準に該当した場合、上場廃止になってしまう可能性があります。上場廃止が決まると流動性が著しく下がり、売却価格は購入時の価格よりも大幅に安くなることが予想でき、大きな損失を被ることが考えられます。


また不動産特定共同事業者の場合は、事業者の倒産が考えられます。事業者が倒産してしまうと想定していた収益を得られなかったり、対象不動産が途中売却されたり、投資家が損失を被ることも少なくありません。


いずれにせよ、投資金額のすべてが返還される保証はないため注意が必要です。


受け取れる配当金が少額になる可能性がある

不動産投資ファンドは出資者が多く、また投資額が少額なため、受け取れる分配金が少額になる可能性があります。


またファンド運営時にかかるランニングコスト(投資家に対する報告書の作成や契約書の保管などにかかる費用、事業者への手数料など)や振り込み手数料も発生します。特に複数のファンドに投資する場合、発生するランニングコストも増えるため注意が必要です。できるだけコストが少ない商品を選ぶとよいでしょう。


レバレッジ効果を効かせた投資ができない

現物不動産投資では、金融機関から融資を受けて収益物件を購入するのが一般的です。そのため自己資金よりも高額な物件を購入でき、少ない元手で大きな収益を得られる「レバレッジ効果」が期待できます。


しかし不動産投資ファンドでは金融機関の融資は利用できません。よって手持ちの自己資金以上の投資がおこなえない=レバレッジを効かせた投資ができず、大きなリターンを期待できないのがデメリットになります。


投資家の意向は反映されない

不動産投資ファンドでは、物件の運営に関わるすべてをファンド側がおこないます。そのため個人でおこなう現物不動産投資と違い、運営側の戦略や方針に不満を感じても、運用が不調で配当金が少なくても、投資家個人の意見などは反映されず不満に感じるケースも考えられます。


不動産投資ファンドを利用する際の注意点

リスク 虫眼鏡 方眼紙
現物不動産投資をおこなうにあたって注意点があるように、不動産投資ファンドにも注意点がいくつかあります。ここでは不動産投資ファンドをおこなう際に注意したいポイントについて解説します。

自身にあうファンドを選ぶ

一言に不動産投資ファンドといっても、不動産投資信託と不動産小口化商品では、特徴や仕組みは大きく異なりますし、商品によっても初心者向け・上級者向けなどにわかれます。

安易に商品を選んでしまうと高リスクの可能性もあるため、自身の専門知識をあらかじめ把握し、それぞれの特徴を比較しながら資金面なども踏まえて慎重に投資先を決める必要があります。


ファンドのリスクを理解しておく

不動産投資ファンドには、金融商品としてのリスクがあります。リスクは大きくわけて「元本割れリスク」「流動性リスク」「法制度の改定リスク」の3つです。


まず、不動産投資ファンドが取り扱う商品の多くは元本割れに対する保証が設けられていません。そのため、空室期間の長期化で賃料収入が減ったり、災害などで物件の資産価値が下落したり、なんらかの理由で元本割れが起きる可能性があることを理解しておきましょう。


また途中解約や売買ができない商品の場合、流動性が低くなる可能性もあるため注意が必要です。あらかじめ商品に関するルールを確認したうえで購入することをおすすめします。

加えて不動産特定共同事業法などの法律改定や税制変更などによって、手数料や分配金の額面が大幅に変わる可能性も十分考えられます。


不動産投資ファンドをはじめる際は、これらリスクを考慮したうえでできるだけ安全な商品を選びましょう。


まとめ

不動産投資ファンドの種類は、大きくわけると「不動産投資信託(J-REIT)」と不動産特定共同事業法に基づく「不動産小口化商品」の2種類があります。さらに両者それぞれにも種類があり、商品ごとに一口あたりの投資額や運用期間などが異なります。


現物不動産投資に比べて少額でおこなえ、管理・運用の手間がかからない不動産投資ファンドですが、その一方でレバレッジを効かせた投資ができないためリターンが少ないというデメリットもあります。


不動産投資ファンドで失敗しないためには、商品ごとの特徴を比較し、自己資金などもあわせて慎重に投資先を選ぶことが肝心です。メリットだけでなくリスクについてもあらかじめ理解したうえで不動産投資ファンドをはじめましょう。

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