不動産投資ローンと住宅ローンを併用する際の順番による注意点
不動産投資ローンと住宅ローンは、購入した不動産の使用目的が異なるため、両者はまったく違う性質のローンとなります。
では、両方のローンを併用する場合は、どちらのローンを先に組むとよいのでしょうか?
今回は「不動産投資ローンを先に組む場合」と「住宅ローンを先に組む場合」それぞれのメリットや注意点を解説します。
加えて、それぞれの相違点、住宅ローンで不動産物件を購入し賃貸した場合に受けるペナルティについてまとめました。
これから不動産投資や住宅購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資ローンと住宅ローンの相違点
不動産投資ローン、住宅ローン、両者の異なる点は、購入した不動産の使用目的です。
簡単にいうと、「第三者に賃貸して収益を得る」か「自分が住むか」という違いによって、融資の審査内容やローン返済方法などが違ってくるのです。
ここでは、両者の異なる点を解説します。
借入の目的が異なる
「住居として使用する不動産を購入する」と考えると、不動産投資ローンと住宅ローンは同じように感じるかもしれません。
しかし、「自宅(自分で居住するための不動産物件)を購入する」ことを目的とする住宅ローンに対して、不動産投資ローンは「第三者に貸し出して賃料収入を得るための不動産物件を購入する」という事業を目的とするように、両者の目的は大きく異なります。
そのため、住宅ローンで不動産投資物件を購入して賃貸し、賃料を得ることは不正利用として禁止されています。
ただし、住宅ローンで賃貸経営をできるケースや、転勤などやむ負えない事情がある場合は住宅ローンで購入した自宅を賃貸できるケースもあるので、詳しくは下記の「住宅ローンで賃貸が認められケース」をご覧ください。
また、不動産投資ローンを利用して購入した投資用マンションなどにオーナー自身が住む場合は、金融機関の了承があれば居住が可能です。
ただし、住宅ローンへの借り換えなどはむずかしい場合が多いため、注意が必要です。
不動産投資物件にオーナー自身が住む場合の注意点はこちら!>>投資用マンションに自分で住むには注意が必要!ローンの違いも解説
返済原資が異なる
返済原資とは、ローン返済にあてる資金のことです。
住宅ローンの返済は、一般的に毎月の給与収入からあてられます。
不動産投資ローンの返済は、基本的に収益物件を賃貸することで得られる賃料があてられます。
融資の上限額が異なる
住宅ローンの融資限度額はローン契約者の年収の約7倍程度(個人事業主は5倍程度)が一般的です。
不動産投資ローンの融資限度額は、基本的に年収の10倍程度と言われています。
しかし、ローン契約者の属性や融資対象となる不動産物件の資産価値・収益性によって融資額は変わります。
そのため、年収500万円程度の場合でも5,000万円以上の融資を受けられる可能性もあります。
金利が異なる
金利面でも、住宅ローンと不動産投資ローンでは大きな違いがあります。
住宅ローンの金利は年利0.5%~2.0%と低金利ですが、不動産投資ローンの年利は1%台~5%と住宅ローンに比べて高くなります。
不動産投資ローンの金利が高い理由は、融資額が多いことに加えて「事業計画通りに賃料収入が得られる保証がない」ことから貸し倒れのリスクがあるためです。
また、金融機関によっても金利は大きく異なります。
不動産投資ローンの金利について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンを扱う銀行の金利相場や審査難易度の目安を比較
審査基準が異なる
住宅ローンは、個人の「属性」をもとにローン返済能力の有無を審査されます。
属性とは、ローン契約者の家族構成や年収、勤務先、勤続年数、貯蓄額、借金の有無や額などです。
一方で、不動産投資ローンの審査では「属性」項目に加え、融資対象物件の事業計画の内容や資産価値、収益性などが重視されます。
また、返済原資の観点から住宅ローンよりも厳しく審査されるのが一般的です。
不動産投資ローンの審査内容について詳しくはこちら!>>不動産投資ローンを扱う銀行の金利相場や審査難易度の目安を比較
そのほかの相違点
上記以外にも、不動産投資ローン、住宅ローン、両者には違いがあります。
まず、不動産投資ローンは法人名義でも融資を受けられますが、住宅ローンは個人の住宅用不動産を購入目的とするため、法人名義でローン契約はできません。
また、ローンの申し込みができる年齢や完済年齢にも違いがあります、
住宅ローンは、申し込みできる年齢は20歳~69歳、完済年齢は75歳~79歳としている金融機関が多いです。
一方、不動産投資ローンの場合、申し込みできる年齢を20歳以上と定めている金融機関もありますが、申込時や完済時の年齢の上限について設定されていないことも多くなっています。
不動産投資の場合、経営者本人(ローン契約者)が死亡した後も収益物件からの家賃収入は継続して入ってきますし、通常収益物件を相続した人がローン返済を引き継ぎます。
本人が高齢でも法定相続人を連帯保証人にすることでローン返済は継続されることから、不動産投資ローンを利用する際の年齢制限を定める必要がないのです。
ただし、不動産投資ローンも住宅ローンも、金融機関によってローンの利用規定が異なります。
申し込む場合はかならず金融機関で年齢制限の確認をしてください。
不動産投資ローンと住宅ローンを併用する場合はどちらを先に組むといい?
住宅ローンと不動産投資ローンは併用することは可能です。
ただし、先に借りたローンの借入額や返済期間によっては、後に組むローン審査が不利になってしまう可能性があるため注意が必要です。
不動産投資ローンを先に組む場合のメリットと注意点
高額の不動産投資用物件は、不動産投資ローンで借入れる額も大きくなりがちです。
そのため、不動産投資におけるキャッシュフローの様子次第で、この後に住宅ローンを申し込む場合、その審査結果が変わってきます。
安定したキャッシュフローを見込める収益物件で、また収益物件から得られる家賃収入を「安定した収入」と金融機関が認めてくれるのであれば、不動産投資ローンを先に組むことで住宅ローンの審査を有利にすることができます。
逆に不動産投資が赤字だったり、ローン契約者の年収に比べて借入額が多かったり、金融機関が「家賃収入は、収入とみなさない」とする場合は注意が必要です。
不動産投資ローンの返済比率によっては、住宅ローンの融資枠が減ってしまうため、希望する額の融資が受けられなかったり、最悪審査に落ちてしまったりすることも考えられます。
住宅ローンを先に組む場合のメリットと注意点
住宅ローンを先に組んだ場合のメリットは、予算に余裕があるので、選択できる住宅の幅が広がることです。
職場に通いやすい、子供の学校が近い、子育てに適したエリア、住環境がよいなど、立地や価格面で気に入った住宅を選べます。
また不動産投資ローンに比べて融資審査に通りやすいため、希望通りの融資を受けられる可能性も高いです。
一方で、不動産投資ローンを組もうとした場合、先に組んだ住宅ローンは単なる負債となってしまうため、不動産投資ローンの融資審査で「既存の借入額が多い」と判断され、希望額の融資を受けられなかったり、金利を高く設定さてしまったりといった恐れがあります。
どちらのローンを先に組むか迷ったときの対処方法
前述のように、不動産投資ローンと住宅ローンを併用する場合、どちらを先に借りてもメリットとデメリットがあるため、一概に「どちらが有利」とは言い切れません。
将来時に両方のローンを利用したいと考えている場合は、金融機関に自身の「融資上限額」を確認することをおすすめします。
融資上限額を把握することで、まずどちらのローンを優先させるかの判断材料になります。
また、すでにどちらかのローンを先に組んでいて、返済比率が高い場合は、比率を下げることでローン審査に通過しやすくなります。
返済比率を下げるには、ローンの借り換えや繰り上げ返済などおこない、ローンの残債を減らしたり、不動産投資ローンであればキャッシュフローを安定させたりといった対策が役立ちます。
不動産投資ローンの繰り上げ返済について詳しくはこちら!>>不動産投資の繰り上げ返済の種類やメリット・デメリットを解説
不動産投資ローンの借り換えについて詳しくはこちら!>>不動産投資ローン借り換えに適したタイミングやメリット・デメリット
住宅ローンで不動産物件の購入は不可!ばれたらどうなる?認められるケースは?
不動産投資用の物件を購入するためには、原則として不動産投資ローンを利用しなければなりません。
住宅ローンを利用して不動産投資物件を購入することは不正利用にあたります。
しかし、2018年に投資用物件を居住用と偽り、住宅ローン「フラット35」を不正利用して金融機関から融資を受けたという事例が多数発覚し、大きな問題になりました。
不動産会社とオーナーがグルになって不正利用をする悪質なケースもある中、住宅ローンで不動産投資物件を購入することが契約違反になることを知らなかったオーナーもいたそうです。
しかし、知らなかったとはいえ、不動産会社に言われるがまま不正利用に加担してしまったことからオーナーも処分の対象となっています。
では、住宅ローンを利用して不動産を購入し不動産投資をおこなった場合、どのような処分や不利益があるのでしょうか。
不正利用のペナルティを受ける
住宅ローンの不正利用が発覚した場合は「契約違反」と判断され、処分を受けます。
まず、ローン残債の一括返済(契約したローンの返済期間(回数)にかかわらず、ローンの残債をまとめて返済しなければならない)を求められるのが一般的です。
前述の2018年に不正利用が発覚したオーナーの中には、一括返済するために不動産物件を売却し、それでもローンを完済できずに結局自己破産した人もいたそうです。
加えて、不正利用をしたことから信用度が下がるため、今後の金融機関からの融資を受けづらくなってしまいます。
新たに住宅ローンを組みたくても、融資審査で落とされてしまうためローン契約ができなくなります。
「バレなければいい」「そこまで調べられないだろう」と楽観的に考える人もいるかもしれませんが、前例のように発覚すると大きなデメリットにつながります。
どんなに美味しい話に聞こえても不正利用に加担してはいけません。
住宅ローンで賃貸が認められケース
基本的に、住宅ローンを利用して購入した不動産物件で賃貸経営をおこなうことは認められません。
ただし、以下の場合は例外として認められる場合があります。
賃貸併用住宅の場合
「賃貸併用住宅」とは、ひとつの建物の中にオーナーの居住用と賃貸用のスペースがそれぞれ用意された不動産を指します。
この賃貸併用住宅であれば、住宅ローンを利用して不動産物件を購入することが可能です。
ただし、住宅ローンが適用されるには「総面積のうち、居住用スペースが50%以上ある」ことが条件になります。
賃貸部分に入居者がいれば家賃収入で住宅ローンの返済ができ、大きなメリットになります。
一方で、オーナーの居住用スペースには収益性がないため、賃貸経営をメインに考えた場合は家賃収入が少なくなってしまいます。
転勤などやむを得ない事情の場合
住宅ローンを利用して購入した不動産物件(自宅)に契約者以外の人が住むのは、本来は契約違反です。
だだし、転勤などやむを得ない事情でオーナーが居住できなくなった場合は、住宅ローンを利用しながら自宅の賃貸が認められる可能性があります。
あくまでも可能性なので、場合によっては住宅ローンから不動産投資ローンへの切り替えが必要になることもあります。
そのため、自己判断はせずに、まずは金融機関に相談しましょう。
まとめ
使用目的が異なるため、不動産投資ローンは第三者に賃貸する不動産物件にしか利用できず、住宅ローンは自身が居住する住宅の購入時にしか組むことができません。
不動産投資ローン、住宅ローンは、両者の併用は可能ですが、どちらのローンを先に組むかによって、後から組むローンに影響を与えるため注意が必要です。
どちらのローンを先に組むか迷ったときは、金融機関に自身の融資限度額を確認し、まずどちらのローンを優先させるか判断することをおすすめします。