不動産業界の事業継承の動向は?承継方法の種類や注意点を解説!
2023/09/27

不動産業界の事業継承の動向は?承継方法の種類や注意点を解説!

不動産会社の事業継承の動向事業継承方法はおもに3種類①親族内承継のメリットとデメリット②親族外承継のメリットとデメリットM&Aのメリットとデメリット不動産業界で事業承継時の注意点後継者教育に力を入れる相続時のトラブル回避まとめ

近年の日本では高齢化がすすむなか、不動産業界の経営者にも高齢化の波が押し寄せています。そのため多くの企業で代替わりの時期を迎えていますが、後継者が見つからない場合は廃業するケースも少なくありません。

不動産業界で速やかに事業継承する場合、どのような方法があるのでしょうか。


今回は不動産業界の事業継承について、継承方法の種類や注意点を解説します。


不動産会社の事業継承の動向

事業承継 ビジネスパーソン 電卓

「事業承継」とは、会社の経営を経営者から後継者へと引き継ぐことを意味します。経営者にとって次代に会社を継続させるためには避けては通れないのが事業継承です。


高齢化がすすむ現在の日本では、中小企業の後継者不足が深刻な問題となっており、それは不動産業界でも例外ではありません。不動産会社は近年増加中ですが、大規模な不動産業者が全体の多くの売上を占める一方で、業務の効率性が悪い地域密着型の小規模・中規模な不動産会社が生き残ることがきびしくなっているのが実状です。


引用:不動産適正取引推進機構『令和 4 年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について


不動産適正取引推進機構が発表した『令和 4 年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について』によると、不動産会社の個人業者の年齢は年々上がっています。平成8年度末の時点の平均年齢は57.7歳でしたが、令和4年度末の時点では66.4歳と過去最高になりました。


また、従業員数に関しては、1人~4人のごく小規模の会社が多いのがわかります。


  • 1人~4人:30万4,566
  • 5人~9人:3万2,437
  • 10人以上:1万4,157

参考:公益財団法人不動産流通推進センター『2021不動産業統計集|公益財団法人不動産流通推進センター


引用:不動産適正取引推進機構『令和 4 年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計について


廃業率についても、令和2年から3年にかけて、転出や免許取り消しを除き3,985の不動産業者が廃業しています。


これらのことから、既存の不動産業者のうち、従業員数が1人~4人の小規模経営の会社が多く、また年々従業員の高齢化もあり、後継者を探すことなく事業をやめているケースが多く見られるのです。


事業継承方法はおもに3種類

事業承継 書類 クリップボード

事業承継には、大きく分けて下記3つの承継方法がありますが、それぞれのおもな違いは、「後継者の属性」です。


【事業継承をする後継者の属性】

  • 親族内承継:親族(子供や親戚など)
  • 親族外承継:親族以外の役員および従業員
  • M&A:社内以外の第三者

それぞれの継承方法について、メリットとデメリットをみてみましょう。


①親族内承継のメリットとデメリット

親族へ事業承継する最大のメリットは、「生前贈与」「株式売却」「相続」など、複数の継承方法を選択できる点です。特に生前贈与を上手に活用すれば、相続税対策にもつながります。

また早い段階で後継者を決めることで、育成や引継ぎに十分な時間を割くことも可能です。


一方デメリットとしては、後継者の指名にほかの親族の反対にあう可能性がある点があげられます。また後継者が不動産事業に向いているという保証もありません。


②親族外承継のメリットとデメリット

親族以外の役員や従業員が事業承継する「社内承継」のメリットは、継承前から事業に携わっていたため、事業への理解が深い点です。実際に業務を経験しながら学ぶため、事業の方向性や業界の動向、ノウハウなどの習得も一からはじめるよりも時間がかからずに済むでしょう。


一方デメリットは、株式を買い取る必要があるので、まとまった資金を準備する必要があることです。また従業員や役員としては優秀であっても経営者としての能力は未知である点があげられます。


M&Aのメリットとデメリット

近年、不動産会社の事業継承方法で増えているのが③の「M&A」を活用した、第三者・企業への継承方法です。

M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略で、ふたつ以上の会社が合併したり、ある会社がほかの会社を買収したりすることを指します。


親族や役員や従業員・役員が後継者にならない場合の事業継承の多くは、このM&Aによる第三者企業への継承となります。


M&Aのメリットは、親族や従業員が事業継承できない場合、譲受企業が後継者となるための後継者問題を解決できる点です。

後継者がいない会社は結果的に廃業となり、従業員は働き口を失ってしまいますし、取引先にも迷惑をかけてしまいます。しかしM&Aによってそれらを防ぐことにつながります。


また、M&Aは早ければ3カ月で成立するため、承継に時間をかけられない場合でも安心です。さらに事業オーナーとして、M&Aによってまとまった資金も得られるため、円満な形でリタイアを実現できるでしょう。


M&Aのデメリットとして考えられるのは、事業承継を任すに足りる相手がすぐにみつからない可能性がある点です。相手がみつかり、M&Aしたとしても、これまでの経営方針から逸脱することも考えられます。


また今後の収益性が低いとみなされてしまうと、思っていたほど会社に価値がつかなかったり、相手がみつからない可能性もあることを覚えておきましょう。


不動産業界で事業承継時の注意点

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ここでは不動産業界で事業承継をする際の注意点をまとめました。


後継者教育に力を入れる

不動産業界だけでなく、どの業界であっても後継者教育に力を入れることが大事です。事業承継を円滑におこない成功させるためには、後継者教育が重要なポイントとなります。


不動産事業に関する専門知識はもちろん、経理や会計、法律、顧客とのコミュニケーション能力など、不動産業に必要な実務は多岐にわたります。スムーズな承継をおこなうためには後継者が決まったら、できるだけ早期から後継者教育を開始することが大切です。


相続時のトラブル回避

事業承継の際に発生しやすいのが相続トラブルです。特に不動産業の事業承継では、財産=不動産の多くが後継者に集中するため、相続人のあいだで揉めるケースは少なくありません。


一定範囲内の相続人には、遺留分が保障されています。遺留分とは相続人が最低限度の遺産を受け取ることができる権利です。


しかし事業承継によって財産を相続しても、「遺留分減殺請求」をおこなわれる恐れがあります。遺留分減殺請求とは、遺留分を侵害された者が贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件の返還を請求することです。


こういったリスクを回避するために、相続財産を「事業用資産」と「個人資産」に分けることが有効です。後継者は事業用資産を相続し、個人資産を相続人に相続させることで不公平感が軽減するでしょう。


不動産業の事業承継で円滑な事業承継を実現するためにも、相続の公平性確保に目を向ける必要があります。

相続トラブルが話し合いで解決できない場合は、弁護士等の専門家の意見を聴くことで解決につながります。大きくこじれる前に、無料相談などを利用して専門家に相談することをおすすめします。


まとめ

高齢化がすすむ不動産業界の事業継承について現状や注意点を解説しました。

不動産業の事業継承に必要な実務は多岐にわたるため、後継者教育はできるだけ早い段階で始める必要があります。


もし後継者にあたる親族や従業員がいない場合は、M&Aを検討することで廃業せずに事業継承の道が拓ける場合もあります。ただし、最適な相手先が見つからない可能性があるため注意が必要です。


そのため事業承継を考えるなら親族に承継するのか、親族外に承継するのか、M&Aで第三者へ承継するのか、速やかに方針を決めることが大事です。

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