今後のアパート経営の動向は?これから起きるリスクとその対策方法
人口の減少や少子高齢化がすすむ昨今、「アパート経営に悪い影響があるのではないか」と懸念を持つ人も少なくないでしょう。
たしかに人口の減少によって賃貸需要が低下し、アパート経営に大きな影響を及ぼすと考えられています。
しかし、完全に賃貸需要がなくなるわけではありません。
では、今後のアパート経営をおこなうためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
今回は、人口減少によって今後のアパート経営の動向にどのような影響があるのか、そのリスクと対策方法について解説します。


今後のアパート経営の動向に影響する重要ポイントを解説

ここでは、これからのアパート経営に影響を及ぼす可能性が高い、重要なポイントについて解説します。
日本の人口は減少している
日本の人口は2008年をピークに、その後減少しつづけています。
2008年に1億2,808万人だった総人口は2024年8月の総人口は1億2,388万人にまで減少しています。
今後はさらなる人口減少が予想されており、厚生労働省が発表した『我が国の人口について』
によると、2070年には総人口が9,000万人を割り込むと推計されているのです。
参考:厚生労働省『我が国の人口について』
このまま日本の人口が減少した場合、それに伴い賃貸需要が低下し、空室リスクの上昇が予測できます。
特に人口の流失が著しいエリアでのアパート経営は、一定数の需要を確保するために賃料の値下げを余儀なくされるケースも考えられます。
人口が減少する一方で増加しているのが高齢者です。また少子高齢化による労働力不足から、今後は外国人労働者が増加すると言われています。
若年層の日本人が減る中、今後のアパート経営では高齢者と外国人の入居受け入れが大きなポイントとなるででしょう。
賃貸物件は供給過多状態
日本の総人口は減少していますが、全国の賃貸物件数は増加傾向にあります。
人口が減少することで賃貸需要は縮小する中、賃貸物件が増えてしまうと供給過多となることが予想されます。
実際、大規模新築マンションが次々と建築されていることから、現在所有しているアパートの築年数によっては入居付けに影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。
全国の空き家率の上昇
空き家率の上昇もアパート経営に影響を与える可能性があります。
総務省が発表した2023年10月時点の『住宅・土地統計調査結果』によると、空き家の割合は13.8%と過去最高であり、空き家数も899万戸と過去最多とのことです。
参考:総務省『住宅・土地統計調査結果』
空き家率が増加するということは住宅の需要が減少していると考えられ、空き家が多いエリアでは賃貸需要の減少も懸念されます。
そのため今後のアパート経営でエリアを選定する際は、周辺の空き家率も視野に入れておくことがアパート経営を成功させるためのポイントとして押さえておくとよいでしょう。
今後のアパート経営で起こりうるリスクと対策方法

人口減少、少子高齢化が進む中、今後のアパート経営ではどのようなリスクが考えられるのでしょうか。
ここではこれからのアパート経営をおこなううえで想定できるリスクと、その対策方法について解説します。
空室リスクが増大する
人口が減少することで賃貸需要の低下が懸念されます。
空室率が高くなれば家賃収入が減少し、アパート経営のランニングコストなどの支出の負担が重くなります。
損切として物件を売却したくても空室の多いアパートは買い手がつきにくく、相場よりも安い価格でしか売却できないことも考えられます。
特に人口の流出が顕著なエリアでは空室率が上がり、アパート経営に重大な悪影響を及ぼす可能性が高いです。
人口減少による空室リスク対策としては、人口の流失が少ない都市部で、かつ賃貸ニーズの高い物件を選ぶことがあげられます。
あわせて、物件の収益シミュレーションをおこなう際は今後の人口の減少を踏まえた空室率を見積り、きちんと収益の出る物件を選びましょう。
賃料下落による収入の減少
賃料の引き下げは、アパート経営の空室対策方法のひとつです。特に空室が長期にわたる場合は賃料を下げることで入居者が決まりやすくなります。
ただし、賃料を下げれば当然ですが収入は減ってしまいます。
特に人口減少が著しい地域では賃貸需要が減少するため、入居者の獲得のために賃料を引き下げるケースが増えるでしょう。
賃料を引き下げることで入居者を確保しても、キャッシュフローが赤字になってしまってはアパート経営の継続はむずかしいでしょう。そのため賃料を引き下げる際は、収支のバランスを見ながら、適切な賃料の設定が求められます。
すでにアパート経営をおこなっている場合は、所有する物件の地域の人口の推移を確認したうえで、今後の空室率や家賃下落率を見積もったうえで今後の収益の予測をおこないましょう。
シミュレーション結果によっては、用途替えや売却などを検討するとよいでしょう。
都市部と地方の格差の拡大
人口が減少しているといっても、その減少率は都市部と地方では大きな開きがあります。人口減少が著しいのはおもに地方であり、都市部の人口減少は緩やかです。
そのため都市部と地方の賃貸ニーズには大きな格差が見られます。
都市部の交通の便がよく、生活するための便利施設が揃っているエリアは、引き続き高い賃貸需要が期待できます。
一方人口の減少が著しい地方の賃貸物件は需要が低下し、空室率が上昇しています。それに伴って不動産価格の下落も見られます。
ただし、地方であっても再開発による大型商業施設や大規模マンションなどが建てられるなど、賃貸ニーズは比較的安定している地域も見られます。
このように今後は、今以上に地域の動向によって賃貸需要が左右されることが懸念されます。
これからのアパート経営で安定した収益を得るためには、都市部や再開発予定地域などをターゲットにすることをおすすめします。
今後のアパート経営をおこなううえで重要なポイント

人口が減少する中、アパート経営で安定した収益を得るためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
ここでは、これからも安定したアパート経営をおこなうために必要なポイントについて解説します。
新たな賃貸ニーズに対応する
人口が減少している日本ですが、賃貸需要が完全になくなるわけではありません。
前述したように、人口の減少が目立つ地方では今後の賃貸需要の低下が懸念されますが、人口減少が比較的緩やかな都市部では安定した賃貸需要が期待できます。
ただし、ターゲットとなる入居者層は変化していくことが予測されます。
今後は単身世帯が増えることからファミリー向けよりも単身者向けの間取りや、高齢者の増加によってバリアフリー物件などの需要が高まるでしょう。
また外国人を入居ターゲットにする場合は、多国籍言語に対応するなど、特定のニーズに応える物件が選ばれやすくなると考えられます。
また設備や間取りも、ニーズが変化する可能性があります。特に設備のニーズはトレンドが変化しやすいです。
特に周辺に競合物件がある場合は、いち早くニーズにあわせて新たな設備を導入したり、リフォームしたりすることでライバル物件の1歩先を行くことができるでしょう。
人口が減少しても、新たな賃貸ニーズに対応することで、今後もアパート経営を継続していくことは十分可能です。
そのためにも日頃から情報収集を怠らず、状況に応じて対応できるよう備えておくことが重要なポイントになるでしょう。
エリア選定は慎重におこなう
アパート経営の成否は立地で決まると言っても過言ではありません。人口減少が進む中、今後のアパート経営で成功するためには、今以上にエリアや立地の選定が重要になります。
なぜなら、人口が減少することで人流が変化し、それに伴って周辺環境も変化する可能性があるためです。
たとえば、少子化の影響で大学が移転したり、業績不振で工場が閉鎖したり、少し離れた場所に新しい複合施設ができたことで既存の商業施設が閉店したり、それらの影響で賃貸需要が急落するケースもあります。
反対に再開発などでエリアの人口が増える可能性もあるのです。
人口の減少によって賃貸需要が低下している地方であっても、人口の減少が緩やかで賃貸重要が安定している都市部であっても、将来的な賃貸需要につながる動向にはつねに留意しておくことが大事です。
出口を想定したうえで物件を選ぶ
アパート経営を始めたからには、いつか終わる日も来るでしょう。アパート経営の終わり方にはいくつかパターンがありますが、最終的に物件を売却するのが一般的です。
このようにアパート経営を含めた不動産投資で収益物件を売却して終わらせることを「出口」と呼び、いかに高く売るか考えることを「出口戦略」と言います。
出口戦略を考える際、もっとも適しているのは収益物件を選ぶタイミングです。
賃貸需要が高く安定した収益を得られる物件は買手がつきやすく、高額で売却できる可能性も高いです。ようするに、将来的に有利な条件で売却できることを前提に収益物件を選ぶのです。
人口の減少がすすむ今後のアパート経営では、収益物件の資産価値が下落するリスクが高いため、今以上に出口を見据えて収益物件を選ぶ必要があります。
特に人口が減少しているエリアのアパート経営では、出口戦略をしっかりと立てることが重要になります。
なお不動産の売却は時間がかかるのが一般的です。タイミングを逃すと希望する価格で売れなかったり、買手が見つからなかったり、計画通りに売却できなくなる場合もあります。
売却を検討する場合は、周辺の不動産市場の動向を確認し、適切なタイミングで物件を売却できるよう周辺の不動産市場の動向を定期的に確認しておきましょう。
関連記事:不動産投資の成否は出口戦略で決まる!できるだけ高く売る方法とは?
自己資金に余裕を持たせる
人口が減少することで、空室が増えたり、賃料の引き下げで家賃収入が減少したり、収支のバランスが崩れ、キャッシュフローが悪化することが予想されます。
特に想定したよりも家賃収入が減っているタイミングで設備の故障などで予期せぬ修繕費が発生してしまうと一気にキャッシュフローがマイナス(赤字)なるおそれもあります。
キャッシュフローが赤字になってしまってもローンの返済はおこなわなければなりません。こういった場合、自己資金から不足分を補填できるよう、自己資金は余裕をもって用意しておくことと安心です。
手元に資金がない場合はローンを滞納することになります。滞納がつづくとアパートを差し押さえられ、最終的には競売で強制的に売却されるおそれもあるため注意が必要です。
アパート経営の基礎知識を学ぶ
安定したアパート経営をおこなうためには、基本的な知識を身に付けることが欠かせません。
アパート経営に関する知識がまったくない状態では、必要以上に費用をかけてしまったり、収益の出ない物件を選んでしまったり、なんらかの「損」になってしまう可能性があります。
特に物件選びでは、悪徳不動産会社のカモにされてしまい、「かならず儲かる」「将来高く売れる」などのセールストークに騙され、相場よりも高い値段や賃貸需要が低下している物件を買わされるおそれがあるのです。
しかし、アパート経営や不動産投資の知識があれば悪徳業者のセールスに惑わされることもなく、利回りや好立地の条件などから物件の良し悪しを判断することができるでしょう。
またアパート経営で収入を得ると確定申告が必要になります。確定申告は、アパート経営の知識だけでなく税金や経理の知識も必要です。
すべてを一度に覚えるのは非常にむずかしいため、まずは市販の書籍などを読んだり、不動産投資セミナーに参加したり、できることから始めることをおすすめします。
関連記事:アパート経営に資格は不要だが知識は必要!知識重視の資格5選
まとめ
人口の減少に伴って賃貸需要は低下すると考えられています。特に人口減少が著しい地方でのアパート経営は空室リスクが高くなり、きびしい状況が懸念されます。
しかし、賃貸需要が完全になくなるわけではありません。今後は単身世帯や高齢者、外国人などをターゲットにした、新しい賃貸ニーズが期待できます。
今後安定したアパート経営をおこなうためにも、きちんと現況と将来的な動向を理解し適切な判断をすることが大事です。