不動産投資で手付金を支払う目的を解説!支払うタイミングや相場は?
2022/11/03

不動産投資で手付金を支払う目的を解説!支払うタイミングや相場は?

不動産投資の手付金について目的と必要性を解説申込証拠金・頭金・中間金との違い申込証拠金頭金中間金(内金)手付金の種類を解説証約手付違約手付解約手付不動産投資で手付金を支払うタイミングや相場額は?不動産投資の流れで手付金を支払うタイミング手付金の相場や支払い方法は?不動産投資の手付金で注意すべきポイントローン特約をつける手付解除期限の特約についてまとめ

不動産投資では、不動産物件の売買契約締結時に「手付金」を支払うのが一般的です。手付金は契約の証として支払う以外にも、契約解除などの目的としても利用されるため、買主にとっても売主にとっても欠かせないお金です。

ただし、手付金を利用した契約解除に必要な条件などを知っておかないと、思わぬ損につながる可能性が考えられます。


そこで今回は、不動産投資で支払う手付金について、目的や契約解除の条件などの注意点を解説します。

不動産投資物件の売買契約時にはかならず支払う手付金の意味を、しっかりと理解しておきましょう。


不動産投資の手付金について目的と必要性を解説

不動産投資における「手付金」とは、不動産売買の契約時に「契約の証」として買主から売主へと支払われるお金です。


また買主・売主それぞれが、勝手に契約を解除しないようにする、または契約解除などの目的のために支払う保証金として法的効力を持ちます。

買主側の都合で契約を破棄した場合、手付金の返還は不要となり、そのまま売主のものとなります。逆に売主側が契約破棄した場合は、受け取った手付金を返還したうえで、手付金と同額を買主に対して支払うことになります。


「手付金なし」で売買契約することも可能ですが、万が一契約を取り消したくなった場合、手付金がないと契約を破棄する手段がなくなるため注意が必要です。


申込証拠金・頭金・中間金との違い

家 電卓 お金

不動産投資の手付金と混同されやすいものに「申込証拠金」「頭金」「中間金(内金)」があります。手付金との違いをそれぞれ解説します。


申込証拠金

不動産物件の購入を決めたときに買主が「購入を決めた」意思を示すために支払うお金を指します。支払った申し込み証拠金は、契約成立後に手付金に充当されることが多いです。


手付金との違いは「売買契約が成立しているかしていないか」です。もし契約破棄された場合でも申し込み証拠金は全額返還されるのが一般的です。なお、申込証拠金の目安は5~10万円程度になります。


頭金

不動産物件代金の一部を自己資金から支払うお金を指します。

不動産投資用物件を購入する場合、金融機関の不動産投資ローンを利用するのが一般的です。その際に頭金を支払うことでローンの借入額を減らすことができ、同時に融資審査を有利にする効果が期待できます。頭金の額に決まりはありませんが、物件価格の1~3割程度が目安です。


なお、金融機関や物件によっては頭金なしで融資を受けられる「フルローン」を利用できる場合もあります。ただし、総返済額と総返済利子の金額が大きくなるため月々の返済額が増え、また借入額が大きくなるためローン審査が厳しくなるため注意が必要です。


中間金(内金)

不動産売買契約や建築工事請負契約を結んだ後に買主から売主へ支払われるお金を指します。ただ、一般的な不動産売買契約には中間金(内金)のやりとりはあまりありません。


なお買主が契約の解除を申し出た場合、手付金は返ってきませんが、中間金は返金されるのが一般的です。


手付金の種類を解説

手付金には「証約手付」「違約手付」「解約手付」の3種類があります。それぞれについて説明します。


証約手付

不動産に限らず、すべての売買契約締結時に買主から売主へと支払われるお金を指します。証約手付を支払うことで買主は購入意思を示し、また契約が遂行されなかった場合は違約金としても使用されます。

相場は5万〜10万円程度ですが、不動産取引においては利用されていないのが現状です。


違約手付

買主または売主によって契約通り債務がおこなわれないときに損害賠償にあてられるお金を指します。

買主側に債務不履行があった場合は買主が支払った手付金が没収されます。逆に売主側に債務不履行があった場合、売主は支払われた手付金を倍にして買主に支払わなければなりません。


ただ、証約手付同様、不動産取引においては利用されていないのが現状です。


解約手付

買主と売主のどちらかが、理由に関わらず撤回するためのお金のことを指します。

相手方が「履行に着手」するまでであれば、決められた条件に従って一方的な売買契約の解除が可能です。


買主側が契約を破棄する場合、買主は支払った手付金を放棄します。売主側が契約解除する際は、売主は支払われた手付金を倍にして返還する必要があります。


現在の不動産取引においてはほとんどの場合、この「解約手付」が利用されているのが現状です。


契約の履行に着手とは?

前述したように、相手方が「履行に着手」するまでであれば、手付金放棄、または手付金の2倍を支払い、一方的な売買契約の解除が可能です。では「履行の着手」とは、どのような状況が考えられるのでしょうか。


過去の最高裁判例によると、「客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」には、「履行に着手」をしたとされています。

具体的な例として以下のような状況があげられます。


【売主側の履行の着手の例】

・リフォーム工事や建築工事の発注や着手したとき

・買主の希望により、引き渡しに先立ち土地の分筆登記をおこなったとき

・物件の一部を引き渡したとき

・物件の引き渡し及び所有権移転登記が完了したとき


【買主側の履行の着手の例】

・中間金(内金)を支払ったとき

・残代金を支払ったとき

・引越し業者との契約


なお、物件の引き渡しや残代金支払いの「用意」や「準備」をしただけでは「履行に着手」したとはみなされないとされています。


たとえば、融資の「申し込み」は「履行の着手」には該当しません。融資の申し込みはあくまで「融資を受けられるか」の確認行為にすぎず、よって契約の履行とはみなされないのです。


なお「自分が履行に着手していても、相手方は履行に着手していない」場合は、自分から手付による売買契約の解除をおこなうことは可能です。


「履行に着手」したかどうかを個人で判断することがむずかしい場合は、不動産会社や法律の専門家に相談することをおすすめします。


不動産投資で手付金を支払うタイミングや相場額は?

ここでは、不動産投資で手付金を支払うタイミングと支払い方法、その相場額について説明します。


不動産投資の流れで手付金を支払うタイミング

不動産投資で手付金を支払うタイミングは、不動産売買契約締結時になります。不動産投資をはじめるまでの流れに沿って見てみましょう。


不動産投資を開始するまでの流れ

1.不動産投資用物件を選び、金融機関へ融資を申し込む

購入したい不動産投資用物件が決まったら、金融機関へ融資の事前審査を申し込みます。

融資審査は個人属性と物件の収益性や資産価値をもとに審査されますが、審査基準は金融機関によってさまざまです。


そのため審査に通過できなくても、ほかの金融機関では審査に通過できることもあるため、複数の金融機関に融資相談することをおすすめします。


2.物件の買付申込をおこなう

売主(または不動産会社)に「申込証拠金」を支払い、物件の買付申し込みをおこないます。


3.売買契約を締結し、手付金を支払う

融資の事前審査に通過したら、不動産売買契約を締結し、手付金を支払います。

同時に金融機関に融資の本審査を申し込みましょう。本審査は、結果が出るまで2週間〜1ヶ月程度かかります。


なお、本審査の結果はこの時点ではわかりません。事前審査に通過したとしても本審査で落ちる可能性もあるため、審査に落ちた場合は無条件で契約が解除できる「ローン特約」を契約書に盛り込んでおくと安心です。


ローン特約については、後述の『不動産投資の手付金で注意すべきポイント』の項をご覧ください。


4.融資の実行・物件の引き渡し

売主と買主、不動産会社が立ち会いのうえ、物件チェックをおこないます。問題がなければ

登記手続き、融資の実行、決済金処理などがおこなわれ、買主は売主から鍵や物件に関する書類などを受け取り、引き渡し完了です。


手付金の相場や支払い方法は?

手付金の額に決まりはありませんが、一般的な目安は物件価格の5~10%程度と言われています。2,000万円の不動産投資用物件であれば100~200万円程度になるでしょう。

支払い方法は、通常は現金で支払うことが多いです。


なお、売主が個人の場合は手付金の上限はありませんが、売主が不動産業者の場合は手付金の上限は物件価格の20%までと決められています。


また、手付金の額は買主・売主ともに交渉が可能です。ただ、少なすぎれば簡単に契約を解除することができてしまいますし、逆に高額すぎると契約解除ができなくなるため、バランスのよい額を設定する必要があります。


不動産投資の手付金で注意すべきポイント

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ここでは不動産投資において手付金を支払う際に注意すべきポイントを解説します。

ローン特約をつける

ローン特約とは、「不動産を購入する際、金融機関で融資が承認されなかった場合は売買契約を解除できる」という買主を保護する条項です。


前述したように不動産投資では物件の購入費用を金融機関から融資を受けるのが一般的です。しかし、売買契約の締結後に融資の本審査に通過できなかった場合は融資が受けられず、結果的に不動産の購入が不可能になってしまいます。。


ローン特約によって契約が解除された場合は、買主が支払った手付金は全額返還され、違約金も発生しません。ローン特約をつけていない場合、売買契約締結時に支払った手付金は返還されません。


ローン特約をつけることで、不動産購入時に安心してローンを利用することができるのです。


ローン特約についての注意点

ローン特約をつけていても無条件で契約を解除することができないケースもあるため注意が必要です。無条件に契約解除ができない例として、融資金額の記載がない場合が考えられます。


たとえば、融資希望額が3,000万円だったのに対して2,000万円しか融資がおりなかった場合、ローン特約で契約を白紙にしたくても融資は承認されているので白紙撤回を拒否されるケースがあります。

この場合、買主は手付金の放棄や違約金の支払いによって契約を解除せざるをえません。


こういったトラブルを避けるためには売買契約書のローン特約に、金額、融資期間、金利を書いておくとよいでしょう。


手付解除期限の特約について

前述したように相手方が「履行に着手」するまでであれば、売主・買主ともに決められた条件に従って一方的な売買契約の解除が可能です。

ただし「履行に着手」に当たるかどうかは判断がむずかしいことも多いため、「手付解除が可能な期限」を特約として盛り込むとトラブル防止につながります。


例としては、「履行に着手後、又は、令和○年○月○日を経過した日以降は手付解除をすることができない」などです。このように手付解除可能期限を決めておけば、履行の着手がされていなくても期限を過ぎれば手付解除ができなくなります。


ただし、こういった特約を定めることができるのは、売主が宅建業者ではない場合、または売主と買主の両方が宅建業者である場合に限られます。それ以外は宅建業法により買主側に不利な特約は無効となるため注意しましょう。


まとめ

不動産投資の売買契約時に支払う手付金は、物件価格の5~10%程度支払うのが一般的です。


手付金には3種類ありますが、不動産投資でおもに利用されているのは、買主と売主のどちらかが理由に関わらず契約を解除できる「解約手付」です。

相手方が「履行に着手」するまでであれば、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を支払うことで契約の解除が可能になります。


売主・買主、双方にとって損にならない売買契約を結ぶためにも、手付金の目的を理解したうえで契約書をしっかりと確認しましょう。

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